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「あ、そうだイリア、丁度思い出したけど、今ってメルシーじゃないんだよね。」
仲間意識云々で思い出した。ミルナ達のパーティ名が変わったのを、イリアは知らないはずだ。
「あれ、そうなの?私がいなかったから変わったのかな?」
「ミルナ達が正式に俺を入れてくれたんだよね。それでいまはMERSIA《メルシア》になった。」
「なるほどね!じゃあ私とアキも仲間なんだね!」
自分が外されてなかった事に安心したのか、アキが入っている事が嬉しかったのかはわからないが、イリアは楽しそうに笑う。
「じゃあそんな仲間のイリアに聞きたい。これからイリアはどうしたい?」
ユーフレインの情勢はなんとなくわかった。世界地図も見た。後はイリアがどうしたいかだ。選択肢は大きく分けて2つある。1つはこちらの世界でミルナ達と今まで通り過ごす事。お役目も無くなったし、普通の冒険者として生きる事は出来るだろう。もう1つは、ユーフレインの状況を少しでも改善できるよう行動する事。
ただイリアはユーフレインに家族がいるわけでも友人がいるわけでもない。しかもユーフレインは「観察者」という役目を押し付けた世界でもある。だからイリアがユーフレインを見捨てても、当然だ。
「アキが言いたい事はわかる。多分普通ならユーフレインなんて見捨ててアキ達とこの世界で自由に生きるのが正しいと思う。でもあっちには困ってる人が沢山いる。偽善と言われるかもしれない。でも私は彼らを見捨てられない……。」
代々こちらの世界で観察者として生きてきたイリア。ユーフレインで育ったわけでもないし、生れたわけでもない。ただイリアの体にはユーフレインの血が間違いなく流れている。つまりユーフレインは紛うことなきイリアの故郷だ。そう簡単に見限れないのだろう。
それにイリアは正義感が強い。ミルナ達が以前言っていた事だ。だからユーフレインの世界情勢を見た今、何か自分に出来る事があるなら力になりたいという思いがあるのかもしれない。
「あの……アキ……。」
イリアは言いずらそうに口をもごもごさせている。
「なに?いいから言ってみなさい。」
「うん……私じゃ何をしていいかわからないんだよね。だからアキ、手伝って?私に力を貸して欲しい。我儘なお願いなのはわかってる。でもアキしか頼れる人がいないんだ。」
何をどうすればいいか馬鹿な自分にはわからないとイリアが呟く。
「うん、いいよ。」
「え……でも。あれ?」
即答で了承されるとは思っていなかったのか、イリアが首を傾げる。
「仲間なんだから当然だ。そうだろ、イリア?」
「……!うん!そ、そうだね!」
感極まったのか、ありがとうと何度も呟きながら涙ぐむイリア。
「ああ、任せろ。ミルナ達もそれでいいか?」
アキは一応確認するが、誰一人異論はないようだ。
「どこまでもアキさんと共に。以前そう言いましたよね?」
ベルの言葉に全員がそうだそうだと頷く。
「まあ……イリアに協力を了承したのには実はもう1つ理由があるんだよね。」
もちろんイリアの願いを叶える為というのが大前提だ。ただそれがなくとも、アキはユーフレインに渡っていただろう。何故ならもう1つ重要な課題がある。そしてそれは絶対に遂行する必要があるからだ。
「それはなんですの?」
ミルナが首を傾げる。
「この世界に二度と干渉させないようにする事だな。」
今現在、ユーフレインからの干渉はない。イリアの報告書が放置されている事からもそれがわかる。ただ何が切欠で再び干渉を始めるかわからない。ベルの改革を進めるにあたり、それは絶対に阻止しなければならない事案だ。
「これ以上俺のベルの邪魔をしたら許さない。」
「アキさん……うふふ、嬉しい。」
ベルが嬉しそうに抱き着いてくる。
せっかくこの大陸で改革をこれから進めようと言うのに、邪魔されるのは面倒だ。この世界に魔獣による波乱はもういらない。今、必要なのは政治的改革だ。
「それをさせない為、この世界に誰が干渉したのかを調査する。その足掛かりとしてユーフレインの治安を良くすれば、イリアの願いも叶えられるだろ。一石二鳥だ。」
「なるほど!」
イリアがうんうんと頷いている。
「そしてユーフレインからこの世界の痕跡を全て抹消し、この世界が存在する事実をユーフレインから消す。それが俺の最終的な目的だな。」
そうすれば、ユーフレインにはこちらの世界の存在を知る者はいなくなる。つまり干渉される可能性は限りなく0になる。少しの文献なども残してはならない。こちらの世界の存在を知っているのはこの世界の人間だけで十分だ。
「アキ、また時間のかかりそうな目標ができちゃったね?」
「そうでもないかもしれないぞ。」
リオナが苦笑するがアキはそうは思っていない。何故なら意外に早く片付くかもしれないからだ。
「あれ、そうなの?」
不思議そうに首を傾げるリオナ。
「理由としてはいくつかあるが……一つずつ説明していくか。まずユーフレインがこちらの世界に干渉してきた理由だけど、それはある程度推測がついてる。」
「ほんとですの!」
ミルナは驚愕しているが、イリアの報告を聞いて少し考えればわかることだ。ベルやミルナにならすぐにわかるはず。少し2人に考えてみるように伝える。このくらいの事なら2人は難なく紐解けるだろう。
「そうですわね……自分達の世界をよくする為、酷似しているこの世界で魔獣の実験した……ってことですの?」
ミルナが自信なさげに結論を口にする。そしてベルがそれに続く。
「オリハルコンの使用方法の検証、そしてそれにより人同士の争いや犯罪をどれだけ減らせるか、効果を測定したかったということでしょうか。」
「うん、俺もそう思う。」
さっきアキがした推測と大体一緒だ。
「アキさん、わかりませんですー……。」
ちゃんと教えろとソフィーが口を尖らせながら文句を言ってくる。まあ他の子達にはちゃんとかみ砕いて説明してあげないと駄目だろう。
「わかってる。今から説明するから。」




