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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 帰還
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10

「ところでイリア、ユーフレインの地図は手にいれたか?」

「あ……うん!これだよ!」


 イリアは懐から綺麗に折りたたんだ地図を取り出してアキに渡してくれた。アキはそれを全員に見えるように、テーブル上に広げる。


「これがユーフレインか……。」


 ユーフレインという世界は、地球でいうところのユーラシア大陸のような、横長な1つの大きな大陸で成り立っているようだ。そして国境を見る限り、10の国から構成されているのがわかる。ただ地図の縮尺が印されていないので、実際の大きさはわからない。また文字も読めないので、国の名前もわからない。唯一推測できるのは地図の上部中心に書かれている文字だ。おそらくこれが「ユーフレイン」と記されているに違いない。


「イリア、これどれくらいの広さかわかる?あとイリアがどこにいたかわかる?」

「ごめん、わからない。ごめんね?」


 イリアは本当に申し訳なさそうに謝るので、そっと撫でてやる。そもそもユーフレインへの渡航はイリア自身が故郷を見に行く為であって、アキの調査は彼女にとってはついでだ。それをこんなに頑張ってくれたのだから文句なんてあるわけがない。ましてや謝る必要なんて一切ない。


「情報としては十分だ。それにそんな世界なのにイリアが無事で本当によかった。イリアは美少女だからね。あの情報聞いたらもう1人では行かせれないよな。」

「そ、そんなことないって……。でも嬉しい、ありがとう。」


 まだ悲しそうな顔はしているが、少しは落ち着いてくれたようで、小さく微笑むイリア。


「いい傾向です!もうすぐイリアは落ちますー!」

「そうね!さすがアキね!女を落とす事にかけては世界一よ!」


 ソフィーとエレンがただただ失礼な事を言っているので、とりあえず殴っておく。内緒話するならせめて聞こえないように話して欲しい。アキにもイリアにも丸聞こえだろうが。


「なにするのよ!」


 エレンが今にも襲いかかって来そうな勢いだ。


「エレンとソフィーの聖なる衣召喚しちゃおっかな?」


 オリハルコンを抜刀して構える。


「ま、待ちなさい!それは卑怯よ!」

「アキさんそれはだめですー!」


 相変らずうちの子達はこれに弱い。純情な乙女って感じだ。


 エレン、リオナ、セシル、エリス、エリザは基本的になんでも恥ずかしがる。ソフィーやベルは積極的にスキンシップを取ってくるが、ちょっとエッチな話題は恥ずかしがる。逆にアリアやルティアはなんでもこいのド変態だけど、何故か直接的なスキンシップはものすごく恥ずかしがる。不思議なもんだ。女の子特有の何かがあるのだろうか。一生かけても解明できない謎かもしれない。この研究に一生を費やす価値はあるだろう。


「ありません。そんな馬鹿みたいな研究をテーマにするのは絶対やめてくださいませ。」


 ミルナが呆れ顔だ。しかしそこまで言う事ないだろうに。酷い。ちなみに今のは考えていたのではなく、全部声にだして語った。その方がなんか面白そうだったので。


「あ、ちなみにホーリーホワイトは恥ずかしがるくせに必死に誘惑してくるどMな変態だと思っているから安心しろ。」

「安心できませんわ!?その認識は今すぐ改めてください!それにその呼称はやめて!私は色気ある大人のお姉さんですのよ!」

「という設定?」

「設定とか言わないでくださいませ!ばかー!」


 やっぱり面白い。ミルナを構うのは楽しい。というかミルナだけでなく、この子達はアキの言葉に律儀に一喜一憂してくれるので、揶揄い甲斐がある。


 さてミルナで遊んでひと息ついたし、本題に戻るか……と思ったが、何の話をしていたのかすっかり忘れてしまった。


「なんだっけ……ああ、エレンとソフィーの下着を召喚する話だったか。」

「違うわよ!その前よ!その前に戻りなさいよね!」

「そうです!それはダメっていいました!」


 何故か怒られた。


 しかし今の話で気づいた事がある。転送・召喚についての重要な発見だ。


「なになに?召喚?もしかして私に関係ある?」


 イリアが興味津々に聞いてくる。


「あるぞ。俺が過去に転送や召喚した事がある物は1番に下着、2番にイリアとエリザだ。よかったな、2人とも。2番目だぞ。光栄に思うがいい。」


 生物としては1番目だ。ただ順番的に見れば下着に負けた2人という事になるが。


「ねえ、アキ!びっくりするくらい全く嬉しくないんだけど!?その情報知らない方が絶対幸せだよね!なんでわざわざ伝えようと思ったのかな!」

「そうよ!アキ君!私を下着以下に扱わないでくれないかしら!次から転送や召喚をして貰う度に頭を悩ます羽目になるでしょう!そういう事言うのはやめなさい!」


 不名誉な栄光を手にしたイリアとエリザが文句を言ってくる。


「今ふと召喚や転送したものについて考えたら、ミルナ達の下着、後はエリザとイリアだった事に気づいたんだよね。」


 2人の転送・召喚は、ミルナ達の聖なる衣の実験があったからこそ成功したとも言えよう。イリアやエリザは、ミルナの純白やソフィーの漆黒に感謝すべきなのだ。後はベルのパステルカラーに。


「すっごく感謝したくないんだけど!?」


 下着に感謝なんかしたら女として終わる気がすると頭を抱えているイリア。


「しないでください!それに感謝されても非常に困ります!」


 ベルのがやめてと叫ぶ。


「俺の猫は感謝するだろ?」

「しないわよ!むしろ下着の次って失礼よ!わかってるのかしら!アキ君!」

「え?猫と下着は紙一重って言うでしょ。」

「言わないし紙一重でもないわよ!いきなり変な諺作らないでもらえるかしら!」


 エリザが尻尾を逆立てて怒鳴る。引っ掻いてきそうな勢いだ。


 まあ実際には召喚した物はそれ以外にも色々ある。地球から珈琲なども召喚したし、この世界からも検証の為に色々と召喚した。彼女達には教えてあげないけど。


「落ち着け白猫。」

「白猫って言わないで!」


 エリザがとうとう丸まってしまった。どうやらこの猫は羞恥がある一定レベルを超えると猫の本能が発動してしまうらしい。


「ちなみにイリアの聖なる衣は何色なんだ?」

「言うわけないよね!?なに流れるように自然と聞いてるのかな!あと下着を聖なる衣って言うのやめようよ!神聖化すればいいってもんじゃないからね!」」


 そう簡単には引っかかってくれないらしい。うちの子達ならこれですぐに答えてくれるのに。イリアのは召喚して実際に確認してみるしかないのだろうか。


「そんな事に召喚魔法使わないでよ!する必要ないよね!絶対ないよね!」


 イリアが必死に止めてくる。残念だ。


「アキさん、その必要はございません。イリアさんは主に水色です。」


 さすがアリア。その辺の調査は既に終わっているらしい。


 しかしさっきイリアをユーフレインから呼び戻したばかりなのに、いつの間に確認したのだろうか。このメイドの情報収集能力が恐ろしい。


「なっ……!何で知ってるのかな!」

「あ、そうだったんですか?あてずっぽうだったんですけど。」


 適当に言っただけだったようだ。さすがのアリアもこの短時間で情報収集している暇はなかったという事か。ただどのみち恐ろしい。このメイドの洞察力が怖い。観察眼についてはアキ以上かもしれない。下着の色を見抜く事に限ってだが。なんて無駄な能力だ。


「ち、違うからね!水色じゃないからね!」


 イリアが弁解してくる。


「うーん……?」


 今の一幕を見ていたシャルが不思議そうな顔で首を捻っている。


 このパターンは多分あれだ。


「えぃ!」


 シャルはイリアに近づいてスカートを捲る。予想通りの行動だ。そして確かに水色だ。この前はホットパンツだったのに、今日に限ってスカートを履いているのがイリアの不運だったようだ。


「きゃあああ!ちょっと!ちょっと!何してるのかな!?」

「アキさん!やっぱり水色でした!」


 イリアの叫びを無視し、無邪気に報告してくるシャル。


 本来であれば怒るべきところなのかもしれないが、イリアのすらっとした綺麗な足を見れたし、可愛い水色の下着も拝見できたから、よくやったと褒めておく。


「ちょっとアキ!なんなのかな、この2人は!あとその感想別にいらないから!」

「そう?ちなみに彼女達は俺の有能なメイド達だ。」


 変態という属性はついているが、優秀なのには間違いない。


「そして下着の確認能力においては右に出る物がいない。」

「その能力いるかな!?ただのど変態メイドだよね!」

「落ち着け、水縹《みはなだ》のイリアよ。」

「変な渾名をつけないでよ!」

 

 ちなみにミルナ達はこれでイリアも自分達の仲間だと嬉しそうに笑っている。仲間意識持つところがそこなのか。下着仲間でいいのか。


 まあそれはともかく、イリアの暗かった表情はすっかりなくなった。


「少しは気分が晴れたか?」


 スカートを押さえ、顔を赤くして蹲っているイリアに声を掛ける。


「あっ……うん。……そっか……うん、大丈夫。」


 アキの意図に気付いたのかイリアが頷く。少々やり過ぎたかもしれないが、雑談を挟んだ理由がこれだ。ユーフレインの話をし始めてからイリアはずっと辛そうな表情をしていた。慰めては見たものの、あまり効果はなかったようだったので、こうして話を脱線させたというわけだ。

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