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「今日の話はこんなところかな?」
ルティアが調べてくれた情報はこれで全部だろう。彼女も「これで全部」とアキの方を見て頷いているので問題なさそうだ。しかしルティアの情報収集能力は本当に凄い。どうやってこれほどの情報をあんな短時間で調べたのだろう。
「どうやったの?」
「な、ないしょ!企業秘密!」
ルティアは恥ずかしそうに頬を染めそっぽを向いてしまう。褒められて嬉しそうだが、調査方法は教えてくれないらしい。
「でもルティアがいるから本当に助かる。」
「ほんと?やった!」
ルティアに感謝しつつ、アキは雑談へと移行する。後はこの子達と楽しく夜を過ごすだけだ……と言いたいが、ミルナ達がそれを許してくれるわけがない。
「えへへ、団欒はまだですよー。お話が先なのですー!」
ソフィーが満面の笑みで語りかけてくる。彼女の笑顔を見られるのは僥倖だが、言っている事が不穏なのであまり手放しに喜べない。
「えー、なんで。」
一応無駄だとわかってはいるが、最低限の抵抗だけはする。
「うふふ、すぐに女の人を落とすからですわよ?」
ミルナがくすくすと笑いながら近寄ってくる。
「今日は特別にこのままでいいです。私の膝枕はいかがですか?」
「う、うん。最高だけど。」
逃げようと思ったのに、アリアに膝枕されているのが仇となった。退こうとした瞬間、アリアに押さえつけられてしまう。
「えっと……氷姫にはまだ接触すらしてないんだけど?」
もちろん「お話」が王女の事でないのはわかっている。どうせシズの事だ。これだけ真面目な話をした後でもちゃんと「お話」する事を覚えているのだからある意味凄い。忘れてないかなと淡い期待を抱いたが、無駄だったようだ。
「王女様の事ではないです。言わなくてもわかりますよね?」
「アキ君はなんで女の人を選んだのかしら?」
「それに剣士を選ぶのはダメなのだ!私がいるだろう!」
「この変態!覚悟しなさい!」
「アキ、私は本当に悲しいよ?」
セシル、エリザ、エリス、エレン、リオナが順々に文句を言ってくる。そして彼女達の熱に当てられたのか、イリアも「お話」に参戦してきた。
「そうだよ!アキ!ちょっと節操なさすぎじゃないかな!」
確かにイリアも「お話」するとはユーフレインから帰る直前に言っていたが、本当に参加してくるとは思わなかった。珍しい事もある物だ。当然アキだけでなく、ミルナ達もそんなイリアに驚いている。
「あらあら、これは……うふふ。」
ミルナが袖口を口に当て、意味深に微笑む。そしてエレンとリオナもにやにやしているし、ソフィーに至っては万歳三唱している。この駄エルフは一体何をやっているんだ……。まあ何となくはわかるけど。
「な、なにかな!?」
ミルナ達の視線に気づいたイリアが慌てる。
「なんでイリアがアキさんに文句いうんですかー?なぜですかねー?」
うちの駄エルフが楽しそうにイリアを煽る。
「だ、だめなのかな!?私だって言いたい時くらいあるんだからね!」
「だってイリアはアキさんの女ではないですよねー?それともそうなんですかー?あれー?そういえば帰って来た時、腕組んでましたねー!しかもイリアの方から!えへへ、早く認めた方が楽になれますよー?」
ソフィーが畳み掛けるように煽る煽る。そしてそれに比例してイリアの顔が赤くなっていく。ある意味ソフィーの煽りの才能は尊敬できるレベルだ。これを自分にされたらとっくにこの駄エルフを庭に捨てている自信がある。
しかしイリアの件に関してだけは本当に寛容なミルナ達。ソフィーを筆頭に、うちの子達はアキに女の影が見えるとすぐに「お話!」とか言うくせに、イリアだけは例外らしい。むしろ彼女達の方から勧めてくる。
「うるさいバカエルフ!変な事言わないでよね!」
「あれあれー?ムキになるって事はそーなんですかー?」
そろそろイリアが泣きだしそうだし助けてやろう。
丁度アリアがトレーを渡してくれたので、ソフィーに向かって全力で投げる。さすがアリア。タイミングばっちりだ。
「やめんか。この駄エルフ。」
「うぅ……痛いですー!」
顔面で綺麗にトレーを受け取ったソフィーが蹲っている。だがすぐに復活してぶーぶー文句を言ってきた。相変わらず生命力だけは無駄にあるエルフだ。
「いいですか?この私がイリアは落としてもいいと許可したんです。わかりますかー?つまりアキさんはお嫁さんを増やせるです。私に感謝しやがれです。」
「そうか、もう一発いくか。」
うざい。さすがにちょっとイラっとしてしまった。だがこんなに偉そうに上から目線で言われたら、誰だって苛つく。ミルナ達ですら苦笑いなのだから。
「なんでですか!?やめてくださいー!」
「じゃあ俺を煽るな。後、イリアをいじめるな。ソフィーの気持ちは嬉しいよ?でも無理矢理そんな事をしても誰も幸せにはならないからね?イリアは俺に懐いてくれているんだし、もう少し待ってあげなさい。」
ソフィーに悪気があるわけじゃないのは分かっている。彼女にとってイリアは大事な仲間。だから善意でやっているつもりなのだろう。アキとしてもイリアの事はかなり気に入っているので、ミルナ達と同じような関係になれたら嬉しいけれど、強制する事ではない。
「じゃあいつかは落ちるってことです?」
「うん、そのうち落ちるんじゃない?」
「ならいいですー!」
適当に会話を合わせておけばソフィーも満足するだろう。それにイリアは結構懐いてくれている気がする。アキから何かするつもりはないが、今日の様子からすると、いつか慕われる可能性は無きにしも非ずだ。
「ちょっと!アキ!何を言ってるのかな!?」
気付いたらイリアが顔を真っ赤にしていた。
まあなんだかんだ純真無垢なイリアだ。こういう話をするのは恥ずかしいのだろう。それに恋愛経験もイリアはあまりないだろうから「好き」とは何なのかよくわかってない気さえする。もちろんミルナやベル達も最初はこんな感じだった。アキと過ごした時間を通して友愛と恋愛の「好き」の違いを理解したのだろう。
ただアキとて恋愛経験なんてないので、あまり偉そうな事は言えないが、地球では恋愛に関する文化が発達していた。そういう意味では彼女達より恋愛についてわかっているつもりだ。でも実際そういう場面に直面すると物凄く緊張するし、恥ずかしい。しかも最近身をもってそれを知った。あれは思い出したくない痴態だ……。
まあそんな自分の事はさておき、イリアはそういう気持ちを理解しようとしている段階だ。だから自分の中で気持ちの整理がついたら、イリア自身でどうするか決めて欲しい。ソフィー達の意見に流されて決めてしまうのが一番よくない。
とはいってもこんなイリアの心情を口に出して説明するわけにはいかない。言ったら多分羞恥でイリアが死んでしまう。
「イリアの好きにしろ。それが一番正しい。この馬鹿エルフが何かしてきてたらすぐ俺に言え。速攻でポイしてくるから。」
とりあえずイリアの好きにさせるのが一番だ。
「うん、そうする。アキ、ありがとね。」
「アキさん!ポイはダメ!ポイはイヤですー!」
アキの言葉にイリアは素直に頷き、ソフィーが捨てないでと懇願してくる。
「ならソフィーもイリアの事を見守ってあげなさい。」
これでうちのエルフも暫くは余計な事はしないだろう。
「とりあえず……ソフィー。『お話』の続き、するんだろ?」
「はいですー!」




