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「よし、じゃあ今度こそ本題にはいろうか。ソフィーもおかえり。」
「アキさんなんて知りません!ふーんだっ!」
2回も庭にポイされたソフィーはご機嫌が斜めだ。
「いい子にしてたらいっぱい構ってあげようと思ったのに……残念。」
「はい!たった今機嫌なおりました!構ってくださいですー!」
本当に扱いやすい子だ。とりあえず適当に構ってやり、隣に座らせる。
「さて、イリア。」
「うん。えっとどこから話そうかな……。」
悩んでいるようなのでアキから提案してやる。
「じゃあ俺が渡した調査項目あるだろ。あれの順番に話してよ。それで最後に説明しきれなかった部分を補足する方向でどうかな?」
「そうだね!あれわかりやすかったよ!」
イリアは頷いて、ポケットから綺麗に折りたたんだ紙を取り出す。
ルティアとは正反対だ。あの子はくしゃくしゃにしてポケットに突っ込むからな。多分イリアは性格的に几帳面でしっかりした子なのだろう。
「アキ、今失礼な事考えた。」
「気のせいだ。ほら、おいでルティア。」
「ん、行く。」
無駄に勘のいいルティアを誤魔化す為、膝の上にのせてやる。それで満足したのか、ルティアは楽しそうに足をぷらぷらさせている。こっちもなんだかんだ単純だから助かる。
「じゃあアキのくれたこの確認事項の紙を辿っていくね。」
調べて欲しい事をわかりやすくする為、フローチャートを作ってイリアに渡しておいたのだ。上からYES/NOで進んでいけば、アキが調べて欲しい事は一通り網羅出来るようになっている。
「調べるのはこの『はい』の部分だけでよかったんだよね?」
「うん、『いいえ』の部分は違うってことだから必要ない。」
「おっけー!じゃあ最初の『転送先にイリアが送っていた報告書が溜まっていたかどうか』だね。これの答えは『はい』だったかな。」
今回イリアを転送した場所は、彼女が定期的に報告書を送っていた場所だ。つまり彼女の報告書が山の様に溜まっていれば、そこに保管しているか、使われていないかのどちらかになる。
「えっとそれで次だね。『溜まっていたら、報告書に埃が蓄積しているかどうか。それとも誰かが管理している形跡があるか』の確認だね!」
どうやらイリアはちゃんと手順通りに行動してくれたらしい。
そして彼女が確認したところ、報告書を誰かが管理している様子はなく、数十年以上は放置されている可能性が高いとのこと。埃も溜まっているし、誰かがその場所に出入りしている形跡もなかったらしい。
「イリア、転送された場所はどんなところだった?」
アキは話を遮って確認する。
「あ、そうだね。人気のない森の中にある小屋。そんな場所だったかな。」
どうやらイリア達の報告は既に不必要となっているようだ。もしそうならこの世界への干渉はないと言ってもいいだろう。つまり魔獣召喚を止めても問題ないということになる。
「1つ追加で確認。イリア達観察者が報告書を送っていた場所はそこだけ?」
「うん、ここだけ!」
なら間違いない。向こうの世界との繋がりは切れているといっても問題ないだろう。
「ベル、魔獣召喚はもう止めても問題ないと思う。各国にこの事を通達の上、ベル達の望むようにしろ。」
「はい、アキさん。そのように。」
ベルの考えている計画は、とりあえず魔獣の召喚を止め、現存する魔獣の駆逐を冒険者に依頼。そしてまずは魔獣の絶対数を0に近づける。その後、アキが提案した犯罪に抑制政策を徐々に施行。いわゆる地球で行われているような物だ。犯罪を裁く為の法律を作り、罪を犯した者を正当な方法で裁く。
つまり犯罪行為の取り締まりを街の外にも展開するという事だ。今までは魔獣頼りだったことを、全て人間の責任下におく。街の外も管理しなければならなくなる分、犯罪数の増加はいなめないだろう。だが魔獣という不明確なものに頼る必要はなくなり、各国主導で治安維持が行える。つまりベル達がどれだけしっかり管理していけるかにかかっている。大変な事だ。だがきっとこれが国としての正しい形だと思う。
「こっちの世界の事はもう各国に任せればいい。後はイリアの世界の方だな。」
今現在はこちらの世界への干渉はないかもしれないが、あちらの世界の情勢によっては再干渉もあるかもしれない。
「まあそれを阻止するのが今後の目的になるか。二度とこちらの世界に干渉しないように取り計らわないとね。うん……よし、イリア話の続きを頼む。」
今後の方向性はうっすらと見えた。これでより集中してイリアの世界の事について考えられそうだ。
「うん、えっと次は……『魔素が存在するか』だね。これは『はい』だったよ!」
魔素についてはイリアが確認出来る事かどうかわからなかったが、無事出来たようだ。しかも存在まで確認できたとは朗報だ。
「えへへ、実は魔法、ちょっと使えるんだ!」
ミルナやエリザ程ではないが、イリアも多少は魔法が使えるらしい。ただ戦闘では全く役に立たないレベルだから言ってなかったのだとか。
「簡単な生活魔法程度だからね……自慢出来る事じゃないから。」
だがそれでも検証に使うには十分だ。向こうの世界でも同じように魔法を発動出来たならそれは魔素の存在証明になる。
そしてイリアが実際に試したところ、こちらの世界と全く同じ効果が得られたそうだ。つまり魔素は存在し、その濃度もこちらと同じ可能性が高い。
「しかしそうなると異世界というより別大陸の可能性が高まるな。」
まあ魔素があるのであれば、アキが一度赴いて検証すればいいだけだ。自分が行けば環境状況など色々と観察できる。それに自分で見たほうが色々とわかるだろう。
「確かにこの世界と変わらない気もなんかした!私はバカだからよくわからないけどさ!まあ、その辺はアキに任せるね!」
舌を出しながら苦笑するイリア。
「そんなことないだろ。ちゃんと調べてくれてるしたいしたものだ。」
「そ、そんなことないって!はい、次、次ね!」
褒められる事にあまりなれていないのか、イリアがさっさと話を進める。
「次は『世界の情勢について』だね。これは項目が多かったから調べるのちょっと大変だったよ。でもおかげで私が見たいもの、知りたいものがわかった!」
イリア自身どう動けばいいのかさっぱりわからなかったそうだ。ただアキの指示書があったから助かったのだとか。まあそうなりそうな気もしていたので、イリアにあらかじめ調査用紙を渡しておいたのだが。とりあえず想定通り彼女の力になったようでなによりだ。
「まずは『世界が滅んでいるかどうか』だね。うん、これは一番心配したよ!でも大丈夫だった。滅んではいなかったよ。」
イリアの故郷は滅んでいなかった。それは喜ぶべき事だ。
それに滅んでいないのなら、オリハルコンや大気魔素について調べられるし、異世界の新しい知識や情報を得る事もできる。そしてこの世界とは違った景色も見られるだろう。異世界を思う存分物見遊山アキとしては最高だ。
ただデメリットももちろんある。滅んでいないという事は、こちらの世界への再干渉が懸念される。現在は干渉はしていないようだが、歴史は繰り返されるという言葉があるように、何が切欠で干渉が再開するかわからない。
どのみちこれについは今どれだけ考えても結論は出ないので、アキは考えを一旦打ち切る。とりあえずはイリアの故郷が残っていた事を素直に喜ぼう。
「滅んでなくてよかったね。イリア。」
「うん!ほんとそれは安心したよ!」




