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「よし、早速実験してみるか。」
アキはオリハルコンを抜刀し、転移魔法を発動させる。これが上手くいったら、ユーフレインとベルフィオーレの行き来が楽になる。
ちなみに先ほど実験で、数メートル先にあった報告書を手元に召喚してみたところ上手くいった。やはり一度来たところであれば、魔法印を使わずとも、オリハルコンと大気魔素を使い転移魔法で移動出来るらしい。ただユーフレインとベルフィオーレ間の超長距離転移はまだ実際に試してないので、これはその為の実験だ。
「ベルフィオーレはエスペラルド王国、ミスミルドにある俺の屋敷、ミルナの部屋に報告書を全て転送。」
アキが詠唱を終えると同時に全ての書類が消えた。
転移魔法は無事発動したのだろうか。こればかりはベルフィオーレに戻ってから確認してみるしかない。まあもし上手くいっていたら、ミルナに速攻文句言われるだろう。すぐに結果がわかる素晴らしい実験だ。
「ち、ちょっと!なにしてんのさ!転送先!?転送先おかしくないかな!?」
イリアが可哀そうだよと非難してくるがそんなことはない。
「何を言ってるんだ。どうせもともと汚い部屋なんだから多少書類が増えたところで問題はない。戻ったら文句言われるから成功したかもすぐに分かる。さすが俺。」
素晴らしい計画だ。つい自画自賛してしまう。
「いやいやいや!今一瞬納得しそうになったけどね!?」
「まあ、それだけ俺がミルナを信用してるってことだ。」
アキがそう言うと、イリアは「なるほど」と納得したように笑う。
「まあ一応……何か試しにベルフィオーレからも召喚してみるか。イリアの聖なる衣でいいかな……?」
まだ時間もある。ついでに召喚も試しておくべきだろう。アキはオリハルコンを抜刀し、詠唱を始める。だが速攻でイリアに腕を掴まれ、止められた。
「なんで!?ダメに決まってるでしょ!なんでいいって言うと思うのかな!」
「えー、だって他にいないじゃん。いない子の物を召喚するのは主義に反する。つまりイリアのをするしかない。そうじゃないと実験できないでしょ?」
当然の理屈だ。
アキの発言を聞いて驚いた表情を浮かべるイリア。きっと居ない人の物を勝手に召喚しないアキの紳士ぶりに吃驚しているのだろう。
「そんな事には驚いてないからね!?下着の召喚しか発想がないアキに驚いているんだよ!他のものでもいいじゃんないかな!?」
イリアが必死に説得してくるが、アキの意思は固い。それに召喚魔法には譲れないこだわりがあるのだ。
「やだ。俺は召喚魔法はイリアか下着にしか使いたくない。」
「それ別に嬉しくないからね!?わかってるよね!?下着と同列に扱わないでくれないかな!そんなこだわり今すぐ捨ててよね!」
仕方ない。そこまでイリアが言うなら、ここは適当な物を召喚しておこう。
アキはオリハルコンを握り、ベルフィオーレにある自分の屋敷をイメージする。
「召喚。」
一応補助で詠唱を入れ、召喚魔法を発動させる。するとこちらも無事成功したようで、オリハルコンの剣先に水色の布が召喚された。
「成功したぞ。イリアの聖なる下着だ。」
「ねえ!?今のやり取りほんと何のためにしたの!!!!」
イリアが召喚された下着を光の速度で回収して隠してしまった。うーん、早い。
始めは適当にアキの部屋にある本にでもしようとしたのだが、直前でやっぱり主義を曲げるのはよくないと思い、聖なる衣にしてしまったのだ。本当だ。
「嘘だよね!?それに『してしまったのだ』じゃないから!!!あと聖なるって言うのやめて!なんか恥ずかしいよ!」
「ごめん。イリアと話すのが楽しくてついね……。」
そろそろ本気で怒られるか泣かれそうなので、ちゃんと謝っておこう。その辺りの線引きの才能は無駄にある気がする。これ以上は……という直前で止めるのが愛だ。よくわからないけど。
「べ、別に……その恥ずかしいだけだから……ね。」
イリアが「私も楽しいよ」と微笑んでくれる。
「ありがとう、イリア。」
とりあえずこれで実験は全て終わりだ。制限時間まであと20分くらいだろうか。
余った時間でこちらの世界での今後の行動についてでも考えておこう。
「イリア、近くの街はどっち?どれくらいかかる?」
「そうだね……私は辿りつくまでに数日かかったけど、実際の距離は1日かからないくらいかな。方向はあっち。」
イリアが指差した方向は南南西だ。何故方角が分かるかというと、こんなこともあろうかと思い、ソフィーに以前あげたコンパスを借りてきたのだ。
しかし距離にして1日かからないとなると、1日目で街の直前くらいまで移動し、転移場所を確保。2日目に街に入って拠点を探すというのがいいだろう。行ったことがある場所であればどこへでも転移は出来るが、さすがに人目が付く場所には出来ない。転移先の状況はわからないのだから、転移しても確実に人目がつかない場所を確保する必要がある。
「確かにそうだね。急いで街に入っても、人目につかない場所が見つからなければベルフィオーレには戻れないね。」
まあそうなったとしても、こちらの宿で夜を明かせばいいだけなのだが、それは嫌だ。そもそも夜はベルフィオーレに戻ると決めたのだから、それは守りたい。なによりベルフィオーレの屋敷の方が安心して休息を取れる。
「うん、こっちだと警戒緩められないもんね。私もそれがいいと思うな。」
イリアも同意してくれる。
これでユーフレインでの直近の予定は決定した。こちらでやる事はとりあえず全て終了だ。そろそろベルフィオーレに戻るとしよう。出来る事なら自分の魔法で戻れるかの検証もしておきたいので、ミルナ達に召喚される前に戻りたい。あの子達は間違いなく1時間丁度でアキを呼び戻すだろう。
「じゃあ先に戻る。すぐにイリアも呼び戻すから少し待ってて。」
「うん、了解!気を付けてね!」
アキはオリハルコンを握り締め、ミスミルドにある自分の屋敷をイメージする。自分自身に転移魔法を使うのは初めてだ。柄にもなく少し緊張してしまう。もちろん大丈夫なのはわかっている。ここに来るのにも魔法印を使っているし、大気魔素を直接利用しての転移はエリザでやっているので、なんら問題がないのはわかっている。
「よし、では俺自身をベルフィオーレの屋敷に転移。」
アキは詠唱し、オリハルコンに集約した魔素を発動させる。
「いってらっしゃい!」
イリアの声が聞こえたと同時にアキの体は光に包まれた。




