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イリア召喚の為の打ち合わせも終わり、早速隠し部屋まで移動した。
ミルナとエリザをアキの側に待機させ、背後にベル達。エレンやエリス達は戦闘要員として魔法印を囲うように配置。
「じゃあいくぞ……と言いたいが、その前に召喚印の実験だけしておきたい。」
前回は異世界の指定された場所にイリアを送還するだけだった。ただ今回は異世界のどこかにいるイリアを召喚する。やっている事は基本的には同じだが、場所の指定範囲がかなり広大だ。だからオリハルコンが何本必要になるかわからない。その為の実験だ。アキが大気魔素を直接使い、召喚魔法を発動できたらいいのだが、向こうの世界に行った事がないのでそれは出来ない。
「ベル、頼んでおいたオリハルコン、何本用意できた?」
「はい、エスぺラルド王家で保管していた物を全て持ってきました。全部で7本です。」
イリアを召喚する為、ベルには朝のうちに王城へ行って事情を説明し、オリハルコンを調達してもらった。後は魔法印を加筆修正しつつ、召喚に成功するまでオリハルコンを1本ずつ印に突き刺していく。
「とりあえずこの世界から何かを召喚する場合、何本のオリハルコンがいるのか……まずはその実験だ。」
アキは床にチョークで召喚印を書いていく。今回は術式の言語には日本語を使う。最近大分覚えて来たこの世界の言語でもいいのだが、まだまだ日本語のほうが正確に書けるので、こっちを採用した。
まずは召喚場所の指定だ。この大陸に存在するのは4ヶ国なので、それらの国名を記す。そして各国のどこかにある「何か」を召喚するように魔法印を構築する。
「実験では何を召喚するんですの?」
ミルナが首を傾げる。
「うむ、俺の世界では『聖なる衣』と呼ばれている魔除け効果がある物だ。この世界なら魔獣避けにはなるんじゃないかな?」
「そんなものがあるんですのね!それは興味深いですわ!」
そんなに興味があるのなら召喚した衣はミルナにあげるとしよう。アキがそう言うと、他の子達は「いいないいな」と羨ましそうにしている。だが今回は早い物勝ちという事で諦めてもらおう。
そしてミルナは早く早くと嬉しそうに急かしてくる。聖なる衣が貰えるとわかってテンションが上がっているらしい。
「わかった、すぐにやるから。とりあえずは1本目。」
アキは早速オリハルコンを魔法印に突き刺す。特に変化はない。1本ではやはり無理なようだ。魔法印に加筆をして、続いて2本目を突き刺す。何もなし。
「じゃあ3本目。」
すると今度は魔法印が眩い光りに包まれた。無事魔法は発動したようだ。
そして光が収まると、魔法印の中心にアキが指定した聖なる衣が召喚された。
「成功だ。」
「こ、こらー!『成功だ。』じゃありませんわ!これのどこが聖なる衣ですの!?」
ミルナが召喚された大量の聖なる衣を必死にかき集めている。聖なる衣、またの名をミルナの純白の下着とも言う。
「これが聖なる衣、ホーリーホワイトだ。」
「私の……し、下着にそんな大層な名前つけないでくださいませ!」
「魔獣避けの効果は……。」
「ありませんわ!?あったらあったでそれは何か嫌ですわ!」
ミルナが涙目で文句を言ってくる。
しかしよくもあれだけ瞬時に自分の下着だと判断できるものだ。相変わらず判断と行動が早い。さすがにこの展開には慣れたのだろうか。そうだとしても嫌な慣れだ……。まあ諸悪の根源はアキなのだが。
だが召喚の検証でホーリーホワイトを召喚するのは当然だ。これは仕方のない事なのだ。なのに何故ミルナはそんなに慌てているのだろう。
「当然ではありませんわ!?何故私なんですの!あと私の下着をその名で呼ぶのは即刻やめてくださいませ!」
だってエレンやリオナのを召喚するのは可哀そうだろう。セシルとエリスのも同様。アリアとルティアは自分から喜んで見せてくる変態なので面白くない。シャルちゃんのは当然論外。そしてベルのは大量に召喚されそうなのでなんかヤダ。
「私のだけものすごく不本意な理由なんですが?文句を言ってもいいでしょうか。」
ベルが引き攣った笑みを浮かべている。自分のが召喚されなくて一安心した半面、どこか納得いってない、そんな表情だ。
「だからソフィーかホーリーホワイトになるのは当然なのだよ。そして俺の気分的にホーリーホワイトだった。以上。」
「はぁ!?それで私が『わあ、そうだったんですね。』と納得するとでも思いますの!?あと私の呼称をそれにするのもやめてくださいませ!」
聖なる衣を服の中に押し込みながらミルナが必死に文句を言ってくる。何度見ても面白い光景だ。
「ちなみに召喚術式は『世界各国にあるミルナの下着を全て召喚せよ』だ。」
「この屋敷にしかないですわ!?他のどこにも存在しませんわ!?」
文句を言いつつも、未だにミルナが服の中に聖なる衣を隠そうと躍起になっている。ただ量が量なので隠しきれずに服からはみ出ている。変態下着泥棒みたいだ。
「変態って!泥棒って!これ私のですから!ばかー!アキさんばかー!」
やはりミルナの反応は可愛い。だからついついやってしまうのだ。だがそろそろ本当に泣きそうなのでやめておこう。
「もうほんとやめてくださいませ!」
すっかりいじけてしまったミルナ。
「ごめん、ミルナが可愛いからついな。許してくれ。」
「そ、そうですの……?し、仕方ないですわね……。」
相変わらずチョロい。
「ちょっとアキ!真剣な事しようとしてる時に変なイベント混ぜるな!」
今度はエレンが不機嫌そうに怒鳴ってくる。他の皆も呆れ顔だ。
「ごめん、次はエレンのホーリー下着にするから。」
「そういう意味じゃない!あとホーリーつければいいってもんじゃないわよ!」
エレンが噛みついてきそうな勢いで威嚇してきた。さすが解き放たれた猛獣。今日も絶好調だ。
「冗談だ。とりあえず今ので検証は終わり。次は本番だ。」
ミルナの下着を元あった場所に転送しておく。
「あのねアキ?検証が必要なのはわかるけど下着でやるのはやめようね?あと『冗談だ』でいつもいつも済まそうとしないでね?私は悲しいよ?」
リオナが悲しそうな目でアキを見つめてくる。その視線はやめて欲しい。そして正論すぎる。さすがうちの狼、真面目だ。しかし確かにこんな事ばっかりやっていたら、本当にいつかリオナに見捨てられそうだ。少しは反省して自重したほうがいいかもしれない……。
「み、見捨てはしないけどね……?」
だから安心してねと尻尾を可愛らしくパタパタさせている。結局リオナも非情にはなりきれないようだ。アキにはなんだかんだ甘い。
「ありがと、リオナ。よしじゃあ早速魔法印を書き換える。」
まずは召喚場所の記述をイリアが渡った異世界を表す模様に書き換える。これは解読できてない部分なので、立ち入り禁止エリアで使われている召喚印の丸写しだ。いつかこれも解読出来ればいいのだが……まあイリアの報告次第ではそれも可能だろう。そして召喚する物の記述を「ミルナの下着」から「イリア」に忘れずに書き換えておく。
「これでいい、あとはオリハルコンを刺していくだけだ。」
まずは1本、2本、3本、そして4本。本数を徐々に増やしていく。だがまだ何も変化はない。
アキの予想だと、魔法が発動するのはおそらく6本くらいからではないかと考えている。まあ根拠もないただの予想だが。
「みんな準備はいい?多分もういつ召喚されてもおかしくないからな?」
アキはそう宣言して、5本目を刺す。未だ魔法の発動は見られない。ミルナ達も緊張の面持ちで魔法印を見つめている。
次いで6本、そして7本。
「7本でも駄目か。残すところ俺がアイリス女王から借りている1本だけだ。この8本目でも発動しないなら日を改めないといけないな……。」
ベルが用意してくれたオリハルコンは7本。そこにアキがアイリスから貸与して貰っている1本を加えると、全部で8本のオリハルコンがこの場にある事になる。だからこの最後の8本目を刺しても魔法印が発動しないのであれば、さらにオリハルコンをかき集める必要があるだろう。
「でもなんかこれでなんとかなりそうな気がするんだよね。」
アキは最後の1本を魔法印に突き刺す。
すると魔法印から眩い光が放たれた。無事魔法は発動したようだ。
後はイリアがどうなっているか……それだけが気がかりだ。
「イリア、無事か。」
未だ魔法の発動は終わっていない。だがはやる気持ちを抑え切れずつい声をかけてしまう。ミルナ達も同じ気持ちなのか、口々にイリアを呼ぶ。
だがまだ返事はない。
ミルナとエリザはいつでも治癒魔法を発動出来るよう準備している。そしてエレン達やエリスは武器を抜刀し、いざという時の為、即座に動けるように構えを取る。
段々と光が収まってくる。その向こうにうっすらと人影が見えた。
果たしてイリアは……
「みんなただいま!私は無事だからね!」




