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大体アキの想定していた通りの理由を全員が答えた。
特にベル。先ほども言ったが、エスペラルド王女としてユーフレインは見ておくべきだ。王族として戦争、内乱、犯罪等の実態を知っておいて損はない。間違いなく今のベルフィオーレでは体験出来ない事だ。そしてこれから色々と変化が訪れるベルフィオーレ。それを統治していく立場にあるベルにとって、ユーフレインへの訪問はいい経験になる。
「でも全員100点満点の答えでつまらん。まあ……的外れな理由を言っても、教育的指導をしてから無理矢理連れて行くつもりだったけどな。」
そんなアキの言葉が気に食わなかったらしく、エレンが食ってかかってくる。
「はあ!?じゃあなんで聞いたのよ!」
「確認の為だ。生半可な気持ちでユーフレイン行くと色々としんどい。」
頭をそっと撫でてやる。すると気持ちよさそうに目を細めるエレン。
ベルだけじゃなく、ミルナ達にとっても見分を広げるいい機会だ。表の世界だけじゃなく、裏の部分も見る事が出来れば、この子達はまた一つ人として成長出来る。
とまあ……偉そうな事を言ったが、実のところは、なんだかんだでミルナ達がいないと、アキが不安だからだ。戦闘的な意味でも、サポート的な意味でも、ミルナ達は頼りになる。この子達がいれば安心してユーフレインで活動出来る。
「……ってことだ。」
「ならいいのよ……ばーか。」
アキの説明に納得したのかエレンはどこか嬉しそうに笑いながら素直に引き下がってくれた。
「よし、ユーフレインの現状はなんとなく想像出来たかな?まあ後は実際に見て感じてくれ。そしてここからが一番大事な話。そういった犯罪者についてなんだが……」
「まかせるのだアキ!不届き者は私が始末するぞ!」
アキが言い終わる前に、エリスが先陣を切って発言する。
まあ正義感溢れるエリスならそう言うと思っていた。エリスの長所の1つだ。だがユーフレインでその正義感はいらない。
「うん、そうなるのが心配だったんだよね。エリス、そしてミルナ達もだ。それは俺が許さん。そういう連中は基本見て見ぬ振りをしろ。」
「な、なぜなのだ!」
納得のいかない様子のエリス。そしてミルナ達も、特にエレンが、不満そうな顔をしている。きっとアキが今日遭遇した盗賊達のような女性の敵はすぐにでも始末したいと思っているのだろう。
ただベルだけはアキの言わんとしている事がわかるようで、苦虫を嚙み潰したような表情をしている。
「ベルならわかるだろ?」
「はい。それは私達の役目ではありません。そう言う事ですよね?」
「うん、それは俺達の仕事じゃない。ユーフレイン側の仕事だ。」
今日盗賊達を始末したように、アキがオリハルコンの力で犯罪者連中を駆除するのは簡単だ。それにエリスや今のミルナ達なら対人戦闘の実力的にも後れを取る事はないだろう。 ユーフレインの戦闘レベルはまだよくわからないが、今日の盗賊達を見た感じ、それ程ベルフィオーレと差があるようには思えなかった。つまりSランクのミルナ達であれば、ユーフレインでもSランク相当の実力者である可能性が高い。
「だから皆なら容易に犯罪者を制裁出来ると思う。でもずっと俺達が始末して回るわけにはいかないだろ。無限に沸いて出てくる犯罪者連中をずっと相手にするのか?エリスやエレンは一生をそれに費やしたいのか?」
アキの指摘に黙り込むエリスとエレン。
「アキさんのおっしゃる通りです。それは私達王族の『仕事』です。」
アキの言い分を補足するベル。そう、ベルの言う通りなのだ。犯罪を取り締まる制度を作り、管理するのが統治者の役目。決してアキ達の仕事ではない。
「正義の味方なんてのは存在してはならないんだ。」
そもそもそんな者が存在するという事は、その世界の統治が正常に機能していない事を意味する。ユーフレインは犯罪に対する政策が正常に働いていないから、犯罪者が蔓延していると考えられる。勿論他国との戦争で統治者はそれどころではないのかもしれない。ただそれは言い訳だ。自分の国をちゃんと統治出来ていないのに何が戦争か。そんな事をしていたら内乱だって起きて当然だ。
「実際どの程度犯罪が蔓延しているのか、内乱や戦争があるのか……それは調べてみないとわからない。だからここまで一方的に決めつけるのはよくないんだけど、大体そんなところじゃないかなと思ってる。」
イリアの報告を聞く限り、間違ってはいないだろう。今日ユーフレインを自分で見て尚更そう思った。アキとしてはこの予想よりマシな国や人達である事を願うばかりだが……果たしてどうなる事か。
とりあえずアキの言いたい事はミルナ達に伝わったようだ。ただそういう連中を見て見ぬ振りしか出来ないのかと未だに悲しそうな顔をしているので、一応フォローはしておく。
「何も完全に黙認しろって言ってるわけじゃない。目の前で襲われたり、殺されそうになってる人がいたら助けるくらいはしていい。俺が言いたいのは『悪人がいると聞いていちいち首を突っ込みに行くな』という事が言いたいだけだよ。」
まあどのみちユーフレインではミルナ達を単独行動させる事なんて無いだろうから、何かあったらアキがフォローすれば問題ない。エリスやエレンが突っ込んで行きそうになったら止めれば大丈夫だ。
「だからあまり深く考えなくていい。黙って俺についてこい。いいな?」
悲しそうな表情のミルナ達を見ていたら、柄にもない事をつい言ってしまった。
さすがに照れ臭い。アキはソファーから立ち上がり、皆に背を向けるようにして窓の外を眺める。それに自分が照れていると知られたら、間違いなく全員がニヤニヤしながらアキを揶揄ってくる。
「あー!アキさん照れてますー!照れてますねー!」
「ええ、ソフィーさん、あれは照れてます。お可愛い事です。」
アキの誤魔化し空しく、どうやら既にバレていたらしい。ソフィーとベルがくすくす笑いながら、わざわざ顔を覗き込みに回り込んで来やがった。
そしてここぞとばかりに煽ってくる。非常に癪だ。
「黙れ、単細胞漆黒エルフにお花畑パステル王女。」
「「その呼び方やめて!?あと変なの足さないで!!!」」
必死に抗議してくるソフィーとベル。少しは仕返しできたようだ。
ちなみにミルナ達の方を見ると、すぐに視線を逸らしやがった。よほどこの渾名で呼ばれるのが嫌らしい。




