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「アキさん、おかえりなさい!怪我は、怪我はないですかー!あなたの妻のソフィーです!」
開口一番、ソフィーが例のセリフで出迎えてくれた。
「ただいま、どう見ても怪我はないだろうが。この駄エルフめ。」
もう完全にそのセリフを言いたいだけだろう。さらに最後の一言に至ってはもう本当にただの自己主張だ。一体なんの宣言だ。
「おかえりなさいませ、アキさん。」
ミルナが微笑む。うん、これでいい。こうやって普通に出迎えてもらえるだけで十分嬉しい。そして他の子達も口々におかえりと出迎えてくれる。
「ただいま。でも何で全員ここにいるわけ?別にリビングで待ってていいよ?」
全員が揃っている事に呆れた。
「駄目です!夫を出迎えるのは妻の役目です!」
ベルが力強く宣言してくる。どうやらこの王女様もソフィーと同類のようだ。あの駄エルフと同類になるのはやめて欲しいのだが……。
「まあ嬉しいけどね。それよりエリザとベルは明日からはちゃんと仕事にいきなさい。アリア、セシルはいつも通り屋敷の事を頼む。エリスは訓練かな?ミルナ達は……そうだな……食って寝しとけ。」
「いやですわ!だからそれは嫌だっていいましたわよね!」
ミルナが叫ぶ。ソフィー、エレン、リオナも必死にうんうんと頷いている。やはりダメ人間扱いされるのはもう絶対嫌らしい。
しかし彼女達とのやり取りは癒される。1日の疲れをすっかり忘れさせてくれる。
「アキさん。おかえりなさい。とりあえずお風呂の準備出来ていますので行ってきてください。」
アリアがアキの手を引いて、風呂へ連れて行こうとしてくる。彼女が強引に何かをさせようとしてくるのは珍しい。どうしたのだろうか。ただアキもまずは風呂でさっぱりしたいと思っていたので、遠慮なくそうさせてもらうとしよう。うちの子達やベルはまだ構われ足りないと不満そうな顔をしているが……まあそれは後でいいだろう。
「アリアさん、何故あんなに強引に?何か意図があるんですか?」
ベルはアリアの対応に違和感を覚えた。普段ならアキに対して何かをしろとは絶対に言わない。
「はい。ルティアさん、イリアさん?アキさんは今日、人を殺めましたね?」
「あー、うん。さすがよくわかってるね、アリアさんの言う通りだよ。」
アリアの問いかけに肯定を示すイリア。
それを聞いたアリアがやはりそうですかと溜息を吐いている。そしてベル達に説明を始めた。
「戻って来たアキさんの雰囲気が少しピリピリしていました。あとミルナさん達と会話して癒されたという顔をしていました。アキさんがあの表情をする時、そういうことをした時ですから。皆さんも何か違和感を感じてましたよね?」
アリアの言葉にベルを含めた全員が頷く。
彼女の言う通りだ。何があったのかまではわからなかったが、ベルもアキの雰囲気が普段と少し違うというのには気付いていた。
「そういうことですのね。これはお話ですわ。」
「アキはまた無茶したのね!お話よ!許してあげないんだから!」
ミルナは頬を膨らませて、エレンはガルルと猛獣かの如く不満を顕わにしている。他の子達もお話する気満々だ。勿論自分もだ。これは妻としてしっかりとお話して差し上げなければいけない。
「これは耳禁止ですね。」
「私も尻尾禁止にしてあげようかな。」
「ええ、そうね。そうしようかしら。」
獣人組のセシル、リオナ、エリザもそれぞれアキに対してのお仕置きを考えているようだ。なるほど、獣人好きのアキにとっては効果的なお仕置きだ。自分はどんなお仕置きにしようかしら。
ただ1つ腑に落ちない事がある。
「でも……ルティアさんにイリアさんがついていてそれはおかしくないですか?何故アキさんだけが人を殺めたんですか?」
ベルの言葉を聞いてミルナ達もおかしいと気付いたようだ。
「とりあえず2人の話を聞きませんか?」
アキの風呂はそこそこ長いので1時間くらいは大丈夫だろう。ベルはとりあえずリビングに移動し、ユーフレインで何があったか聞こうと提案する。
「そうですわね。」
ミルナが同意する。他の子達も異論はないようだ。
「それでは何があったのか教えてくださいませ。」
「うん、アキは大事な事、教えてくれた。」
リビングに移動し、ミルナは早速何があったのか話すように促したのだが、ルティアは一言で話を締め括る。
何というか彼女らしい。まあルティアの性格はもうよくわかっているので、これ以上聞いても無駄だろう。ソフィー達もそれをわかっているのか、無理に追及はしていない。
それに心配しなくとも、イリアが補足してくれるはずだ。
「そうだね。でもそれだけじゃわからないと思うから順序だてて初めから話すね?」
イリアが苦笑しつつ、話を始める。ユーフレインに転移してからベルフィオーレに戻ってくるまでの一部始終をイリアが語る。
「ってわけでね、盗賊達の根城を見つけたんだよね。」
盗賊との一幕を、詳しく端折らず、イリアが見て感じた全てを話してくれた。アキにもミルナ達にちゃんと伝えるようにと言われていた事らしい。
「ふふ、アキさんは仕方のない人です。それで皆さん、『お話し』ですか?」
話しを聞き終えたベルが不敵な笑みを浮かべてミルナ達に尋ねてくる。
「王女様は意地悪ですわ。これを聞いた後にお話はできませんわ。」
ミルナは肩をすくめながら溜息を吐く。さすがにそんな話を聞いたらアキを責める事なんて出来ない。セシルやリオナ達も耳や尻尾を「禁止」どころか「ご褒美」として触らせてあげようと言い始めた。
「ほんと皆さんはアキさんが大好きですね。」
ベルが袖で口元を隠し、くすくす笑いながら指摘してくる。
その言い方が気に食わなかったミルナは鋭い視線をベルに投げる。これは何かを一言言ってやらないと気が済まない。
ただミルナが何か言う前に、ソフィーがボソッと独り言のように呟いた。
「なに自分の事棚にあげてるんですか。王女様こそアキさんが大好きすぎて大体いつも頭おかしくなってます。くるくるぱーです。」
さすがソフィー。王女様に向かってもの凄い暴言を臆する事なく口にした。ミルナでもさすがにそこまでは言えない。
そしてベルが勿論それを聞き逃すわけがない。
「なっ……!確かにアキさんの事は大好きです!ただソフィーさんにだけは絶対言われたくないです!頭が一番おかしいのは貴女です!単細胞バカエルフ!」
「はぁ?私はおかしくないですー!頭イってるのは王女様です!このお花畑王女!それに私のほうが大好きですー!」
「お、お花畑ですって……!?この作り笑顔の偽善者エルフ!極刑にしますよ!それに私とアキさんは両想いですから!貴女と違って!」
「何かあるとすーぐ極刑。それしか言葉しらないんですかー?語学力皆無ですねー?あと私の笑顔はアキさんが大好きなんですよ!それを侮辱するなんて酷い王女様ですねー!」
「なんですって!」
「なんですかー!」
ソフィーとベルが火花を散らして言い争いを始めた。
まあミルナからしてみればどっちもどっちだ。他の子達もミルナと同じ気持ちなのか「お互いに大好きだと叫んでる時点で2人ともお花畑だ」と呆れ顔だ。ベルの皮肉に何かしらの反論しようとしていたのに、2人のどんぐりの背比べな喧嘩を見せられ、すっかりその気が失せてしまった。
「あれ、なんか盛り上がってるね。何かあった?」
丁度その時、風呂から上がったアキがリビングに戻って来た。ミルナは2人の喧嘩をどう止めようか困っていたのでこれは好都合。アキ以上の適任はいない。
そんなソフィーとベルはアキが来た瞬間、ピタっと言い争いを止めた。そしてアキに向かって叫ぶ。
「「アキさん!聞いてください!」」




