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温泉では想定外の乱入者もあったが、なんだかんだ一時の休息を満喫できた。
その後、宿に戻り、全員で夕食を取る。料理はアキが作ろうと思ったのだが、爺さんが全て手配してくれていた。せっかく旅行に来ているのだから休めという爺さんの配慮だろう。うちの子達もアキの料理がいいと我儘を言う事はなく「それで構いません」と頷いていた。まあ皆がそれでいいなら、アキも甘える事にしよう。今日は家事もお休みだ。
「やっぱりアキさんの料理がおいしいですー。」
「それだけ食っておいて何言っていんだ。」
ソフィーが料理を頬張りながら感想を述べる。大体そんな大量に食べた後に言われてもなんの説得力もない。しかも現在進行形でお代わりを注文しているのだから呆れる。まあ確かに料理は美味しかったが。ちなみにルティアもアキの隣で必死にリスのように料理を口に詰め込んでいる。とても可愛い。
「美味しいのは美味しいんですわ。でもアキさんのほうが美味しいと言いたいだけです。」
ミルナが教えてくれる。つまり美味しそうに食べているけど、アキのが一番だよって言いたいだけなのだろう。気持ちは嬉しい。だがそんなに美味そうに食べながら言う事でもないだろう。
「とりあえず、俺の料理の評価はいいから食事を楽しもうよ。」
せっかくの料理だ。今はこれを存分に楽しむべきだろう。
「ね、ね、アキ、それ食べない?食べていい?」
そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、物欲しそうにアキの皿に残っている料理を見つめてくるルティア。本当にこの子はブレない。まあ彼女におねだりされたら断れないので、アキは自分の皿をルティアの前においてやる。
「はい、どうぞ。」
「やった。アキ好き。」
現金な子だ。食い意地に関してはリオナを超えているかもしれない。
「それよりこの街に屋敷を1つ買おうと思うんだけどいいかな?」
爺さんと温泉で話していたことを報告する。屋敷があれば毎回宿を取らなくて済む。温泉には気軽に来たいし、そのほうが便利だろう。
「アキさんがそうしたいならそれでいいと思います。」
ベルが問題ないと頷く。アリア、エリス、セシルも同様のようだ。まあこの子達は基本アキに反対しない。偶には反論して欲しいものだが「それは無理」と断言されたので諦めた。なんでも「アキさんが絶対なのです」と言い切りやがった。これはもうなんか怪しい宗教の教主になった気分だ。
「また買うんですの?ミレーとミスミルドにもありますわよ?」
ミルナが「管理が大変じゃないですか」と聞いてくる。アリア達とは違い、うちの子達はちゃんと意見を言う。アキとしてはこれはこれで嬉しい。最近はしっかり文句まで付け加えるようになっているくらいだ。
「確かにね。でもみんなの事を考えると屋敷があるほうがいいんだよね。」
リオナがレオを止めたとはいえ、ベルは王女だし、ルティアは極度の恥ずかしがり屋だ。それでなくともミルナ達は美人で目立つし、宿に泊まって変に注目を浴びるのも面倒臭い。
「あと、エリザやイリアを召喚、送還するのには宿だとちょっとな。」
もし旅先等で召喚する必要が出てきた場合、誰の目があるかもわからない公共の場所は避けたい。自分の屋敷であればその心配はないので安心だ。
「なるほど。それはありますわね。あ、別に反対とかではないんですの……ほらその……アキさんほっておくと際限なく物増やしそうで……。私たちの為に……。」
ミルナが気まずそうに視線を逸らす。
どうやらこの子達はアキ自身が欲しくて買うんだったら何も文句はないらしい。ただアキは彼女達の為になんでもかんでもすぐに買おうとするから、止めないと不味いと思っているのだとか。
「だってそれが一番有意義なお金の使い方じゃない?」
「なんでよ!ちょっとは自分の為につかいなさいよ!」
エレンがバカじゃないのと呆れ顔だ。
「自分の為かー……ならセシルの耳を増殖する為の研究資金に……。」
「……は!?……なんで!?これ以上いらないからああああ!」
2本で十分ですからとセシルが必死だ。アキなら本気でやりかねないと思っているのだろう。まあ確かに誰も止めなければ本気でやったかもしれない。
「じゃあリオナやエリザの尻尾を増やすために使うとか?」
「なぜかしら!おかしいわよ!何本もあったらただの化け猫でしょうが!」
「そうだよ!全然アキの為じゃないよ!そしてそれ別に私たちの為でもないよ!」
エリザもリオナもこの案は却下らしい。何故ダメなのだろうか。
「何故それをいいよって言うと思うのかな!?」
リオナが呆れ顔で非難してくる。そして1本で十分でしょと頬を膨らます。
でももふもふ尻尾に囲まれてみたい。それが全人類の夢ではないだろうか。まあそんなことを言ったらまた怒られそうなので言わないでおこう。それにそれはリオナの故郷に行った時の楽しみに取っておけばいい。
「あのね、アキ。考えてる事くらいわかるからね?ダメだからね。村に行ってもそんな事させないから。私の尻尾で満足してよね。バカ。」
アキの考えている事を的確に見抜いてくるリオナ。
これは不味い。最近アキの考えている事がうちの子達に筒抜けだ。地球にいたころの自分では考えられないくらいの失態だ。
「ふふふ、わかりますわよ?まあ、私達以外にはわからないと思いますけど。アキさん意外に顔に出るんですのよ?」
ミルナがくすくすと笑っている。それに同調するようにベルやセシルが頷いている。どうやらこの子達は本当にわかっているようだ。確かに以前、ミルナやアリア達でないとわからないだろうと言っていた。しかしアキはポーカーフェイスには自信がある。一切感情を顔に出してない自信がある。
「わしにはわからんわい。アキの表情変わってるかの?」
「いえ、私にもわかりません。」
爺さんとイリアナはわからないようだ。この2人がそう言うという事は、アキの表情に変化がないのは確実。
ただミルナ達はわかると言う。
とりあえずこの子達以外に思考を読まれるという事態にはなってないようで安心した。もし誰にでも読まれるようになってしまったら、アキの得意分野である観察に支障をきたす。これが出来ないとアキの存在意義がなくなってしまう。
「ええ、その利点、私たちに対してはありませんわ。諦めてください。」
ベルが楽しそうに笑う。また考えを読まれたらしい。
しかし人の心を読むのはやめてほしい。さっきから一言もしゃべってないのにこの子達と会話が成立してしまうのが怖い。まあ自分もよくやってる事なので文句は言えないが。
「私もわかるわよ!なんとなくだけどね。アキ君と一緒にいるようになってからはなんかわかるのよね。」
「そうだな。わかるのだ。」
エリザとエリスの言葉を聞いてなんとなく理解した。
アキは今まで他人に心を開いた事はなかった。だがミルナ達には隠す事なく素の自分を見せている。だから自分の気持ちが伝わるものなのかもしれない。科学的な根拠は何一つないが、多分そういうことなのだろう。
「そうですねー!アキさんはわかりやすいですー!」
ソフィーが叫ぶ。
この駄エルフめ。とどめを刺しにきやがった。正直一番ダメージでかいのが「君ってわかりやすいよね」って言葉だ。アキとしては屈辱なので、このエルフには相応の罰を与える必要があるだろう。
「ソフィーはしばらく構ってあげない。あとデザートも抜き。」
「なんでですー!?」
絶望した表情で文句を言ってくるがもう遅い。謝っても許してあげない。
その光景を見ていたミルナ達は、すっかり口を噤んでしまった。余計な事を言って飛び火しないよう、冷や汗をかきながら微笑んでいる。
結局アキの思考が読まれたとしても、立ち位置は自分のほうが強いようだ。まあこの子達が「アキの事捨てる」とか言わない限り、アキに怖い物はない。そしてそれをこの子達が言えないのは知っている。
もしアキが負ける時が来るとすれば、この子達が構われなくても平気になってしまった時だろう。
「アキさーん!構って貰えないと私は死んじゃいますー!」
「じゃあ死ね。」
「いやですー!」
とは言ってもそんな日が来るとは思えない。この子達の構ってちゃん気質は改善する気配がない。まあでもそれでこそミルナ達だ。




