17
マリミアでも屋敷を購入する方向で話が纏まったので、明日にでも物件の内覧に行こう。爺さんがイリアナに手配をさせていたのでその辺は大丈夫だろう。
そんな事を考えながらソファーにだらしなく腰掛け、物思いに耽る。夕食後は自由時間とし、アキは早々に自分のコテージへ引き上げて来た。
「1人旅は今まで色々したけど、誰かと旅行するのって楽しいんだな。」
あまり騒がしいのは得意ではなかったのだが、今ではすっかりミルナ達が騒いでくれないと物足りなくなっている。旅と言えば自由気ままな1人旅と思っていたのに、今でもはもうそれは寂しい。みんなの事を寂しがり屋と言ったが、あまり人の事は言えなさそうだ。少し前までは1人じゃないと嫌だったのに、すっかり変わったものだ。
「まあミルナ達は『俺は変わってない、それが本当の俺だ』とか言いそうだけど。」
だが実際そうなのかもしれない。地球では1人でも大丈夫だと自分に言い聞かせ、殻に閉じこもっていた。でも本心はこうやって誰かと騒ぎたかったのかもしれない。自分では変わったと思っている。本当に変わったのか、今の状態がアキの本質なのか。それは自分にもわからない。
「まあどっちでもいいか。しかし本当に俺が……まったく……これも全部ミルナ達のせいだ……。」
だが決して今の自分を悪い気はしない。それだけ今を楽しんでいるという事だろうから。地球の人生は楽しくなかったが、今は楽しい。それがすべてを物語っている。
「あの……アキさん?」
いつの間にかミルナが扉をそっと開けてこちらを覗いている。
「どうしたミルナ?」
「ノックしたのに返事がなかったので……。入ってもいいですか?」
「ごめんね、考え事してて気づかなかった。」
いつもならノックもせずに突撃してくるのにどうしたのだろう。確かにミルナには夜部屋に来いと言った。ただ勝手に入ってくるだろうと思っていたので、声を掛けられたのにはびっくりだ。
「はい、失礼しますわ。」
ミルナは丁寧にお辞儀をして部屋に入ってくる。そしてアキの隣に優雅に腰かける。ミルナがいつにもなく上品で落ち着いた態度だ。
「どうした?いつもはノックなんてしないくせに。」
「えっ……コホン。いえなんでもありませんわ。ほほほ。」
何故か落ち着きある女性を必死に演じている。あまり理由は言いたくなさそうなのでとりあえず聞くのはやめておこう。なんとなくはわかる。ミルナ達がアキの考えが読めるように、アキだってこの子達の考えなんて大体お見通しだ。
「とりあえず治す?」
「う、うん……お願いしますわ。」
ミルナがコクリと頷く。
「じゃあまず本当に臭いのか確認しようか。」
「なんでですの!絶対嫌!やめて!」
ミルナが必死に膝を抱きかかえ来ないでと涙目だ。ただそういう格好でそういうセリフを言われると、アキが悪い事をしてる気分になるのでやめてほしい。
「デリカシーなかったな、ごめん。」
「うん。」
とりあえずエリスと同じ要領で魔素を使って治療しておいてやる。あの時と少し原理が違うが、基本は一緒だ。特に問題ない。
「はい、終わり。」
「え、もうですの?」
「魔法を使いなら一瞬で終わる事くらいわかるだろ?」
「そ、そうですわね……つい……。」
「これでミルナもいい匂いだね?」
「もともといい匂いですわ!」
ミルナが顔を真っ赤にして抗議してくる。誰も臭いとは言ってないのだから落ち着け。悩みが1つなくなって気苦労が減るねと言いたかっただけだ。
「わかってるって、ミルナいつもいい匂いするし。そういうことじゃなくて。」
「あ、うん。言い回しに気付かなくてごめんね?」
すぐにアキの言っていることを理解したのか、素直に謝るミルナ。
「それで最初ミルナがいつにもまして大人の女性を演出してたのは、キスしてもらおうと思って雰囲気作りの為に意識して行動してたんだよな?」
「ば、ばか!なんでそれを言うんですの!それは言っちゃダメですわ!今ちゃんと言い回しに気を付けてくれたのに!なんでこれははっきり言うんですの!」
もう知らないと言ってそっぽを向いてしまうミルナ。まあノックまでしてあんな態度で入ってきた時点で彼女の考えには当然気づく。言わないでおくのもいいかと思ったが、それでは面白くない。
「確かに気品があって上品なミルナもいい。でも俺は今のミルナの方が好きだな。」
「うぅ……だってー……。」
「それのほうが絶対いい。」
「じゃあ……そうする。」
素直に頷いて甘えてくるミルナ。もう今日は素の方のミルナでいくらしい。まあ彼女が望むならキスしてもいいのだが、アキが今雰囲気を盛大にぶち壊した。
だから暫く昔話に花を咲かせるのも悪くないだろう。
「ミルナはすっかり変わったね。いやこれが本当のミルナってだけ?」
「どういう事なの?」




