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「で、ハンターの実力だけど……セシル、見抜けると思うか?」
見るだけでその人物の冒険者ランクを見抜く事が出来るセシルの特技だが、果たしてハンターにも有効なのだろうか。もしそれが可能なら、ユーフレインでの対人戦闘に対する警戒をある程度は解けるだろう。
「多分大丈夫です!でも私が見ても冒険者ランク換算になっちゃいますよ?」
「むしろそっちのが俺達にはわかりやすいだろ。」
「あ!それはそうですね!」
セシルが「馬鹿な事聞いちゃいました」と可愛らしく舌を出す。
ちなみにハンターもランク付けがあるが冒険者のランクとは少し異なる。ベルフィオーレの冒険者はランクがSからHまでの9段階存在しているが、ユーフレインは5段階。IからVだ。最低がIで最高がV。
「ちなみにハンター登録した時、ランクはどこからなのだ?」
そういえばエリスにまだ説明してなかった。彼女だけはルティアの話をちゃんと理解してない。まあどのみち中途半端だったし、改めてわかりやすくハンター制度の説明をするとしよう。
「そこが冒険者制度とはかなり違う。好きなところからだ。」
冒険者は全員Eランクからスタート。それに例外はない。そして依頼達成率、受託依頼の難易度によって適宜昇格、降格が行われる。上位になるにつれて条件は厳しくなり、Sランク昇格には闘技大会優勝という特殊な条件も加わる。
だがユーフレインのハンターランクはそこが大きく違う。というよりずっとシンプルだ。登録する際、自分が適していると思うランクで申請を行う。そして戦闘審査があり、それに合格すればそのランクが付与される。昇格についても申請ベースで、自実力が付いたと確信したら自ら申請して昇格試験を受ける。
「簡単にいうとランクⅣで申請して試験に合格すればⅣからだ。」
だがその分、最低ランクのIですら戦闘試験はある。そしてそれに合格しないとハンターになる事すら出来ない。冒険者は無条件で誰でもなれるが、ハンターは基礎戦闘が出来ないとなれない。まあ試験の挑戦回数に制限はないので、落ちても訓練して再挑戦すればいいだけの話なのだが。
「つまりランクはハンターの戦闘能力をそのまま表す。」
当然ランク別に発行される依頼も、上に行けば行くほど強敵になる。ただ冒険者の指名依頼のように、依頼主が任意に難易度を決める事はできない。そもそもハンターには指名依頼というものがない。依頼の発行は連盟しか出来ないし、依頼ランクも連盟が事務的に決定する。
「ランクVだけは少し例外だけどな。といっても冒険者Sランクのように特権があるわけじゃない。」
ベルフィオーレの冒険者Sランクは特殊も特殊。特権だらけだし、例外も多い。だがユーフレインのハンター制度最上位ランクVにそのような物は一切ない。Vは単純な理由で特殊なのだ。ただ単に戦闘能力測定試験がなかなか受けられないというだけ。
「ランクVで申請しても試験を受けられない場合が多いらしい。」
まあ少し考えれば当然の事だ。戦闘試験でランクVの審査が行えるのは同じランクVのハンターだけだろう。ベルフィオーレのSランク冒険者が指の数程しかいない事を考えると、ランクVも相当少ないはず。だから試験が行えないという理由はわかる。
「ランクVが丁度イニステラにいて、手が空いてたらやってくれるだろうけど……」
正直ハンター申請をするならランクVでしたかったが、こればかりはさすがにどうしようもない。イニステラは王都なので他の街にいるよりはランクV試験を受けられる可能性は高いだろうが、そう都合よくランクVがいる事もないだろう。
「とりあえずルティア、ハンターに関する情報は完璧。ありがとね。」
「がんばった。」
お礼を言うと、ルティアは嬉しそうに飛び跳ねている。ただ相変わらずアキの上に座っているのだから暴れるのはやめて欲しい。
「今の話を踏まえた上で明日以降の予定なんだけど……イリア、シズの実力はどの程度だと見る?」
まずは戦闘力の確認だ。騎士団隊長ともなればユーフレインでも屈指の実力者だろうし、ユーフレインの戦闘指数の良い目安になる。ちなみにシズの事はミルナ達に簡単に説明してある。というかアキが風呂に行っている間にルティアとイリアが勝手に話していた。何でそこだけ話すんだ。
「うーん、私の勘だけど……エリスさんにはまったく及ばない。冒険者でいうとBくらいじゃないかな?」
「その勘、信じていい?」
アキが確認すると、イリアではなくソフィーとリオナが答えてくれた。
「アキさん、大丈夫です。イリアの目は信用できますー!」
「そうだね、大丈夫だよ。」
この中でイリアを一番よく知っているのはミルナ達だ。エレンやミルナも頷いているし、それなら信用しても大丈夫だろう。
「よし、なら問題ない。明日、まずは俺だけハンター登録する。申請ランクはⅣ。」
Vで行けるならVで行くが、試験が受けられないだろうからとりあえずⅣでいい。そして、今は彼女達には説明しないが、Ⅳで申請する理由はまた別にある。
とりあえず試験の内容を見て、問題ないようならミルナ達にもⅣで受けて貰うつもりでいる。まあ皆といってもミルナ達、エリス、イリアの6人だけだ。アリア、セシル、ベルはもともと戦闘は出来ないので除外だ。
「私は?」
「ルティアは影でいて欲しいから駄目。ごめんね?」
「ううん、いい。私はアキの影。だいじょうぶ。」
よってルティアも除外。
あとはエリザだが、アキが説明する前に我慢できなくなったらしく、口を挟んできた。落ち着きのない猫だ。
「アキ君!私は受けなくていいのかしら?おねーさん魔法使えるわよ!」
「黙れ、猫。」
「ちょっと!?その雑な扱いはなんなのかしら!?私はおねーさんよ!」
尻尾を逆立てて威嚇してくるエリザ。だがお姉さんの威厳なんてない。むしろ猫としての威厳しかない。
「大体エリザは戦闘訓練してないだろ。それに魔法を封じられたらどうするの?短剣や剣でミルナ達と渡り合えないでしょ?」
魔法に関しては、エリザはミルナよりは上だ。だが総合的な戦闘力でみるとミルナの方が遥かに上。だからエリザを戦闘の前線にはあまり立たせたくはない。訓練しているならともかく、今のままでは駄目だ。
「そ、それはそうかもだけど!」
「エリザを危険な目に遭わせたくないだけだ。今は黙って俺に守られてろ。」
「……は、はい!」
ご自慢の尻尾を逆立て、緊張した声で返事をするエリザ。ただ心なしかどこか嬉しそうだ。もしかしたらエリザも「俺の女」的発言が好きなのだろうか……。
よし、少し試してみるとしよう。
「エリザも俺の女なんだろ?」
「え、ええ。まあ、一応、そうよ?」
一見冷静に返事をしているように見える。だが尻尾が千切れそうな勢いで揺れていて、それはそれはもう本当に嬉しそうだ。リオナの尻尾以上にわかりやすい。ちなみにリオナの方をチラッと見ると「しょうがないじゃん!こっち見ないでよ!」と尻尾を抱きかかえ涙目になっている。
面白い。
「まあエリザ、ハンター登録したいなら訓練してからにしよ?」
「うん……わかったわ。私の事を心配してくれているだけだものね。」
一応は納得してくれたようだ。ただエリザもアキの隣に立ちたいので、これからは訓練に参加すると言ってくれた。どうやらエリザとの模擬戦も今後は訓練メニューに追加する事になりそうだ。




