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「ユーフレインというかエヴァグリーンの状況はこんな感じかな。質問ある?」
ベルで遊んだ事だしそろそろ本題へ戻るとしよう。
「じゃあ今後はどういう方向性でいくのかな?」
イリアが真っ先に質問してきた。まあそれも当然か。自分の故郷だからこそ誰より関心があるのだろう。
「エヴァグリーンの為政者に接触するつもり。」
ルティアの情報から導き出される最適解は国政改善策の立案。おそらくユーフレインには王家に助言や指導をする者がいないのが大きな問題だ。どういう政策が良くて悪いか、客観的に判断できない。誰も王家に助言しないから、とりあえずやってみようになってしまっている。だからアキが治安改善などの政策を提案すれば、ユーフレインもよくなっていくはずだ。
「まあ各国の為政者にどうやって接触して、どうやって話を聞いてもらうかが一番の難題なんだけどね。」
「あはは、なるほどね。なんでもするから私に手伝える事は言ってね!」
依頼した手前、イリアも何か役に立ちたいのだろう。さっきから「何か仕事を寄越せ」と物凄くアピールしてくる。
「安心しろ、仕事は山ほどある。頼りにしてる。」
ユーフレインで活動するにはまずは拠点を構え、生活基盤を整える必要がある。そして隠れ蓑に何かしらの仕事に就いた方がいい。ただアキ達にはベルフィオーレでの生活もあるので、ある程度自由が利く仕事でなければならない。
つまりここで役に立つのがハンター制度だ。
「ハンターとして活動してさえしていれば誰も不審に思わないだろう。ベルフィオーレでもSランク冒険者ってだけで免罪符になるんだしな。」
大きな屋敷に住んでいても、エスタートのような商会長や各国の王族と面識があっても、Sランクだからと言えばベルフィオーレでは何も不審に思われない。きっとハンターも似たような特権は上位クラスにあるだろう。だからアキ達はそこを目指すべきだ。そしてエリスを筆頭にミルナ達であればそのクラスに行ける。
そう言う理由から、ルティアにハンターについて調べてもらった。
「ルティア、ハンター連盟について確認させてくれ。」
「うん。なんでもきいて。」
また出番が回ってきたのが嬉しいのか、アキの上で足をぷらぷらさせているルティア。というよりさっきからずっとアキの腹の上に乗ったままだ。
こんな大事な話をずっとミルナに膝枕されながらしているアキもアキだが、どうしようもないのだから仕方がない。アキが退こうとするとミルナに押し付けられるし、さらにはルティアが上に乗っているので、そもそも起き上がれない。
他の子達は恨めしそうにミルナとルティアを見ているが、アキが真剣な話しをしているからか、邪魔してくる気配はなかった。隙あらば2人の位置を奪おうとしているようだが。
まあもう諦めよう。とりあえずルティアにハンターについて尋ねる。
「後でミルナがわかりやすく説明してくれるからみんなはちょっと待っててね。」
「アキさん……いい度胸ですわね?違いますわよね?」
ミルナが何を言ってるのと脅してくる。彼女の言う通りだ。確かに間違えた。
「ごめん。おっぱいお化けがまとめるからね。」
「そこじゃないですわ!?もー!いちいちいじめないで!」
また30分くらいかけて、今度はハンター連盟についてルティアから教えてもらった。ただベルフィオーレの冒険者制度と似ている部分も多く、先ほどの話に比べミルナ達も大分理解出来たようだ。もうアキが改めて説明する必要はないかもしれない。
「アキー……アキー……説明してほしいのだー……。」
「わかってるってエリス。大丈夫だから。ちゃんと説明するから。」
そうだった。うちにはアホの子がいるのを忘れていた。戦闘以外の事になると本当にエリスはからっきしだ。
「エリスはダメね!この程度の事もわからないのね!」
さっきの話はわからなかったのに、わかるとなった途端強気になるエレン。何故この猛獣はいつも喧嘩を売るとこから始めるのか。普段の訓練でエリスに勝てないからその鬱憤をこういうとこでぶつけているのだろうか。
「戦闘以外の事に頭を使うのは苦手なのだ!でもその分戦いでは負けない!」
「そんな考えだからエリスはダメなのよ!」
エレンは「ふふふ」と勝ち誇って無い胸を張る。ここぞとばかりにやり返していくエレン。だが無いものは無い。エレンの胸は無い。断崖絶壁だ。
「アキ!あんた今変な事考えたわね!!!ぶっころおおおすうううう!!!」
「おお、やはり絶壁の自覚はあるのか。」
その一言がさらに気に食わなかったようで、エレンが「覚悟しなさい!」と飛びかかってきた……がエリスに止められた。さすがエリス。
「ふっ、いつになったら振りほどけるようになるのだ?」
エレンを挑発していくエリス。彼女がそんな事をするのは珍しい。面白そうなのでしばらく見守ろう。
「う、うるさいわよ!?すぐ追い抜いてやるんだから!」
「くくく、無理だな。私くらい戦闘一筋に生きなければ勝つのは一生無理なのだ。」
「ふ、ふざけ……っ!……こほん。ふふふ……まったく。頭まで筋肉で出来ている脳筋には困ったものね。」
激昂したら負けだと思ったのか、エレンは冷静を装い、皮肉を返す。
しかしあの猛獣がそんな反撃方法に出るのは驚いた。無駄に成長している。胸はしてないのに。そう考えた瞬間、エレンにもの凄い目つきで睨まれた。本当にこの子達は勘がいい……。
「そうなのだ!頭まで筋肉なのだ!素晴らしいだろう!」
ただアキの考えは読めてもエリスの考えまでは読めないようで、彼女の斜め上の返答に戸惑うエレン。
皮肉を言ったのにまさか誉め言葉として取られるとは思わなかったようだ。エレンは「褒めてないわよ。褒めてないのに。」と頭を抱えてしまった。ミルナ達も「え、あれを褒められてるって受け取るの?」と苦笑いだ。さすがにちょっとエレンが可哀そうになったので、少し助け舟を出してやるとしよう。
「おい、そこのお花畑妄想金髪剣士。」
「なんなのだ!?その呼び方はひどいのだ!」
まさかアキから貶されるとは思わなかったようだ。
「頭が筋肉ってのはバカにされてるんだ。気づきなさい。」
「そ、そうなのか!?ぐぬぬ……私を罠に嵌めるとは酷いのだ!」
罠でも何でもなく、蓋もしてない落とし穴に勝手に落ちていっただけなのだが。そしてやっと馬鹿にされたと気づいたうちの美人剣士は、今更お怒りのご様子。
「エリス、少しは考えるようにしような?」
さすがに日常生活に影響が出るレベルになってきているので、ちょっと真面目に注意しておく。
「アキがそう言うなら……わかった。うん、する。」
素直に頷くエリス。
まあこうやってちゃんと教えれば理解してくれるから、本当に馬鹿な子なわけではない。ただただ頭を使うのが苦手なだけなのだろう。考えるより剣を振っているほうがきっと彼女にとっては有意義な時間なのだ。
「まあ俺がいるときは今のままでいいよ。でもエリスに何かを仕事を任せる時が心配だからさ、頼んだよ?」
「うん、私の事考えてくれてありがとうなのだ。」
嬉しそうに笑うエリス。
そう、この子は実力は申し分ない。頼りになる騎士だ。普段がちょっと……いや、かなりアホな子だから心配なのだ。襲われても返り討ちには出来るだろうが、搦め手で来られると……心配だ。だから少しでも頭を使う事を覚えてもらえれば、アキも安心してエリスに色々任せられる。
「じゃあ、話を戻すか。」
脱線しすぎなのは承知しているが、こうしてミルナ達を構うのもアキの大事な「仕事」だ。ここ数日はずっとユーフレインへ行っているから、あまり構ってあげられてない。それにこの子達はちょっと構わないだけですぐ拗ねる。実際に今も「次は自分を構え」とそわそわしながら待っているくらいだ。
「ハンターはベルフィオーレの冒険者とほぼ同じだな。」
冒険者は冒険者協会で魔獣討伐や護衛の依頼を受け、それを達成する事で日々の糧を稼ぐ。時には特殊な依頼もあるが、基本的には戦闘に関する依頼がほとんどだ。まあミルナ達の場合は指名依頼のせいでおかしな依頼が多かったが、一般的には冒険者=戦闘・護衛と考えて問題ない。それがベルフィオーレの冒険者制度。
ユーフレインのハンター制度もこれと同じで、ハンター連合から依頼を受け、それを完遂することで依頼料を得る。ただベルフィオーレの冒険者と異なるのは、ハンターは完全に戦闘特化した職業と言う点だ。指名依頼などの特殊な依頼は一切無い。連盟から提供される依頼は全て魔獣・犯罪者討伐で、護衛、採取、雑用等の非戦闘系依頼は別の組織が管理しているらしい。又、ベルフィオーレではSランクにしか依頼されてなかった対人戦闘依頼も一般的だ。野盗討伐や指名手配犯の殺害等、犯罪者の駆除も多い。
「アキ、私はハンターになりたいのだ!いや、なる!」
ハンターの依頼内容を聞いてテンションが上がったのか、エリスが狂喜乱舞している。
「確かにエリスには向いている職業だな。」
強い魔獣や人と戦うのが好きなエリスは冒険者よりハンターのほうが向いているかもしれない。実際冒険者としてのエリスはそういう強敵相手の戦闘依頼しか受けていなかったと言っていた。
「相変わらずの戦闘狂だな……まあエリスにとってはそれが生き甲斐か。」
ただアキのそんな言葉を聞いたエリスは予想外の言葉を口にする。
「あ、いや、そうなんだけど……最近はその……アキといるほうが楽しいのだ……」
まさかの発言にさすがのアキでも吃驚だ。まあエリスが戦闘以外に興味を示しているのだから驚くなという方が難しい。
「アキのバカ!私だって女の子なのだ!」
「わかってるって、冗談だ。」
最近エリスが変わってきたのには気付いていた。時折可憐な乙女の雰囲気を纏うようになっている。出会った頃に比べて随分と女の子らしくなったものだ。
「可愛くなったよね。エリスは。」
「そ、そうなのか?そう言われるのは恥ずかしい……けど嬉しいのだ。」
エリスが満面の笑みで「えへへ」と笑っている。
だがアキが気づくのは当然の事だ。この子達を大事にすると決めた以上、ちゃんと見ているつもりだ。全員平等がアキのモットー。特定の誰かを依怙贔屓しない代わりに除け者にもしない。全員を平等に構い、全員を大事にする。
「もちろんアリアとセシルの事もちゃんと見てるからね?」
「は、はい!」
「えへへ、嬉しいです!」
不意を突かれたのか、アリアにしては返事がワンテンポ遅かった。そしてセシルは相変わらず耳をぴょこぴょこ動かしている。兎可愛い。




