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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十章 慰安旅行
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「旅行にきてまで疲れさすな。」

「とはいいつつも、楽しいんじゃろ。」


 爺さんが笑う。癪だが確かにその通りだ。あの子達がどんなに面倒でも手間でも、楽しい。まあ地球での人生に比べて、今がそれだけ充実しているという事だろう。だからそんな時間を作ってくれる彼女達には感謝しかない。


「今、俺は幸せだね。」

「ふはは、アキがそうならわしは満足じゃ。可愛い孫が幸せならこれ以上言う事はないわい。」

「とりあえず早く行こうよ。」


 少し照れ臭くなったのでさっさと温泉に入ろうと促す。


 ちなみに爺さんが気を利かして温泉も完全に貸し切ってくれた。ベルもいるのでこれは助かる。まあ護衛としてミルナ達がついてるから心配はいらないだろうが。


「うむ、では男湯はこっちじゃ。」


 アキ達は温泉がある切り株へと向かう。その側面から中へ入れるようで、入り口が円形にくり抜いてある。それを抜けるとちょっとした休憩所と脱衣所的な場所があり、奥の扉をあけるといよいよ温泉だ。


 早速爺さんと温泉に浸かる。しかしこうやって爺さんとのんびり過ごすのは初めてかもしれない。今まで彼と会う時はいつも報告や依頼ばかりだったので、ようやくこういう時間が取れたのは嬉しいものだ。


「情緒あっていい雰囲気の温泉だね。」


 温泉は大きな岩風呂のようになっていた。どうやら大木の切り株をくり抜いて、その周りを岩で囲んで造っているようだ。そして空を見上げると、木々の緑と太陽の光が見事に調和しており、最高の雰囲気を作り出している。アキが酒の飲める年齢なら、ここに浸かって一杯やりたい気分になるだろう。


 ちなみにこの世界、酒はある。地球と違い特に年齢制限はなく、子供のころから飲んでいる者も少なくないんだとか。ただミルナやアリア達は基本的に飲まない。口にしたことはあるが、あまり好きではなかったらしい。それに冒険者として生業を立てている以上、酔うのは好ましくないとエリスやうちの子達は言っていた。ベルは晩餐会などでは一応王女としての振る舞いとして飲むらしいが、それでも乾杯の1口だけだ。アリア、セシル、エリザ、ルティアは酒なんかよりご飯がいいらしい。


「お酒を嗜めるならきっと格別な気分になれるんだろうね。」

「そうじゃな。ただわしも下戸だからの。」


 爺さんも飲めないらしい。でも確かに爺さんの屋敷で酒が出てきた事は一度もない。そしてイリアナやメイド達も酒は苦手だと以前聞いた。ちなみに鍛冶屋のガランも「酔って剣が打てるか」という理由で飲まない。


「まあ、俺もそんなに好んで飲もうとは思わないな。」


 以前爺さんに頼んで酒を出してもらい、口にしてみた事があった。ただそれほど好きではなかったし、別になくても生きていけるというのが率直な感想だ。むしろ生きていけないのは珈琲の方だ。


 実は持ってきた珈琲が無くなって絶望していたのだが、地球から物を召喚出来るようになったので、あれから珈琲だけは召喚するようにしている。ただ地球のどこかの店から盗んでいる形になってしまっているのが申し訳ない。さすがに罪悪感を感じる。懺悔的な意味でミルナ達に止めた方がいいか相談したのだが「アキさんを絶望させた世界なんてどうでもいいです。むしろ滅ぼしましょう。」と全員が口を揃えて恐ろしい事を言ってきたので、物資の召喚程度は気にしない事にした。


 だから最近はアリアが紅茶ではなく珈琲を淹れてくれる。珈琲を見た事がなかったミルナやベル達は最初珈琲を見たとき、黒い液体に怪訝そうな顔をしていたが、アキが無理矢理飲ませたら結構気に入ってくれた。紅茶とは違った香りがするし、砂糖やミルクを入れて自分好みに甘さを調節出来るのが楽しいのだとか。おかげでアリアもすっかり珈琲の淹れ方を覚えてくれた。


 ただアリアはやはりアキにしか淹れないので、結局は自分が全員分の珈琲を淹れる羽目になっている。ちなみに彼女達の中でアキと同じブラック派はソフィー、アリア。ミルク派はエレン、ミルナ、ベル。砂糖派はセシル、エリザ。砂糖とミルクを際限なく入れて甘々にするのはリオナ、ルティアとエリスだ。彼女達の個性が出ている気がして面白い。


 そんなどうでもいい事を思い出しながら、アキはゆっくりと露天風呂に浸かる。


「いい湯だね、ここに住みたいな。」

「確かにの、屋敷1軒買おうかの。」

「それいいかもな。俺も買いたい。屋敷と言うよりツリーハウスか?イリアを連れて来てやりたいし、そうしようかね。爺ちゃん、手配できる?」

「そうじゃの、明日の午後にでも物件を見られるように手配しよう。」


 うちの子達に確認は取ってはいないが、きっと賛成してくれるだろう。稼いだお金を使うとこが無くて困っていたところだし、皆と楽しむ為に使えるならそれが一番だ。


 それからしばらくゆったりとした時間を過ごす。孫と爺のどうでもいい雑談をして温泉を楽しむ。30分くらいしたら爺さんはのぼせるからと言って先に上がった。アキも一緒に出てもよかったのだが、せっかくだしもう少しだけ浸かっている事にした。

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