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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 ユーフレイン
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3

 小屋を出発してから約3時間。予定通り魔獣との接触を回避しつつ、最短距離で街へと向かっている。魔獣以外はアキの索敵には引っかからない。ルティアからも特に不審者の報告はない。移動は順調だ。


「ユーフレインのこの地域……ほんとエスペラルドに似てるな。」


 アキは移動しながらもずっと周囲の風景を観察している。地球にないような大樹や植物。多少の違いはあるが、ミルナ達との遭逢を果たしたベルフィオーレのあの森を彷彿とさせるくらいには類似している。


「そうなのかな?」

「ああ、植生の違いは少しあるが、ほぼ同じと言っていい。」

「うーん……私にはよくわからないかな?」


 アキの独り言にも律儀に反応してくれるイリア。


「それより、アキ、大丈夫?疲れてない?」


 イリアが体力の心配をしてくれる。適度な小休止は挟んでいるが、基本的にはずっと走りっぱなしだ。魔獣との遭遇を回避しつつ、川沿いをひたすら走り抜けている。


「ああ、問題ない。」


 ユーフレインの環境はベルフィオーレと同じ。地球に比べ重力が少ない。つまりアキの身体能力は、地球にいた頃よりは自然と高くなる。それに加え、ミルナやエリス達との特訓の成果もあり、体力はかなりついてきた。


「私についてこられるなんてアキもやるね!」


 イリアは感心しているが、別に褒められた事ではない。


 さすがにどれだけ毎日訓練していたとしても、長年冒険者をやっているイリアやミルナ達に比べればまだまだ劣る。アフリカのサバンナで育った民族と日本で育った一般人くらいの差はある。だからアキは魔法という裏技も使っている。風邪魔法で背中に追い風を発生させ、走力を補助しているのだ。オリハルコンで好きなだけ大気魔素を使えるアキだから出来る芸当だが。


 だから今のアキであれば魔法の多重展開は容易だ。今も走力補助だけでなく、索敵魔法、聴力・嗅覚・視力強化魔法と複数の魔法を展開させている。まあアキの脳内処理が追いつく限りはという制限はつくが。


「そんな事ないさ。早くイリアや他の皆に追いつきたいね。」

「何言ってるのさ。私より強い癖に。」


 イリアが頬を膨らませて拗ねる。


 確かに対人に限定したら、イリアよりは実力が上だ。だがアキはただの対人特化型。観察・予測に長け、魔法が少し特殊なだけ。純粋な戦闘力で言うと、アキはAランクに足を踏み入れ始めたBランク冒険者程度。


「そうなの?でもアキ無敵そうなんだけど?」


 それは今はオリハルコンがあるからだ。だから大気魔素を自由に使えるアキは無敵に見えるかもしれない。でもそれは決してアキの実力ではない。もしオリハルコンが無くなったら、アキは為す術なく魔獣等に殺されるだろう。


 ミルナ達もアキを凄いと褒めてくれるが、そんな事は決してない。アキとしては観察・予測などの小手先技術に頼らない純粋な戦闘力が欲しい。魔法すら使わないで魔獣をも一人で屠れるくらいの戦闘力が欲しい。


「そう言う訳だからね……このオリハルコンもいつか手放す日が来る。」


 イリアにアキの実力の種明かしをする。これから彼女は当分アキ達と一緒に行動するだろう。だからイリアにはアキの戦闘能力について知っておいてもらう必要があると以前から思っていた。丁度いい機会だったので、アキに何が出来て、何が出来ないかをイリアに説明する。彼女は最初は怪訝そうな顔をして聞いていたが、最後には納得したのか力強く頷いてくれた。


「そっか……じゃあ危なくなった時は守ってあげるね?」

「ああ、頼りにしてる。」

「アキ。私もいる。忘れちゃダメ。」


 どこからかルティアの不貞腐れた声が聞こえてきた。


「ああ、ルティアも頼りにしてる。」


 影に潜っているから姿は見えないが、口を尖らせて拗ねているルティアが目に浮かぶ。相変わらずすぐに張り合おうとしてくる子だ。






「さてイリア、街までは後少しか?」


 そろそろ移動し始めて4時間。全力で駆け抜ければ街までは4時間程と言っていた。イリアの言う通りであればそろそろ街の輪郭が見えてきてもおかしくない。


「そうだね、もうすぐ見える頃だと思うけど……。あ!あれあれ!」


 イリアが前方を指差す。


 数キロ先だろうか、壁のような人工建造物が見える。なるほど。おそらくあれが街を囲んでいる外壁なのだろう。


「じゃあそこの木陰で一旦止まろう。」


 アキは索敵魔法で周囲を確認する。


 特に不審な者はいない。問題はなさそうだ。


「これで今日の目標は達成だな。現在14時前か……なら16時迄に転移場所を探そう。明日転移した際に見られるのが一番不味い。人目に絶対つかない場所を探すには2時間くらいいるだろ。」


 イリアとルティアに異論は無いようなので、アキは続けて指示を出す。


「まずは街の外周を探索しよう。出来れば洞窟のような場所を見つけたい。転移場所を見つけて周囲の安全確認をして今日は終了かな。別行動は念の為禁止ね。3人で行動しよう。」


 洞窟のような洞があれば都合がいい。そこを魔法で塞いでおけば簡単には見つからないだろう。まあもしそんな場所が無かったらアキが魔法で削岩して作ってしまえばいいだけだ。とりあえずは人気が無い場所を見つける事。それが最優先事項だ。


「おっけー!」

「まかせて。頑張る。」

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