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「ユーフレインの状況。そして今後の行動について。この2つについて話したい。」
アキはそう前置きし、全員に座るように促す。特にアリアとセシルは立ちっぱなしでいる事が多いので、これは2人に対するお願いでもある。
「あくまで俺が今日見た限りの情報だけど、ベルフィオーレとの違いは何となくはわかると思う。皆にはユーフレインの状況をちゃんと理解して欲しい。その上で俺についてユーフレインに来るか決めてくれ。」
「「はい。」」
ベルとミルナが代表して返事をする。
「イリアとルティアから既にユーフレインで何があったか聞いたと思うけど、基本的にはそれが全てだ。ベルフィオーレにはほとんどいない犯罪者が数多く存在している世界、それがユーフレイン。ミルナ達はなかなか実感がわかないと思うけど、ユーフレインはそういう世界、そういう場所だという事だ。」
平和なベルフィオーレで過ごして来た彼女達にとっては理解しがたい世界だろう。アキも地球では平和な国で暮らしてはいたが、そこにもスラムのような犯罪者のたまり場は当然あった。そして戦争や内乱などが頻発している国や地域も数多く存在していた。
そう言う意味でアキは、ユーフレインの世情をまだ理解できる。だがこの世界、ベルフィオーレは平和そのものだ。エリスのようにSランクで存在しないとされているごく少数の犯罪者の討伐を行っていたならともかく、セシルやエリザのように普通に暮らしているだけでは、そんな世界を目にする事は絶対にない。そんな彼女達にしてみたら、ユーフレインはきっと想像すら出来ない世界だろう。
「ベルフィオーレは平和過ぎるんだよ。」
アキは盗賊達がしていた会話を改めて一字一句省略する事なくミルナ達に説明する。強奪、殺人、強姦。ユーフレインという世界に現実味を持たせる為、敢えて再度口にした。
「これがユーフレインだね。それでもみんなは来るか?」
ミルナ達の表情は少しばかり暗い。ただ彼女達の中で結論は既に出ているのか、それぞれが確固たる意志でアキを見つめてくる。
「もちろんですわ。」
ミルナが断言する。
そして他の子達もそれに追随するように頷く。どうやらアキやイリアが行くからという単純な理由ではないようだ。まあそれが理由なら彼女達を連れて行くつもりは無かったのだが、どうやらちゃんと考えて彼女達なりの答えを出したらしい。
「私、いえ私達の考えを聞いてくださいませ。ソフィー、エレン、リオナは私と同じ考えですわ。」
ミルナが何故ユーフレインに行きたいかの説明を始める。
「勿論アキさんやイリアが行くからというのはあります。でも一番の理由はイリアの『お願い』があるからですわ。私達はメルシアなんですからイリアの力になるのは当然ですもの。」
確かにイリアは「ユーフレインを何とかして欲しい」とアキにお願いしてきた。ミルナ達曰く、アキに依頼したという事は、メルシアに依頼したのと同義だという。だからメルシアであるミルナ達もユーフレインに行くのは当然だと主張する。
「ですから私達がご一緒するのは必然ですわ。勿論たいした役に立てないとは思います……でも……行きたいのですの。」
おいてかないでとミルナが寂しそうな表情で訴えてくる。
「なるほど、わかった。アリア達は?」
うちの子達の言い分は理解した。次はアリア達だ。
とりあえずミルナ達に気の利いた事を言うべきかとも思ったが、それは終わってからでいいだろう。ユーフレインに行くと言う事は、見た事もないような世界を見る事になると言う事だ。このくらいの事で落ち込んでいたら精神的に持たない。可哀そうだがここは一旦突き放す。
「では次は私が。」
アリアが手を挙げる。
「私がついていくのは当然なのです。」
表情一つ変えず、アリアが淡々と理由を述べる。
なんでもアリアはアキのメイドなので、アキが行くところに付き従うのが当たり前なんだとか。戦闘面では役に立たないが、ユーフレインでの情報収集や生活面のお世話をさせてくださいとの事だ。ベルフィオーレだろうが、ユーフレインだろうが、アキがいる場所が自分の居場所だとアリアは言う。
「多分セシルさん、エリスさん、ルティアさんは私と同じ気持ちです。勿論迷惑になる時はベルフィオーレで待機してます。ですが向こうでメイドが必要になる時は必ず来るでしょう。その時は雇うのでなく私を連れていってくださいませ。雇うのは絶対ダメです。嫌です。」
最後に少しだけ表情を曇らせるアリア。シャルは例外として、やはり自分以外のメイドをアキが雇うのは許せないらしい。
まあこれも納得のいく理由だ。確かにメイドや従者が必要になる場面は必ず出てくるだろう。向こうで活動拠点を構えるにあたり、アリアやセシルの力は間違いなく必要になる。エリスとルティアに関しても戦闘面で力を借りたい。
「セシル、エリス、ルティア。アリアの意見に異論はあるか?」
3人に一応確認するが、やはりアリアの言う通りのようで、特に異論はないらしい。
「確かにアリア達に頼る場面あるだろうしな。よろしく頼むよ。ルティアに関してはもう既に頼っているしね。さて……じゃあエリザはどうする?」
残るはうちの猫と王女様。
「もちろんいくわよ。ユーフレインで魔法の研究もしたいしね。ただ学園のお仕事もあるし、アキ君が私を必要とするときだけ呼んで頂戴。それでどうかしら?」
その時は学園を放り出してでも駆けつけると言ってくれる。
しかしちゃんと仕事の事を考慮している辺りがさすがエリザだ。それにその言い回しはずるい。なんというか……嬉しい。
「さすがお姉さんだな。」
「とーぜんよ!」
見事なまでのドヤ顔のエリザ。それに尻尾がはち切れんばかりに揺れているので、褒められて嬉しいのが丸わかりだ。せっかくかっこいい事を言ったのに、直ぐに台無しにしていくあたり、微笑ましい猫だ。
「じゃあ最後にベル。」
ベルはエスペラルド第一王女という顔を持っている。そんな彼女をユーフレインのような世界に同行させるのはいかがなものか。ベルは戦闘も出来なければ、アリア達のような従者でもない。普通に考えればベルフィオーレで留守番させるのが妥当だろう。
「はい。では私の考えを聞いてください。これからベルフィオーレでは魔獣制度を廃止します。よって犯罪率の増加は否めません。ですのでユーフレインを見て色々学びたいのです。」
流暢に「私をユーフレインに連れて行くべき理由」を述べるベル。アキの考えてる事なんて全部わかってますよといった表情だ。
「俺から話を聞くだけじゃダメなのか?」
「聞くと見るとでは大違いです。ふふ、意地悪な質問しないでくださいね?」
まあ実際ベルの言う通りで、百聞は一見に如かずというように、為政者としてユーフレインの状況は見ておくべきだ。きっとそれがいつか必ず彼女の糧になる。
「うん、ベルが行かないって駄々コネたら俺がその理由で連れて行ってたよ。」
「言うわけありません。むしろどんな危険な場所であろうと行きます。なんとしても行く理由を見つけます、作ります。そんな女ですよ、私は。」
淑女らしい微笑みを浮かべるベル。
「ああ、知ってる。うちの王女様は本当に強かだな。」
「ふふ、最高の褒め言葉です。」




