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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 ユーフレイン
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25

 屋敷はアキが気に入ったところを決めていいとお墨付きを貰ったので、明日の予定は大体決まった。


 まずシズをつれて屋敷の内覧に行く。何軒かみて一番いいところをさくっと購入。その後シズにハンターの話をして連盟に同行して貰う。


「そしてタイミングを見て氷姫の事をシズに聞く。」


 予定としてはそんな感じになるだろう。


 エヴァグリーンでの活動がどれだけ円滑に進むかの鍵はやはりシズ。彼女と友好関係を築いて、協力を仰げるかどうかにかかっている。


「アキさんなら大丈夫です、出来ますわ。」

「ですです、でも落とすのはダメですよー?」


 ミルナとソフィーが自信を持ってくださいと言ってくれた。もう十分にお話したからシズの件では不機嫌にはならないらしい。


「そんな気はさらさらないから大丈夫だ。」

「ならいいですー!」

「じゃあ夕飯にするか。」


 そろそろ夕食の準備をしないと不味い。まあ下ごしらえはシャルがしてくれているはずなのであとは作るだけだ。


「アキさん、私からも少し報告があります。」


 ベルが少しだけ待ってとアキを引き留めてくる。


 彼女の報告となると、エスペラルドの為政に関しての事だろうか。今日は登城して王や王妃である父母と話してくると言っていた。


「うん、いいよ。」


 丁度ソファーから腰を上げたところだったが、アキはソファーに座り直してベルに話を続けるように促す。


「はい。早速アキさんが提案していた4ヶ国会談について話してきました。」

「昨日話した事を一通り伝えたってこと?」


 ベルが「その通りです」と頷く。彼女の表情を見るに、特に問題はなかったようだ。報告とはその結果を聞いて欲しいという事だろう。


「お父様もお母様も概ね賛成です。素晴らしい案だと褒めてくださりました。早速手配するとのことです。」

「それはよかった。」


 どうやらアキの提案をそのまま受け入れ、実行するらしい。つつがなく進んでいるようでなによりだ。


 ベルの報告はそれだけなのかなと逡巡していると、ベルが何やらもじもじして言い淀んでる。


「いいから遠慮せずに言え。さっき言っただろ。」

「は、はい……。あの、その……それでですね、その会談にアキさんも参加して欲しいと。でも!私は反対したんです!アキさんはユーフレインの事で忙しいし、そもそもベルフィオーレの王政に巻き込むのも嫌だったので!で、でも……!」

「ベル、落ち着け。」


 ベルが必死に言い訳し始めたので、無理矢理止める。


「ご、ごめんなさい。」

「いいよ。いつ?」

「え?」


 アキがすんなり了承すると思わなかったのか、ベルが素っ頓狂な声をあげる。


「だからいいよって。」

「い、いいんですか?」


 ベルは参加して欲しいと頼むのが嫌だったのだろう。確かに本来であれば、各国王家で行うべき事だ。でもそれだと不安だから、アドバイザー的なポジションでアキにも参加して欲しいと頼んできた。でもベルからしてみればそれは歯痒い気持ちに違いない。自分達では扱いきれない案件だから、助けて欲しいと言っているのだ。王女として複雑な心境なのもわかる。アキのような一般市民に「助けて」と言わなきゃいけないのだから。


「え、アキ君は断じて一般市民ではないわ……。何言ってるのかしら……。」


 エリザが呆れた顔で呟いている。


「え?俺はどこにでもいるような善良な市民のつもりなんだけど……?」


 そう言った瞬間、エレンやリオナが「はあ?」といった顔をしやがった。なんだその反応は。甚だ不本意だ。こいつらに対して言いたい事は山ほどあるが……まあとりあえずベルの返事が先だ。


「ベルの側にいる為に必要な事なら何でもするって言っただろ。それだけだ。」


 何か文句あるかとベルを軽く睨む。


「ううん、ありません。えへへ、ありがとうございます。」


 するとベルは嬉しそうに微笑む。


「ではアキさん、お願いします。日程はまだ決まっていませんが、決まり次第すぐに言いますね?」

「ああ、頼む。報告はそれだけ?」

「はい!それだけです!」


 言わなきゃいけない事が言えて肩の荷が下りたのか、ベルは憑き物が取れたような晴れやかな表情をしている。


 今度こそ話を切り上げて夕飯の準備に向かっても大丈夫だろう。だがその前に……


「リオナ、エレナ。こっちおいで?あとセシルも。」


 アキが呼ぶと、彼女達は「構って貰える!」と嬉しそうな顔で近づいてきた。


 まずエレンをトレーで一発殴っておく。


「な、何すんのよ!」


 そしてセシルの耳とリオナの尻尾をおもいっきり引っ張る。


「い、いたいよ!アキ、やめてよ!?」

「耳、耳は優しくってばああああ!!!」


 さっきの仕返しだ。一般市民と言った時、この3人は「馬鹿?」って顔をしやがった。


「すぐ表情戻したけど、セシルもそういう顔してたの見てたぞ。」

「だ、だってー!」


 リオナとエレンは「あはは」と渇いた笑いを浮かべている。


 よし、仕返しも出来た事だし、今度こそ夕飯の準備をさっさと済ませて、明日に備えてごろごろするとしよう。

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