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「これがユーフレインから俺を呼び戻す為の召喚印だ。」
アキは地面に描かれた魔法印を指差し、ミルナ達に説明する。この隠し部屋には現在5つの魔法印を用意している。1つは今説明した通り、アキをユーフレインから呼び戻す為のもの。残りは、アキとイリアがユーフレインへと転移する為のものが1つ、そして召喚印の予備が3つだ。
「こっちがユーフレイン転送用。まずはイリアから行ってくれ。5分後に俺がいく。その間、周囲に問題がないか簡単な偵察をしておいて欲しい。」
「うん、わかったよ!」
ユーフレインの特定場所への転移に必要なオリハルコン数は5本。今朝イリアを「ユーフレインのどこか」から召喚したのに比べて魔素の使用量は少ない。
「俺が行ってる間のオリハルコンの管理はミルナに任せる。」
「は、はい!」
魔法の使い手としては彼女を一番信用している。大気魔素の理論もちゃんと理解しているので、安心して任せられる。まあ勿論エリザもだが、ミルナのほうが付き合いが長いので、今回はミルナにお願いした。
ちなみに魔法印には魔法発動後、オリハルコンを抜き差ししないと再発動しないような術式を組み込んだ。何かトラブルが起こった際、アキがいれば臨機応変に対応できるが今回はいない。ミルナ達に全てを任せるからこそ万全を期しておきたい。
「俺がユーフレインへ転移したら転送印からオリハルコンを抜いて召喚印の方に移せ。ただ直ぐには刺すな。魔法が発動するかもしれない。」
「わかりましたわ。」
「1時間過ぎても俺が戻って来なかったら召喚印にオリハルコンを刺せばいい。」
アキを召喚する用に、イリアをユーフレインから呼び戻した時と同じ魔法印を用意した。だがもしそれで発動しなければ、エリザが用意してくれた3本のオリハルコンを追加していく。だから予備の魔法印を用意した。魔法印の修正はミルナ達には出来ないので、予め全て準備しておいたのだ。
「俺が1本ユーフレインへ持って行くからここに残っているオリハルコンは7本。そしてエリザが調達してくれた3本。合計10本だ。万が一10本で発動しなかったら……ベル、オリハルコンを集めろ。そしてあっちの魔方印を使え。15本分まで用意した。」
隠し部屋の奥を指差す。この5つの魔法印の他に、さらにいくつか追加で作っておいた。オリハルコンがさらに必要になった場合の魔法印だ。おそらく10本以内でなんとかなると思うが、念の為だ。ベルフィオーレへ確実に戻れるようにする為、万が一にも不備があってはならない。
「はい、その時は王女の力でもなんでも使って集めます!」
だから危険な事はしないでくださいねと心配そうにアキの手を握ってくるベル。
「何もないと思うから心配するな。」
今回は本気で無茶をする気は一切ない。勝手な事をする気もない。ただの偵察だ。不測の事態があるとするならば、転移先に魔獣や人がいて戦闘に発展した場合だ。まあイリアの話からして人里離れた森の中にある小屋らしいので大丈夫だろうが。
「じゃあとりあえずイリア、行ってくれ。」
「うん!じゃあ向こうで待ってるね!」
そう言うとイリアは魔法印の中心に立つ。アキは早速オリハルコンを突き刺し、転移魔法を発動させる。そして5本目を刺した時、眩い光がイリアを包む。
「イリア!アキさんをお願いしますわよ!」
ミルナがイリアに叫ぶ。すると彼女は少し微笑み、転移の光に包まれ、消えた。
「次は5分後に俺だな。それにしてもみんな心配し過ぎだ。」
さっきからミルナ達の落ち着きがなく、ずっとそわそわしている。
「だって!アキさんに何かあったらどうするんですかー!」
ソフィーが絶望した表情でアキに抱き着いてくる。この子達の過保護ぷりは一生治る事はないんだろうか。
「たったの1時間だ。昼寝でもしとけ。」
戦争に行くわけでもないのだから適当に過ごしていればいい。
「できないのだ!うぅ……アキ、私もいっちゃだめなのか?」
エリスがお願いだから連れてってと上目遣いで懇願してくるが、今回はさすがにダメだ。何度も説明した通り、アキが向こうの世界の状況を確認し、彼女達を連れて行っても大丈夫になってから連れて行く。まずは基盤作りだ。
「ダメ。それに今回は転移先の小屋から出るつもりもない。大丈夫だから心配するな。」
それに下見だけの今回より、基盤作りの為に色々動き始める時の方が遥かに危険が伴う。まあそんな不安になりそうな事を今言う必要もないので、ミルナ達には黙っておくが。
「わかったのだ……。」
エリザは不承不承ながらも納得してくれた。
「じゃあ行ってくる。」
そろそろ5分が過ぎたので、アキは魔法印の上に立ち、オリハルコンを4本突き刺す。自分の懐に携えているアイリスから借りたオリハルコンは、ユーフレインに持って行く必要があるので、今回は使わない。それとは別のオリハルコンを手に持ち、5本目を転送印に突き刺す。
「すぐ戻る。ミルナ、ベル、アリア、留守を頼んだ。」
アキが言い終わると同時に魔法印が光を発し、アキの体を包む。
「アキさん、怪我!怪我はダメですー!」
「怪我しないから。誰とも戦闘しないから。でもありがとね、ソフィー。」
ソフィーのいつものセリフを聞くとどこか安心する。アキは苦笑しつつも、新たなる世界、ユーフレインへと転移した。




