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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 帰還
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17

「アキ君、持って来たわよ。」


 2時間後エリザがオリハルコンを3本携えて戻って来た。さすがエリザ、時間通りにアイリスとの交渉を終え、滞りなくお役目を遂行してくれたようだ。


「ありがとう、エリザ。」

「どういたしまして。……ってそれより送還前のアレよ!ちょっとそこに座りなさい!今からおねーさんのお説教よ!」


 ソファーを指差し座るように命令してくるエリザ。説教と言っているのに座らせてはくれるらしい。床に座れと言えばいいのに。


「床は可哀そうだから……ダメよ!」


 優しい猫だ。まあ床には意地でも座らないからエリザの選択はある意味正しいが。


 仕方ないのでソファーに座ると、エリザが目の前に仁王立ちしながら「お姉さんを尊重する大切さ」について説法を始めた。何か勝手に話しさせておけば満足しそうな勢いなので、聞いている雰囲気だけ出しておこう。その間にさっき行った固有名詞を使っての召喚・送還実験結果を頭の中でまとめるとしよう。


 結果から言うと、オリハルコンで直接大気魔素を操作し、固有名詞を使って召喚する方法では、ユーフレインからは物質を召喚する事は出来ず、ベルフィオーレからは出来た。これはおそらくアキがユーフレインに行った事がないからだろう。名前がわかっていても、イメージが無ければ召喚できない。ベルフィオーレについてはアキが勝手知ったる場所だから出来た。つまり名前を知らなくても、イメージさえ出来れば召喚は出来る。どうやらこの召喚方法に関しては、固有名詞を知ってようがいまいが関係なさそうだ。まあ大気魔素の直接利用はアキにしか使えない方法だが。


 次に魔法印と固有名詞を使っての召喚実験だ。こちらについては「ユーフレイン」と記した召喚印の発動は成功した。ただ「ベルフィオーレ」と記した場合は召喚魔法が発動しなかった。ユーフレインという呼称は定着しているから魔法印が使えるが、ベルフィオーレはしてないから使えないということだろう。どうやら魔法印を使用しての発動については、固有名詞の認知度が必要と言えるかもしれない。


 つまり現段階で、ユーフレインから何かを召喚する場合は、魔法印が必須になる。アキ自身がユーフレインのイメージが出来ないからだ。イリアであれば出来るかもしれないが、魔法の発動がそもそも彼女には難しい。


 そしてベルフィオーレから何かを召喚する場合、魔法印では不可能でアキが直接する必要がある。ベルフィオーレの呼称は定着していないので魔法印が使えない。だがアキが世界のイメージが出来るので直接召喚は可能。ただこれには注釈がつく。ベルフィオーレに存在する街の名前を使えば魔法印でも召喚は可能なのだ。ベルフィオーレという呼称はさっき決めたばっかりだが、ミスミルドやミレーといった街の名前は古くから存在する。つまりその名前が浸透しているから可能だと考えられる。


 結果、わかった事は、オリハルコンで大気魔素を直接利用し召喚魔法を発動させる場合に必要なのは、呼称ではなくイメージ。名前は別になくてもいい。逆に魔法印を使用する際に必要なのは、世界に認知された呼称という事になる。立ち入り禁止エリア内に設置されている魔獣召喚印の場所指定の術式はおそらくユーフレイン大陸の言語で「ユーフレイン」とでも記してあるに違いない。


「ベルフィオーレの名前をこれから広めていけば、いつかはベルフィオーレという呼称が召喚魔法に使えるようになるかもしれないな。」


 考察を締め括る際の癖で、ついボソッと呟いてしまった。当然それをエリザが聞き逃すはずもなく、目を見開いて威嚇してくる。


「ちょっと!人がありがたいお話してあげてるのにアキ君は何を考えるのかしら!ちゃんと聞きなさい!理解するまで話すわよ!もっかい最初からよ!」


 尻尾を逆立てているのが微笑ましい。だがまた最初から話されるのは面倒なので、誤魔化す事にしよう。


「エリザは綺麗だなって見惚れていたんだ。悪い、もっかいちゃんと聞くよ。」


 普通の人間ならこんなあからさまなお世辞に誤魔化されるわけないが、この猫なら多分行ける。


「そ、そうなの!?それなら特別に今日はこれくらいにしてあげようかしら!」


 エリザが「えへへ、綺麗……」と頬を赤くしながら嬉しそうに尻尾を左右に揺らしている。何故こうもチョロいのか。まあ可愛いけど。


「じゃあそろそろユーフレインに行くか。呼び戻す魔法印を準備しないとな。」


 アキはミルナ達をつれ、いつもの隠し部屋へと向かう。

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