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「悪い、今行く。」
何故か少しテンションの高いシズ。「友人」と連盟に出向く事が新鮮なのだろうか。いや、それもあるだろうが、きっとこれから「友人」とする初めての戦闘が楽しみなのだろう。
アキはそんなシズに苦笑しつつ、彼女を追って連盟の建物に入る。街の観察はまだまだし足りないが、それはまた後日すればいい。
「お、美人隊長様のお出ましだぞ。」
「今日もお美しいねえ。人付き合いが悪いのと偉そうなのが玉に瑕だがな。」
ハンター連盟に入ると、そんな声が聞こえてくる。やはりシズは有名らしい。騎士隊長であり、ハンターランクもⅣ、そして美人。まあこれで注目されないわけがないか。そして騎士の時は、高飛車で人を寄せ付けない性格だから、余計に悪目立ちする。ただそんな噂をすると言う事は、どうやらシズの素の顔までは知らないようだ。
「アキ、こっちだ。受付にいくぞ。」
シズが少しムスっとした顔をしている。まあ周りの会話は当然シズの耳にも入っているから不機嫌になるのも仕方ない。だがシズが目立っているのは自業自得な部分な気もするが。ただ女の子らしくしていたら、それはそれで色んな男に言い寄られたりで面倒事が多そうだ。
「シズ、受付はどこでもいいのか?」
正面の受付には5人の受付嬢がおり、ハンター連中の依頼処理をそれぞれ行っていた。ハンター連盟は冒険者協会と同じような感じだ。正面に受付や職員のスペースがあり、その横に依頼ボード。勿論ハンターが団欒出来る酒場や武器・防具屋も併設されている。
「誰でもかまわんが・・・私の顔見知りのところに行こう。あいつだ。」
シズが受付嬢の1人を指差す。
ミルナ達にもセシルという顔馴染みの受付嬢がいたし、こちらの世界でも高ランクになると専属受付嬢みたいなのが付くのかもしれない。もしアキにも専属がついたら・・・セシルに耳を禁止されそうだ。
そんな事を考えながらシズと受付の方へ歩みを進める。するとシズが知り合いを連れているというのが相当珍しいのか、ハンター連盟の騒めきが大きくなる。
「おい、シズルドリーヴァが人をつれてるぞ!部下じゃない奴をだ!」
「騎士隊長様・・・友達いたんだな!」
「万年孤独と噂の隊長様にも春が来たのか!」
「あの性格についていける男なんていないだろ。奴隷じゃないのか?」
「いや・・・あの男、弱みを握られて友達させられているんじゃないか?」
何というか凄い言われようだ。この美人騎士隊長様は普段どんな態度を取っているんだ。普通なかなかここまで言われないぞ。
ちなみにアキはさっきからシズの腕をさり気なく掴んでいる。何故か飛びかかって行きそうな気がしたのだ。まあうちには猛獣が1匹いるからな・・・。
「アキ、離せ。奴らはこの私を愚弄した。相応の報いを受けさせなければならん。私にも面子というものがある。」
やっぱりか。
しかし物理的に掴んで制止するだけでは時間稼ぎにしかならない。ちゃんと説得しなければシズは止まらないだろう。ただエレンの様に撫でたり抱きしめたりは出来ない。あれはエレンだから出来る事だ。シズに対してはあくまで「友人」として止める必要がある。
何かいい案は無いかと逡巡するが、自分の言葉で気づく。簡単な事だった。
「シズ、お前が暴れると『友人』である俺が困る。だから無視してくれ。」
「そ、そうなのか・・・?」
「ああ、それよりさっさと用事を済ませよう。友達でもない奴の言ってる事なんて気にする必要ないだろ?それより早く終わらせて友達同士でお茶でもどうだ。あんな連中に時間を使うよりずっと有意義じゃないか?」
シズは友達がいないと言っていた。貴族の連中は友人というよりただの知り合いらしい。あまりにも価値観が違い過ぎて、会話することもほとんどないんのだとか。それなら「友達」を全面に押し出せば、シズは止まってくれるはずだ。
「うむ、私は友人が困る事はしない。当然だ!それにさすがアキ!いい提案だ!」
「助かる。じゃあ受付にいこう。」
「うむ、ついてこい。」
機嫌もすっかり直ったようで、足取りが軽くなるシズ。まあこの手の懐柔はお手の物だ。ただここまで単純だとちょっと微笑ましい。
ちなみに噂話をしていた連中は「一瞬で機嫌が直ったぞ!」と驚いている。なんかエレンの時も「猛獣使いだ」とか騒がれた覚えがある・・・。懐かしい思い出だ。
幸いにもシズは上機嫌で連中の話はもう聞こえてないようだし大丈夫だろう。




