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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 帰還
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「そんなに心配か?」

「「「「当たり前です!」」」」


 ミルナやベル達が声を揃えて叫ぶ。


 ユーフレインから帰還し、見た事を伝え、今後の予定を皆に説明した。


 予定通り、次にユーフレインへ行くのはイリア、ルティア、そしてアキだ。基本的な活動時間は9時から16時。まずは3日で拠点を構える。拠点さえ決まれば他の子達も連れていける。その後は適当に休日を挟みつつ、ベルフィオーレとユーフレインで活動を適宜行なっていくつもりだ。


 ベルフィオーレ、ユーフレイン共に、やる事は山ほどある。ベルフィオーレでは爺さんと商談の打ち合わせやベルの改革の手伝いなどがある。それにうちの子達の故郷巡りもしなければいけないし、ミレーの音楽祭も近い。ユーフレインでは、ベルフィオーレという世界の記録の抹消、オリハルコンの出所の調査、それに加えイリアの願いでもある治安改善。


 まあどれもこれも大変そうだが、楽しみながらのんびりとやっていこう。


 そんな話をした翌日の今、アキは予定通りこれからイリアとルティアを連れユーフレインへ転移するところだ。

 

「心配してくれる気持ちは嬉しいけど、子供じゃないんだから信用して見送ってくれ。それに夕方には帰ってくる。今生の別れというわけでもないだろ。」


 アキがどれだけミルナ達をなだめ、説得しようとしても、なかなか行かせてくれない。本来であればエリザやベルは仕事でいないはずなのに、お見送りをしたいから今日だけは絶対休むと言って聞かなかった。やはりユーフレインで活動を始める初日だから不安を拭えないのだろう。


 ただアキだって男だ。女の子の前では格好つけたいし、頼りになるところを見せたい。そんないつもいつも彼女達に心配され、守られていたのでは情けなくなってしまう。


「頼りにはしてるわ……でも、それとこれとは違うっていうか……。」

「そうですー!違うのです!アキさんを守るのが私達のお仕事ですー!」


 エレンとソフィーが自分達の役割を力説してくる。


 しかしアキの戦闘能力も大分上達したのだから、問題はないはずだ。戦闘評価に関しては正確な観察眼を持つセシルが「最近のアキさんは冒険者Aランクに近い実力はある」と評価してくれているのだから大丈夫だ。ここまで過敏になる必要はない。この子達はどこまで過保護なんだと呆れる。


「その評価今Dランクにしました!危険なので行くのやめましょう!」

「あほか。この駄兎め。」


 ふざけたことを抜かす兎の耳を引っ張る。


「だめえええ!耳は優しくだってばあああ!」


 まあでも心配してくれるのは嬉しい。


「大丈夫だ。大体ルティアとイリアがいるんだから危険な事はさせてもらえないって。安心しろ。」

「絶対させない。」


 ルティアがえっへんと可愛らしく胸を張る。


 それを見たミルナ達は今度こそ安心したようだ。ルティアとイリアという見張りがいれば、アキも好き勝手出来ないと納得したらしい。実際、抑止力の為に彼女達を連れて行くというのはある。アキが何か道を違えそうになったら止めてくれる人は欲しい。


「じゃあいってくる。」 


 アキはオリハルコンを抜刀する。


「イリア、ルティア。俺にくっつけ。」

「う、うん。」


 イリアが恥ずかしそうにアキの服の裾を掴む。


「喜んでくっつく。」


 一方のルティアは容赦なく背中に抱き着いてきた。


「服を掴むだけでいいんだけど……?」

「やだ。」


 うん、これは言ってもきかないやつだ。くっつけというアキの言い方が悪かったかもしれない。どんな言い方をしてもこうなる気がしなくもないが……まあもうルティアの好きにさせよう。


 さて……一応これで準備は出来た。後はアキがオリハルコンで大気魔素を操り、ユーフレインへ自分を転移させればいい。アキに触れている物質は一緒に転移するから、ルティアとイリアも連れて行ける。


 ちなみに不測の事態に備え、アキをベルフィオーレに呼び戻す為の魔法印はちゃんと用意しておいた。帰還予定時刻の16時から3時間過ぎても戻らない場合は、これを使えとミルナ達に指示してある。まあそんな事態にならない事を祈るばかりだが。


「みんな安心してね!アキはちゃんと見張っておくからね!」

「アキはちゃんと守る。」


 イリアとルティアが改めて宣言する。そんなに信用ないのだろうかと思ってしまうが、今までの自分の行動を鑑みると文句は言えない。自業自得だろう。


 ただアキとしてはミルナ達に笑顔で送り出して欲しい。


「夫を笑顔で見送るのも妻の役目なんじゃないのか?」


 これで笑顔になってくれるだろうか。少々汚い手だが、仕方ない。


「そうですね……はい。アキさん、いってらっしゃいませ。アキさんの帰る場所はここです。だからちゃんと私の元へ帰ってきてくださいね。」


 頑張って笑顔を作ってくれるベル。


「はい、貴方のメイドはお帰りを心待ちにしております。ご安全に。」

「帰ったらいっぱい耳撫でてくださいね!」

「アキ、帰ったらその……いってらっしゃいなのだ!」

「アキ君、いってらっしゃい。そして早く帰ってきなさい。」


 ベルに続いてアリア、セシル、エリス、エリザも笑顔で見送ってくれる。


 後はうちの子達だ。


「アキさん、無理はしないで。後でその……ゆ、誘惑して差し上げますわ。」

「気を付けるのよ!そ、その……戻ってきたら……構ってよね!」

「帰ったらいっぱい尻尾触ってもいいからね!」


 ミルナ、エレン、リオナが口々に叫ぶ。嬉しいが、誘惑はいらん。

 

 そして最後にうちの美少女エルフがいつもの言葉で見送ってくれた。


「アキさん、怪我!怪我はダメですー!貴女の妻のソフィーです!」


 余計な文章というか宣言が付け足されている気がするが……まあ最高の笑顔を向けてくれたので引っ叩くのは勘弁してやろう。


「いってきます。」


 アキはオリハルコンに魔素を集約、そして魔法を発動させる。


 ベルフィオーレからユーフレインへと旅立つ。新たな地での新たな冒険に出立だ。

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