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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十一章 帰還
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 アキにとって波乱の夜が明け、とうとうイリアを呼び戻す日がやって来た。アキがリビングに入ると既に全員揃っているようだ。というかこの子達はアキより遅く来ない。必ずアキより早い。前に理由を聞いたら「夫をお出迎えするのは~」と言ういつもの下りをベルに力説された。


「エリザほんとに学園の方大丈夫か?」

「ええ、明後日には一度戻りたいけどね。今はまだ大丈夫よ。」


 この中で唯一ちゃんとした職についているエリザ。しかしそう考えると……他の子達は全員ニートではないだろうか。アキは一応爺さんに商品知識を販売して食い扶持は稼いでいる。だが他の子達は何もしてない気がする。


「アキさん、ニートってなんですの?」


 ミルナが聞いてくるのではっきりと現実を教えてやる。


「家でごろごろと仕事もせず、自堕落な生活を送って、食って寝て金だけかかる人間の事だ。つまりミルナ達のことだ。」

「ち、ちがいますわ!私達冒険者してますもの!」

「そうです!私達お仕事してますー!」


 ミルナとソフィーが反論してくる。


「じゃあソフィー、最後に依頼を受けてお金を稼いだのはいつだ。」

「えーっとです……うーん……ってあれ?」


 思い出せないらしい。つまりそれくらい依頼を受けていないという事だ。Sランクは定期的に依頼を受けなくても問題ないので、自発的に仕事しようとしない限り、完全なニートだ。しかも最近はアキ宛てに来た依頼を皆でこなしていたので、報酬も全部アキに入ってくる。つまりこの子達は一銭も稼いでいない。


 まあ極論を言えばだが。


 彼女達は進んでアキを手伝ってくれているのだからなんの問題もない。言ってあげないけど。なんか面白そうだし。暫くこのままこの子達を見ていよう。


「そ、そんな……私がダメ人間になるなんて……。」


 ミルナが絶望した表情で落ち込んでいる。


「大丈夫だ。元からダメ人間だ。」

「そんなことないですわ!追い打ちかけないでくださいませ!」


 頬を膨らまして拗ねてしまう。やっぱ面白い。


「大丈夫だ。そこの妄想剣士と腹黒王女もなにもしてないニートだ。」


 アリアとセシルは一応アキの従者として色々仕事をしてくれている。ルティアも影で動いてくれているので、一応なんらかの仕事はしていた。


「アキさん!王女の私をダメ人間扱いしないでください!国務!国務をしてますから!」

「そうなのだ!私はアキの騎士なのだ!何もしてないわけじゃないぞ!」


 絶対にミルナと同じダメ人間になるものかという気迫を2人から感じる。同じ扱いをされるのがそんなに嫌か。


 でも正直なところ、食い扶持なんてアキが稼ぐから、この子達は好きにしてくれていればいい。それが甲斐性というものだろう。それにミルナ達やエリスはいざという時頼りになる。ベルは普段からアキのサポート役として頑張ってくれている。だから今のままでなんら問題ない。


「冗談だ。本気にするな。」


 雑談はこれくらいでいいだろう。そろそろ本題へ入ろう。


 この後イリアを呼び戻す。そして彼女の報告次第で今後の予定が決まる。


「それで……私達にすることはあるんですの?」


 ミルナの質問にアキは頷く。この子達にはいくつかお願いしておきたい事がある。


「ミルナとエリザ。イリアがどういう状況に陥ってるかわからない。召喚した時怪我をしてるかもしれない。だからいつでも治癒を使えるように準備しておいて。」


 勿論イリアが元気に「ただいまー!」って戻ってくるに越したことはない。ただアキ達には異世界の情勢が一切わからないので、最悪の想定をしておくべきだ。


「なるほど、確かにそうですわね。」

「ええ、わかったわ。おねーさんにまかせなさい!」


 2人とも理解してくれたのか、やる気満々だ。


「次にエリス、エレン、リオナ、ソフィー、そしてルティア。いつでも戦闘出来るようにしておいてね。」


 当然イリアだけを召喚するつもりだが、召喚するタイミングでイリアが接触していた物は同時に召喚される。これは先日さりげなく検証済みだ。エリザに自分の荷物をミレーから持って来いと言った際、荷物まで召喚指定してないのに、荷物を背負ったままのエリザが召喚された。


「もしイリアが誰かと接触していたら同時に召喚される。」


 召喚の瞬間にイリアが戦闘中で、魔獣や他人に触れているという可能性は限りなく低い。だが0ではない。だから念の為にエレン達に準備させておく。


「やった!お仕事ですー!」

「わかったわ!」

「いいよ、頑張るね!」

「任せるのだ!」

「私、アキ守る。」


 ありがたい事にこちらの5人もやる気満々だ。


 これで準備は大丈夫だろう。後はイリアを呼び戻すだけだ。アキは早速隠し部屋の地下室へ向かおうとするが、戦闘専門外の子達の事を失念していた。


「ベル、アリア、セシルは来る?もし来るなら一歩下がってて。シャルちゃんは屋敷のお仕事をお願いね。」


 勿論行きますと3人は迷いなく答える。正直止めても絶対くるだろうとは思っていた。どんな危険に晒されても、この子達はアキの側にいるつもりなのだろう。まあその分アキが守ってやればいいだけの話だ。


「じゃあイリアを呼び戻しに行くぞ。」

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