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ハンター連盟に到着するのにまだ暫くかかるなら、その間にシズからハンター試験について聞いておくとしよう。さすがに試験の詳細まではルティアに調べるようには言っていなかった。
「戦闘の適正試験はどこでやるんだ?」
「もちろん連盟でやる。」
何でもハンター連盟の建屋には訓練場が併設されているらしく、そこで戦闘試験を行うのだとか。
「なるほど。他に聞いておきたいのは、何時、どうやって、誰とやるかだね。」
「うむ、一つずつ説明してやろう。」
任せておけとシズがトンっと自分の胸を叩く。
彼女の説明によると、試験は試験官の手が空いてればすぐにでも受ける事が出来るらしい。ただ試験官の都合がつかないと、数日待たされる事もある。高ランク帯の試験になればなる程待たされる可能性があるのだとか。まあハンター人口はピラミッド型になっているので当然だろう。
ちなみに試験官であるハンターは、連盟で手の空いているハンターを適当に見繕うらしく、大抵は偶然その場に居合わせたハンターが選ばれる。そして連盟の職員が見届け人となり、その職員が合否を決める。
ただ試験に合格するには必ずしも試験官に勝つ必要はない。大事なのは模擬戦の内容らしい。勝てばわかりやすいが、負けても及第点であれば合格になる事も多いのだとシズが教えてくれた。
「ランクⅢになると試験官を任されるんだ。つまりランクIやⅡの試験もランクⅢが試験官をする。だから勝てなくても仕方ないのだ。むしろ勝ったらⅢでの合格になるからな。」
シズ曰く、ランクIやⅡだとまだ戦闘経験が浅いから試験官として成立しない場合が多いらしい。だから低ランクの試験も、中堅層のランクⅢが担当する。それにIやⅡだと致命傷になりかねない攻撃も平気でするので、死傷者を出さない為の配慮なのだとか。まあ実力が足りないから手加減が出来ないという事なのだろう。
「なるほどね。ランクⅢのハンターが無限にいるわけじゃないし、自分自身の依頼もある。だから認定試験に待ちが出る事もあるわけだね。」
「ああ、IやⅡの申請は相当数あるらしいからな。」
「じゃあⅢとかⅣの試験はⅣやVが担当するのか?」
流石にランクⅣの試験をランクⅢが担当するわけはないだろう。それにシズの説明だとⅢの試験も下手したらⅣがする事になるのではないだろうか。
「いや、Ⅲの試験はⅢが担当することが多い。何故ならランクⅣはなかなか捕まらないからな。」
どうやらランクⅣの人口自体かなり少ないらしい。ランクVになるとユーフレインという世界に数人しかいない。だからまず出会う事はないだろうとの事だ。
「割とすぐ試験が受けられるのはⅢまでだな。Ⅳだと下手したら1か月とか待つぞ。Vなんて年単位だろう。まあVになりたいやつは自分でそいつに会いに行くだろうがな。」
確かに世界に数人しかいないVが来るのを待つより自分から会いに行った方が建設的だ。シズの説明に納得する。
しかしⅣでもそんなに待たないといけないのか。
ちなみにイリアやルティアによると、シズはAに近いBランク冒険者くらいの実力らしいが・・・ベルフィオーレにはBランクの冒険者はそこそこいた。
もしかしたらユーフレインの戦闘レベルは全体的に低いのだろうか。
いや、その考えは危険だ。油断は禁物だ。アキは自分に言い聞かせる。勿論イリアやルティアの観察眼は信用しているが、こればかりはちゃんと自分の目で確認するまで結論を出さない方がよさそうだ。
とりあえずアキにはシズがいてくれるので、試験を1ヶ月も待つ必要はないだろう。きっと彼女は快く試験官を引き受けてくれるはずだ。
「俺は運がいいな、シズが友達なんだから。」
「えへへ、嬉しい・・・じゃない・・・コホン。うむ、私が友人である事を誇りに思うがいい。」
アキの言葉が嬉しかったのか、素のシズが一瞬出て来た。こういうところはちょっと可愛い。
しかしシズと知り合えて本当によかったと思う。この街で円滑に物事を進めるに辺り、シズは欠かせない人材だ。貴族であり、ハンターであり、騎士隊長でもある。こんな人材、そうはいないだろう。
「もうすぐ着くぞ。」
窓の外を確認していたシズが教えてくれる。どうやらハンター談義をしていたら何時の間にか30分近く過ぎていたようだ。
ハンター連盟がどんな場所なのか、少し楽しみだ。ベルフィオーレの冒険者協会とは雰囲気も結構違うのだろうか。ハンター連中は一体どんな人間なのだろう。
それに冒険者協会では色々と「お約束」があった。愉快な出来事もあった。ユーフレインでもそんな事が起こらないかと、少しだけ期待している自分がいる。
「最近平穏すぎるからな・・・危機感が薄れている気がする。」
アキはボソっと呟く。
ベルフィオーレは平和そのものだった。為政者連中はみんな真面目だし、極悪人もほとんどいない。荒れくれ者といえば、冒険者連中がちょっと調子に乗っているくらいだった。まあ魔獣政策があるから当然と言えば当然なのだが。
だからアキにとってはアリステールでの「あの出来事」がここ最近では一番の事件だ。ルティアやイリアの件は特に危険だったとは思わない。不確定要素もほとんどなかったし、アキにとっては全て予定調和の展開だ。
そう言う意味で、少し刺激が欲しい。平和ボケしないように、ある程度の危険に身を置いておくべきだ。ユーフレインという世界でこれから活動しなければいけないのだから。
「どういう意味だ?」
当然シズにアキの思惑がわかるわけもなく、不思議そうに首を傾げている。だがさすがにこれを彼女に説明するわけにもいかない。適当に「独り言だから気にするな」と誤魔化しておく。
丁度その時、馬車が停車してくれた。いいタイミングだ。これ以上シズに突っ込まれなくて済む。
「なら気にしないでいいか。さあ、アキついたぞ。私についてこい。」




