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「鍛える?イリアをか?」
エリスは不思議そうな表情を浮かべる。十分に強いと思っていたけど違うのかといった感じだ。
確かにイリアは強い。攻撃速度や威力はエリスに匹敵するだろう。
「でもイリア対人苦手だろ。」
「あー……あはは。アキにはバレてるのか……。」
苦笑するイリア。
彼女がサルマリアの十六夜の洞窟で襲ってきた時、ほとんどフェイントを使ってこなかった。正直読み合いも下手だった。その事から考えるに、イリアは戦闘能力は高いが、対人戦は経験がないとわかる。
「うん、アキの言う通りだよ。あまり対人はしたことないからね。お役目だって秘密裏にやったから、この平和な世界では誰かと争う事なんてなかった。だから戦闘は魔獣討伐しか経験ないかな。隠れ蓑として冒険者をしていたしね。」
「うん、そうだろうね。だからエリスやミルナ達と模擬戦を毎日しなさい。あと俺とも。特にエリスは実力が飛び抜けているからいい経験になる。そして俺は対人特化してる。それで腕を磨いて、ユーフレインでも問題なく過ごせるようにして欲しい。」
イリアをユーフレインに連れて行くからには、対人経験を積ませておきたい。何かあっても対処できるようにしておけば安心だ。
だから彼女にはアキと一緒にユーフレインとこの世界を行き来してもらう。夜や休日はこちらの世界にいて皆と模擬戦だ。全てが片付いた後、どちらに定住するかはイリアが決めればいい。だがそれまではこちらの世界を拠点にしてもらいたい。
「イリア、いいかな?」
「いいよ!あ、でも全部おわった後向こうにいるって選択肢はないかなー……。こっちの世界、私は好きだし。」
アキがいれば好きに行き来できるし、別に定住する必要はないよねとイリア。
まあそれは彼女の好きにすればいい。別に今考える必要はない、まだ先の事だ。
「ゆっくり決めるといい。もしかしたらユーフレインで恋人ができるかもしれないしな?」
「う、うん……でも……アキが……かな……。」
イリアが小さく何か呟いているが、よく聞こえない。重要な事ではなさそうなので無理に聞き出す必要はなさそうだ。
「アキさん!大変ですー!」
急にソフィーが慌てた様子でアキの肩を掴んでくる。
「いきなりどうした。」
「アキさんがユーフレインで女を落としてきます!大変ですー!」
「俺に言うな、この駄エルフが。それに落とすつもりはない。」
真っ先に心配する事がそれかとソフィーの頬をおもいっきり抓る。
「ふぁってー!」
ただミルナやアリア達、そしてエリザまでもが訝し気な目でアキを見てくる。どうやらまったく信用されていないようだ。
「女を落とすに関してだけは一切信用できませんわ。」
ミルナが断言してくる。
失礼な話だ……と言いたいが、この現状を見ると正直何も言えない。
「本気でないぞ。俺はこの世界の人間のつもりだからな。向こうで伴侶なんて作ったらダメだろう。」
これで少しは納得してくれるだろうか。だがこれは本当だ。ユーフレインでも誰かを娶るとなったら、あちらでの定住も視野にいれなければならない。アキとしてはこちらの世界で暮らしていきたいので、それは避けたいというのが本音だ。
「ということは『この世界の女はまだまだ増やすぞ』という事でよろしいですか?」
アリアが揚げ足を取ってくる。
「曲解して解釈するな、このど変態メイドが。」
アリアをトレーで引っ叩く。
「ありがとうございます!」
久々に殴られた事が嬉しいのか、目を輝かせるアリア。やはりこのメイドはもう手遅れのようだ。こうやって喜ぶから極力殴らないようにしているのに、何とかして殴らせようと煽ってくるので余計質が悪い。
「まあ、うん・・話を進めようか。とりあえずイリアは今日から訓練に加われ。俺達は毎日欠かさずやってる。」
ちなみにミルナ達の対人訓練は順調だ。最近ではエリスからたまに1本とれるくらいにはなっている。4人がかりでだが。それでも大進歩だ。
アキも着々と鍛えてもらっており、大分剣の技術が身に着いた。セシルの見立てでは、剣の腕前はAランクに届き始めているBランクくらいらしい。
「うん!わかった!」
「よろしく。イリアが入ったら心強いしな。」
今日からイリアというSランクレベルの実力者が加わるのだから、アキの腕もさらに伸びそうだ。しかし訓練相手が相変わらず豪華すぎる。最近はルティアもちょくちょく参加してくれていて、皆で戦闘技術を研鑽し合っている。もうこのメンバーで世界征服くらい容易くできそうだ。
「アキさん、今世界征服できそうだとか思いましたね?できますのでやめてください。お願いします。」
ベルが的確にアキの思考を読んでくる。
「ええい、心を読むな。」
「今まで散々騙されましたから。もうそうはいきませんよ。」
二度と勝手な計画は実行させませんとくすくす笑うベル。どうやら考えを見抜かれるようになったのは自業自得のようだ。ミルナ達に人殺しさせるように仕向けたり、ルティアの時に勝手に突っ走ったり、ミルナ達を騙したりしてイリアの元へ向かったりしたせいで、アキに対する観察力が上達してしまったようだ。
「まあ心配してくれてるってことだから嬉しいけどね。」
そのくらい大事に想われているという事なのだから文句なんてない。それにこの子達になら考えを見抜かれてもいいと最近は思える。アキも彼女達の事は心から信用しているからだろう。
それはそうと、ユーフレインについて1つ大事な事を伝え忘れていた。
「あ、それとユーフレインだけど多分これ異世界じゃない。同じ世界の別大陸だと思う。」
「えっ?」
アキの発言に、ベルが素っ頓狂な声を出す。




