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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 ユーフレイン
357/1143

7

「それで?お花畑ベルと単細胞ソフィーは一体どうしたの?」


 とりあえずソファーに腰掛け、アキは当事者の2人に何があったのかを尋ねる。


「「その呼び方はやめて!?」」


 さっきまで言い争いをしていたらしいのに、この息の合い具合はどうしたものか。仲がいいのか悪いのかわからない。まあ決して良くはないんだろうが。


「あの……アキさん?き、聞いてたんですか……?お風呂では?」


 ベルが恐る恐る尋ねてくる。口汚く言い争っていたのを聞かれたのか気になるらしい。


「聞いてたというより聞こえてきたが正しいかな。あれだけ大声で言い合いしてたら嫌でも聞こえるって。言い合いしてた原因までは知らないけどね。」


 何となく理由は想像はつくが、言わないのが優しさだろう。


「で、2人とも俺の事が大好きだと?」

「「言わないのが優しさじゃなかったの!?」」


 ソフィーとベルが顔を赤面させて非難してくる。


 確かに言わないでおこうと思ったのだが、言った方が面白くなりそうだったので言った。反省はしている。


「面白さとかいりませんから!アキさんのばか!」


 ベルがそっぽを向いて拗ねてしまった。


 これはあれだ。「撫でて早く私の機嫌を取りなさい」という合図だ。仕方ないのでうちの王女様を撫でておく。勿論ソフィーの事も忘れずに。


 まあこれだけで2人は嬉しそうに「えへへ」と機嫌が直るのだからお手軽だ。


 とりあえずそんなことより、ユーフレインでの話だ。きっと風呂に入っている間にイリアとルティアは今日あった事を話しておいてくれたはず。ならその事についてアキからも軽く補足説明しておかねば。


「とりあえず話は聞いたんだよね?」


 アキは改めてリビングのソファーに腰掛ける。


「はい。アキさんの見解を聞かせて頂けますか?」


 ミルナが教えてくださいと尋ねてくるので、アキは神妙な面持ちで頷く。


「うん、頭がくるくるぱーなのはどっちかって話だよね?」

「「違うから!まだその話題にいたの!?」」


 ベルとソフィーが「もうやめて」と必死に懇願してくる。ただここは結論を出してあげなければいけないだろう。何故かそんな使命感に駆られる。


「くるくるぱーなのは……エリスかな?」

「ア、アキ!私、関係ないのだ!私を巻き込まないで欲しいのだ!それにくるくるぱーとか酷い!」


 まさか自分が巻き込まれるとは思わなかったのだろう。エリスが少し涙目になりながら訴えてくる。


「そうだ、エリス、この前話したベルフィオーレで施行する予定の政策についてなんだが……」

「アキ、私はくるくるぱーなのだ。その話はやめて。空が綺麗なのだ。」


 あっさりアホの子という称号を受け入れやがった。それ程までに頭を使うのが嫌なのか。


 確かに今後のベルフィオーレについて話した時のエリスは酷かった。先日アキは全員にベルフィオーレで施行する予定の法案についてわかりやすく説明した。ベルフィオーレは今後本格的に魔獣政策を廃止する方向に動く事になるだろうから、全員に改めて内容を周知したのだ。


 完全に内容を理解していたのはベル。次いでミルナ、アリア、セシル、エリザ、ルティアだ。ベルは当然だが、他の子達もなんだかんだ賢い。ただリオナ、エレン、ソフィーにはまだ少し難しかったようで、あまり理解出来てないようだった。まあ為政関連は難しいから仕方ない。


 ただエリスだけはそれはもう論外だった。エレン、リオナ、ソフィーはまだ理解しようと努力はしてくれている。ただエリスは最初から考える事を放棄し、いつものように「小鳥が……」と現実逃避していたのだ。


「まあ……エリスはエリスだ。それでいいと思うぞ。」


 彼女は戦闘というパラメータに能力値を極振りしているので、為政や勉学などといった事に頭を使うのは苦手だ。「孤児で必死に毎日を生きてきた」という彼女の生い立ちを考えれば仕方のない事ではある。


「うん……えへへ、ありがと。」


 エリスが嬉しそうに微笑む。彼女の笑顔は本当に可愛い。そんな美少女が戦闘馬鹿の脳筋で頭が弱いなんて誰も思わないだろう。


「アキ、今失礼な事考えなかったか?」

「気のせいだ。」


 後、勘は鋭い。まあそれはこの子達全員に言える事なのだが。


「あのアキさん?いい加減話を進めたいのですが……。」


 ミルナが申し訳なさそうに呟く。普段であれば「脱線させないでくださいませ!」と辛辣に文句を言うのに、今日は控えめなミルナ。


 ただミルナだけでなく、エレンやアリア達も、アキが好き勝手話しているのに、今日は一切文句を言ってこない。きっとアキが人を殺めて気持ちが昂っているから好きにさせようという気遣いなのだろう。イリアとルティアから一連の話を聞いたという事は、その辺りの事も聞いているはずだ。


「ああ、ごめん。ちょっと皆とのんびりしたくてね。」

「いえ、私の方こそ急かしごめんなさい。大事なお話が終わったら何時間でもお付き合いしますから。」


 確かにミルナの言う通り、必要な話を先にしてからだらだらと過ごす方が建設的だ。いつもならアキがその提案をする立場なのに今日は逆だ。どうやらまだあまり冷静にはなれてないらしい。人殺しに慣れたら嫌だなと思っていたが、まだまだ慣れることはなさそうだ。


「じゃあ後でごろごろするから構ってくれ。」

「はい!もちろんですわ!」

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