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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十二章 イニステラ①
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「そうですか、では是非お願いします。ただ今日はちょっと時間ないので明日・・・今日と同じ時間にお伺いさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「勿論でございます。それでは明日、また当商会までお越しください。」


 何か冷ややかな視線を感じる。多分気のせいではないだろう。どうせ隠れているイリアとルティアだ。でも奴隷商人に会う理由はちゃんとある。後でちゃんと説明すれば彼女達は理解してくれるはずだ。


「アキ、奴隷買うの?」


 丁度いいタイミングでシズ質問してくれた。全力でこれに乗っかってルティアとイリアに説明するとしよう。


「いや、わからない。メイドは1人いるけど後学の為に会ってみたいんだ。それに商人の知り合いを増やしておいて損はないだろ?」

「ああ!確かにそうだね!」


 シズは納得と言った表情だ。ルティアとイリアも納得してくれただろうか。まあ刺さるような視線が無くなったので多分大丈夫だ。アキはホッと一安心する。


「ではエル商会長、次の予定があるので私とシズはこれで失礼します。」

「かしこまりました。では明日お待ちしております。シズルドリーヴァ様との逢瀬のご予定がございますのに引き留めてしまい申し訳ありません。」


 この商会長も冗談がきつい。アキは適当に会釈をして席を立つ。だがシズはスルースキルがないのか顔を真っ赤にしている。


「ち、違うから!アキには街の案内頼まれているだけ!」

「シズ、商会長の冗談だから適当に流しなさい。必死になればなるほどそうだと思われるぞ?」


 きっとシズはあまりからかわれたりしないのだろう。まあうちの子達もすぐに顔を真っ赤にする。良い意味で純粋な子達だ。


「そ、そうなの・・・?わかった、そ、そうするね。」


 アキの言葉に素直に頷くシズ。


「それではエル商会長、また明日よろしくお願いします。」


 改めて商会長に挨拶して商会を出る。


 これで屋敷は手に入った。次はハンター連盟だ。むしろ今日の本番はこっち。屋敷の購入なんて金を出せばいいだけなので、大した労力ではない。だがハンターの方はもし戦闘試験が今日あるなら、久々の実戦だ。訓練は欠かしていないので問題はないはずだが、やはり気合は入る。


「じゃあシズ、ハンター連盟まで案内を頼む。」

「うん!こっちだよ!ちゃんとついてきてね!」






「イリア、ルティア。この屋敷どう?」


 アキは購入した自分の屋敷に来ている。


 ハンター連盟はアキ達が購入した屋敷から馬車で30分くらいの場所にあるらしい。シズが馬車を出すと言ってくれたので、お言葉に甘える事にした。屋敷に馬車を取りにいくからここで待っててと言われたのだ。


「イリア、ルティア、この屋敷どう?」

「うん。いい。」

「私も問題ないよ。そもそもアキが買ってるんだから文句なんてないかな?」


 2人が大丈夫と返事をする。


 今シズはいないので、イリアにかけていた光学迷彩は解除した。ルティアにも影から出て来て貰い、早速3人で新しい屋敷のリビングで寛いでいる。


 悪くない。広くて落ち着くし、ソファーもふかふかでのんびりできる。さすがにミスミルドの屋敷程ではないが。だがまあきっとここも住めば都になるだろう。


「それよりアキ。シズ好き?落とす?」


 何かルティアが拗ねている。


「いや、落とさないから。好きだけどあれは友情だ。向こうもそうだろ。」


 アキがそう言うと、ルティアが呆れた目を向けてくる。だがその目をされるのは非常に不本意だ。まるでアキが周りが見えてないみたいじゃないか。


「アキ、鈍感?」

「え?むしろ察しは良い方だと思うぞ。」


 シズから好意を向けられているのはわかっている。でもそれは間違いなく友情だ。彼女は友人がいないから、話し相手や訓練の相手を求めている。まあそこから感情が変化して「恋愛」になる可能性はあるが、今は間違いなく「友情」だろう。


「ルティア、先に言っておくが『友情』を『恋愛』にする気はないからな。」

「むぅ。先に言われた。」

「当たり前だろ。ルティア達で手一杯だ。これ以上は俺の手には負えない。友達ならいくらいてもいいけど恋人はいらん。お前らがどれだけ手かかると思ってるんだ。自覚あるだろ?」

「あ、あるけど・・・。でもイリアは?増えない?」

「ああ、まあ増えるとしたらイリアが最後だろうな。」


 ルティアと適当な雑談をして時間を潰す。いつものことだ。ルティアとはこういう下らない話をよくしている。彼女は基本的にずっと影にいるから、ミルナ達に混ざらず夜にこっそりと2人きりで話をする事が多い。まあルティアが勝手にアキの部屋に「お話しよ」って来るからなんだが・・・。


「ど、どういうことかな!わ、私もアキのお嫁さん!?」

「イリア、適当な雑談しているだけだ。さっきシズにも言ってただろ。」

「ムキになると逆にそう思われるやつだよね!わかってるよ!でも仕方ないもん!」


 イリアが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。


 そして最後にボソっと「そうなりたいって気持ちは・・・ちょっと・・・あるけど」とイリアが呟いた。当然それを聞き逃すアキではない。


 まあ彼女は今自分の気持ちと向き合っているとこなのだろう。暫くはイリアの好きにさせよう。ミルナ達も「イリアならいつでも大歓迎」と言ってくれているので、彼女が望むなら11人目の嫁として歓迎する・・・いや、させて頂きたく思う。


 そう言えばエスタートの爺さんとイリアナは自分の嫁の数で賭けをしてやがった。もしイリアが加わるとなると11人になる。イリアナは確か12人に賭けていた。あと1人足りない。あのメイドなら12にする為に自分で立候補してきそうだ・・・。考えるのが嫌で後回しにしていたが、そろそろ本気で検討しないと不味い事になりそうな気がする。


 まあまたそれは今度考えるとしよう。


「それより奴隷制度があるんだな。」

「調べてなかった。ごめん。」

「いや、俺も忘れてた。気にするな。」


 ルティアが謝るが、彼女のせいではない。


「アキ、なんで見に行くのかな?」


 イリアが会話にはいってくる。


「ああ、理由があってね。今夜話すよ。」

「うん、わかった。そのほうが1回で済むもんね。」


 無駄に追及してこないイリアは本当に手がかからない。というかミルナ達は必要以上に追及してこないから本当に物分かりがよくて助かる。まあ「アキに関する事を除く」という注釈はつくが。


 アキの事になると性格が変わったように詰め寄ってくる。有無を言わさず話せと脅してくる。1人で出かけさせては貰えないし、今日みたいにミルナ達を留守番させた日には、何をしたか、誰と話したかを逐一全てを報告させられる。


 そんな事を考えていたらルティアがとんとんと肩を叩いてきた。


「アキ。シズがそろそろ着く。」


 どうやら迎えが来たようだ。

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