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「ミルナはすっかり変わったね。いやこっちが本当のミルナなのか?」
「どういう事なの?」
出会った頃はすごくしっかりしたお姉さんというイメージだった。それでいて腹黒くて、計算高く、アキと似たような人種かと思っていた。それなのにいつの間にかどんどんポンコツなお姉さんになって、今じゃただの泣き虫で寂しがり屋の女の子だ。
「あ、あの頃は……ちょっと無理してたんだもん。でもね……これが本当の私。ダメダメで全然しっかりしてない。すぐにやきもち妬くし、構ってもらえないとすぐ拗ねる。自分でもわかってるの。」
ミルナが恥ずかしそうに呟く。最初はしっかりしようと頑張っていた。でもアキといると「もう無理しなくていい、全部任せよう」そう思うようになったらしい。それくらい一緒にいると安心できたのだとか。
「それでいてその……誘惑とか本当はできないし、恋愛経験もないの……。」
「うん、それは知ってる。」
「ば、ばか!そこは知らないふりしてよ……。」
元々ミルナは箱入り娘のお嬢様。それでいて好奇心は人一倍旺盛。冒険者になる為に実家から飛び出してきたくらいだ。世間知らずでポンコツでも仕方がない。
ただそんな彼女なりに、今までは必死にお姉さんを演じてきた。どれだけそれが大変だったのかはアキにも容易に想像がつく。アキ自身、地球では自分を偽って相手が望む姿を演じてきたのだから。
「ねえ、アキさん。今の私と、出会った頃の私。どっちが好き?」
ミルナが真っ直ぐに見つめてくる。そんな彼女の美しいアクアブルーの瞳に吸い込まれそうになる。
そして胸が見えそうだ。角度的にきわどい。
寝る前だからだろう、ミルナはアキがあげたTシャツとショートパンツしか着ていない。Tシャツは相変わらずぶかぶかで、胸元がはだけそうになっている。ショートパンツも丈が短いせいで、ミルナの生足がスラっと伸びていて、とても扇情的だ。
そんな彼女に見つめられ少しドキっとしたが、アキは小さく深呼吸し、気持ちを一旦リセットさせる。そしてミルナのアクアブルーの髪に手を添え、そっと撫でる。
「綺麗な髪だな。」
「え……う、うん。ありがと。それでアキさんあの……?」
ミルナが首を傾げる。質問の答えをといいたいのだろう。
「うん。昔のミルナは話してて楽しかった。腹の探り合いとか出来たしね。でも今はもうそんな事したくないんだよ。さっきミルナが自分で言った通り、ミルナはポンコツかもしれない。でも俺はそれがいい。そんなミルナがいいんだ。だからもちろん今のミルナのほうが好き。」
「えへへ、やった。」
嬉しそうに抱き着いてくるミルナ。アキはそんな彼女の頬に手を添える。何をされるかわかったのか、ミルナは抵抗することなく、目を瞑る。
「え、なんで目を瞑るの?」
「……!なんで……んっ!」
わざわざ尋ねた事で、ミルナは目を見開き、抗議の声を上げようとする。だが文句を言われる前に彼女に口付けをして口を塞ぐ。別に素直にキスしてもよかったのだが、あまりにミルナが緊張していたので、少しからかっておいた。気楽にしていてくれたほうがアキとしては嬉しい。
気付いたらミルナは再度目を閉じている。何秒たっただろうか。よくわからない。ただミルナとのキスはどこか心地よく、夢見心地にさせてくれた。
もういいだろうと唇を離し、放心状態のミルナに声をかける。
「ミルナ、大丈夫か?」
「へーき。」
ミルナはぼーっとしていて、心ここにあらずといった感じだ。これはしばらく使いものにならなさそうだ。少し意地悪してからキスをしたが、本人は全く気にしている様子はない。ミルナの望むシチュエーションを完璧には再現出来なかったかもしれないが、彼女の雰囲気を見るに、心配はなさそうだ。
「ミルナ、好きだよ。」
「うん、わたしもすき。」
ミルナがおもいっきり抱き着いてくる。まあ彼女がいつものミルナに戻るまでは好きにさせてやろう。
暫くして復活したミルナ。
せっかくなのでキスの感想を聞いてみたら「ばか!」と怒られた。でもその後、恥ずかしそうに「またして」と嬉しそうに笑ってくれた。
「で、さっきから胸が当たってるんだけど?」
ミルナはまだアキに抱き着いたままだ。いつになったら解放されるのだろうか。
「い、いいの!別にアキさんだからいいの。触りたかったら触ってもいい……よ?」
そう言ってさらに豊満な胸をアキに押し付けてくる。解放されるどころかさらに状況が悪化している。いや男としては喜ぶべきところか。まあこれだけ落ち着いていられるのも、この子達のおかげだ。こういうのに物凄く免疫がついた気がする。そろそろ賢者になれそうだ。
「ダメだ。ファイナルインパクトが使えなくなるだろう?だから俺がミルナの胸を捥ぐわけにはいかない。」
はっきりと宣言してやる。
そう、ミルナの最終奥義をアキが奪うわけにはいかないのだ。
「なんで捥ぐ前提なの!触ってもいいけど捥がないで!あとその魔法は一生使わないって言ったでしょ!最終奥義でも何でもないから!」
「冗談だ。そういうのは今度な。今じゃないだろ?」
「う、うん。……うぅ・・でもその時はまた恥ずかしくて死にそう。」
ミルナが両手で顔を覆い、悶え始めた。
「嫌ならなにもしないから。」
「い、嫌じゃない!むしろしてほしいもん!た、ただ恥ずかしいだけだもん!」
ミルナはもう自分でも何を言っているのかわかってない気がする。羞恥で顔が真っ赤だ。
彼女の気持ちは十分に伝わっているので、これ以上揶揄うのはやめておこう。しかし素は純粋で本当に可愛いミルナ。そのままでいいのに何故この子は誘惑の練習とかしているんだ。それに結局どれだけ練習しても、今日みたいにポンコツになるんだから諦めればいいのに。まあそんな健気な姿も微笑ましいが。
「そろそろいい時間だ。ミルナ、そろそろ寝なさい。」
「あ……うん……また来て良い?」
名残惜しそうにするミルナ。アキとしてもまだ彼女と過ごしていたいが、そろそろ休むべきだ。
「いつでもおいで、ミルナの好きにしていいんだよ。」
「えへへ、嬉しい。」
やったやったと子供らしく喜ぶミルナ。やっぱりアキはこっちの彼女の方が好きだ。
「えっと……それじゃ……コホン。それではアキさん、おやすみなさいませ。」
咳払いという儀式をして、いつものミルナへと戻る。
「残念、いつものミルナに戻ったか。」
「ふふ、また今度、いつでもお見せしますから。アキさんだけですわ。あの私が見られるのは。……また明日ね、アキさん。」
アキのリクエストに応えてか、最後の最後に少しだけ素を見せてくれたミルナ。そして軽く会釈した後、満足した顔で自分のコテージへと戻っていった。
しかしあれだけ幸せそうな表情をされるとさすがに照れる。だがミルナとの時間はアキにとっても心地いい時間だった。その証拠に、すぐに気持ちのいい睡魔に襲われ、あっという間に夢の世界へと旅立てた。




