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「ハンターの話はもういいか?」
ミルナ達に確認するが、特に異論は無さそうだ。いや、彼女達の表情を見るに、不満そうな顔をしている。何も言えないだけだろう。
そう、ランクⅣでアキ「だけ」ハンター登録すると言ったら猛反対されるのはわかっていた。だから先手を打っておいたのだ。
「ぐぬぬ、言いたいけど言えないんですー!アキさんの卑怯者―!」
ソフィーがわかりやすく地団駄を踏んでいる。
「イリアの勘は信じていい」そう言ったのはミルナ達だ。あの確認をいれたのは、彼女達からこの言葉を引き出す為だったりもする。ミルナ達が「危険です!ダメです!」と止めにくるのは目に見えていた。だからユーフレインの実力者であるだろうシズの実力をイリアに見極めて貰い、それをミルナ達は肯定した。つまり自分達で肯定した以上、文句は言えない。
「完全勝利。でもミルナそれ痛いからやめて。」
アキは相変わらずミルナに膝枕されている状態だ。それをいいことに、ミルナが容赦なく頭を鷲掴みにしてくる。
「ちょっとした仕返しですわ。」
ミルナが「しりません」と拗ねる。
「でも参考までに教えてくださいませ。もしアキさんが私達の立場ならどうやって反論するんですの?」
さすがミルナ。ちゃんと次に活かす為に対策を聞いて来た。でもそんなところ成長しなくていい。次から説き伏せるのが面倒になるだろうが。
ちなみにアキが逆の立場だったなら、今使った手に実は穴があるので、そこを指摘する。
「それはなんですの?」
「いや、シズは騎士団隊長で、イリアはBランクくらいだと言ったよね?でもそれがハンターランクⅣと同等って保証はないからそこを突っ込むかな?」
シズの実力は冒険者Bランク。これは事実だとしても、冒険者ランク=ハンターランクという証明はない。シズがBランクの実力を持っていたとしても、冒険者自体がハンターに比べて遥かに弱い可能性はある。ハンターランクⅣの実力を直接見ていないのだからそう考えるのは当然だろう。
「なるほどですわ!じゃあダメですわね!」
「そうね!アキ、ダメよ!危険だから許さないわ!」
「ですです。1人で登録するのは禁止ですー!」
「実力がわからないんだから当然だよね?」
ミルナとエレンが勝ち誇った顔をしている。よくもまあそこまでのドヤ顔が出来る物だ。そしてソフィーとリオナもそれに乗っかってきた。ベル達もよくやったとしたり顔だ。
彼女達が意地悪がしたいわけじゃないのはわかっている。単純に心配してくれるだけだ……多分。
だがアキは意見を変える気はない。当然このまま登録するつもりだ。
「やだ。登録する。」
「アキさん?我儘はダメですよ。今回はアキさんの負けです。諦めてくださいね。」
くすくすと笑うベル。
「まだちょっと詰めが甘いね?」
「ど、どういうことですか……?」
不穏な空気を感じ取ったのか、ベルが恐る恐る聞いて来る。
「シズはハンターでもあり、ランクはⅣ。だからなんの問題もないんだよ。」
アキがそう告げると、全員が「まさか」と意表をつかれたかのような表情を浮かべている。特にルティアの驚いた顔は珍しい。目を見開いて可愛らしく口をぱくぱくさせている。
「……!?アキ。なんで私が知らない事、知ってる!」
そう、これはルティアの報告には無かった情報。だからミルナ達は知らなくて当然だし、情報収集していたルティア本人が驚くのも無理はない。さっき彼女達に言わなかったハンターⅣで申請する本当の理由がこれ。必ずこういう展開になると思っていたので、最後に一手残しておいた。
「シズが店主と言い争いしてる時に言っていたんだよね。それを聞いてた。」
シズがポロっと「ハンターランクⅣであり、騎士団隊長である私を侮辱するとは~」的な発言をしたのだ。まあアキは聴覚強化魔法を使っていたから拾えた発言だったし、イリアには聞こえてなかっただろう。しかしこの言質がなかったらハンター登録は正直見送っていたかもしれない。
「だからBランク相当のシズがランクⅣのハンターだから大丈夫でしょ?」
アキにしてやられて本当に悔しそうなミルナ達。
「アキさん、私達を苛めて楽しいですか?」
「うん、意外に楽しい。」
アリアが聞いてきたので正直に答える。
ただアリアだけはそこまで悔しそうにしていなかった。むしろ言いくるめられて少し恍惚とした表情を浮かべていた気さえする。
嫌な予感しかしない。
「もっと私達を苛めてください。さあ、さあ。」
やはりそうくるのか。このど変態メイドめ。
「ちょっとアリアさん!それだと私達まで変態みたいになるのでやめてください!」
セシルがアリアに非難の声を浴びせる。さすがのセシルもアリアの変態属性にはついて行けないようだ。まあその気持ちはわかる。アリアの変態趣向に付き合うと恐ろしい結末しか見えない。
「そもそもみんなの性格はよくわかっているんだ。反対されるなんて承知の上。それでも俺が『登録する』って言ったんだよ?」
皆がアキの事を分かっているように、アキだってちゃんとミルナ達の性格は理解している。
「そうですね……言われれば当然のことですね。」
「ですわね。私もまだまだですわ。」
ベルとミルナがやっぱり敵いませんと白旗をあげる。まあアキとしてもこの子達相手にこの手の読み合いで負けるわけにはいかない。それすら勝てなくなったらもう全てにおいて勝てなくなる。それだけは避けたいところだ。ただ段々とこの子達が順応してきているので、いつか完全に敵わなくなって、ミルナ達の手のひらで転がる人生が待ってそうで最近は戦々恐々としている。
「心配してくれているのはわかっているから無理はしないよ。それに上手くいけばハンターランクⅣの試験の相手はシズかもしれないしね?」
シズには明日さりげなくハンター登録すると伝えるつもりだ。そしたらきっと「私もついていく」とか言ってくれそうなので、この可能性は十分にあるだろう。赤の他人とやるよりはずっと気が楽だし、致命傷な攻撃はしてこないはずだ。
ユーフレインで活動するにあたり、こういう危険なを渡らなければいけない場面はどうしても出てくる。その時どれだけそれを軽減出来るかが重要になってくる。だからその辺りのリスク管理は怠るつもりはない。
「そこまで考えているならもう何も言いません。」
ベルが優しく微笑む。
「ありがとね、ベル。」
ただ……と最後に一言付け加えるベル。
「アキさんが危険な目に遭うのは嫌。もしまた勝手な事したら……いっぱいお話ですからね?」
ベルの目が笑ってない。これはお話どころか一生首輪付きで飼われそうだ。ベルなら多分本気でやる……。気を付けよう。
「はい。」




