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インパクトフラッシュを習得したエリザが喜びのあまり床に蹲っている。楽しんでもらえたようで何よりだ。
「楽しかったのはアキさんだけです。後、蹲っているのは叫び疲れただけです。」
事の成り行きを見守っていたベルが呆れた声で指摘してくる。
「まあ……ちょっと苛め過ぎたか。さて……全員が揃ってるし、これからの予定を話そうか。」
アキは咳払いを一つして話題を変える。
「ねえ、イリアが戻ってくるまで待つんじゃないのかしら?」
エレンが予定もなにもないでしょと不思議そうに首を傾げる。
「うん、待つ。待つんだけど、俺が言っているのは待っている間、何をしようかって話。あと5日あるだろ?屋敷で悶々とイリアの事を心配しててもしょうがない。」
何か予定があればいいのだが、全くない。大体の事は片付いた。だから本当にする事が今はないのだ。改革を進めるにしても、魔法印の解析をするにしても、イリアの報告を待たなければならない。今何かをしても無駄になる可能性が高い。別世界の情報を得てから動くほうが遥かに効率がいい。
「なるほどね、じゃあどうするの?」
何かいい案でもあるのかしらとエレン。
「そうだね、みんなで旅行でも行こうか。」
ミルナ達が覚えているかはわからないが、少し前「全てが片付いたら温泉旅行にでも行こう」と言ったのだ。今がまさにその絶好のタイミングではないだろうか。イリアが戻ってきたらまた忙しくなるだろう。それなら何も予定がない今が最適だ。それに旅行にでも行っていれば、余計な事を考えずに済む。
「いきますー!」
「うん、私も賛成!」
ソフィーとリオナが真っ先に賛成してくれた。他の子達も特に異論はないようで、いきますと嬉しそうに頷いている。
「行き先なんだけど、いいとこがある。」
旅行できる場所がないか以前少し調べたところ、エスペラルドの東にちょっとした温泉が湧き出ている場所があるとわかった。どうやらそこには温泉街が作られていて、一種の観光名所になっているらしい。まあ調べたというかイリアナに教わっただけなのだが。
「エリザ、休み取れるか?」
「ええ。大丈夫よ。今はそんなに忙しくないもの。」
「じゃあエリザも来い。」
「うん!行くわ!」
エリザも大丈夫そうだ。
残る問題はうちの王女様だ。
「ベル、来れるか?」
「もちろん行きます!なんとかします!」
心配する必要すらなさそうだった。王女がそれでいいのかと思うが、ベルが来れるのであれば正直なんでもいい。まあ国外へ出るわけじゃないから大丈夫だろう。
「じゃあ明日俺は弦月の山での報告も兼ねて爺さんを誘いに行ってくる。爺さんも連れていく約束だしな。ベルは王城へ行って来い。両親にはベルからイリアの報告をしておいてくれ。あと旅行の調整もしてこい。」
「はい!」
旅行で時間を潰して、戻ってきたころにイリアを召喚。予定は決まりだ。
「あ、そうそう。シャルちゃんも来なさい。」
「いいんですか?」
今回は仕事でもなんでもない、ただの旅行だ。当然シャルも連れて行く。いつも仕事を頑張ってくれているし、少しは羽を伸ばして貰いたい。
「勿論だよ。アリア、連れてきなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
アリアが嬉しそうに頷く。きっとアリアとシャルは家族旅行なんて行った事ないはずだ。そういう意味でもいい機会だ。2人には目一杯楽しんで貰おう。
しかしそう考えるとアキも初めての家族旅行だ。ミルナ達とはもう家族のようなものなのだから。
「そうだよね、エレン?」
「う、うん。そうよ。私とアキは家族よ。」
そっぽを向いて少し照れ臭そうに返事をするエレン。
そして何故かソフィーが「私もです!家族ですー!」と飛びついてくる。いちいち張り合わんでいい。とりあえずうちの暴走エルフを殴っておく。
「言われなくてもわかってる。全員俺の家族だ。」
「えへへ、はい!」
今日の団欒はこれくらいにしておこう。どこかで区切らないと、ついついだらだらと夜更かししてしまう。それにエリザの事もある。今日から彼女はこちらに住むのだから、部屋割りなどある程度の決め事をしておかなければならない。
「あ、エリザ、そういえば着替えは?」
「あ……忘れていたわ、どうしようかしら?」
まあ忘れるも何も、アキが勝手にエリザを召喚したのだから、着替えがなくて当然だ。つまりこれはアキのミスだ。アキがなんとかしてあげなければいけない。
といっても、召喚すれば全て済む話なのだが。そうと決まればやる事は1つ。
「よし、まかせろ。エリザの下着を全て召喚。」
早速アキはオリハルコンを抜刀し、エリザの下着を全てリビングに召喚する。
よし、完璧だ。
「ちょっとおおおお!!!『完璧だ』じゃないわよ!!!なんで下着だけなのよ!しかも全部っておかしいわよね!?」
うちの猫が叫びながら床に落ちた下着を必死にかき集めている。どうやら下着を召喚されると大体こういう行動に出るらしい。面白い発見だ。
「それにエリザは白らしいぞ。ミルナ、仲間が出来てよかったな。」
「全然嬉しくないですわ!?そして私まで巻き込まないでくださいませ!」
やたらと「お姉さん」アピールをしたがる子は主に白が好きなのだろうか。また面白い発見だ。
「アキ君!『面白い発見だ』じゃないわ!お姉さん、怒っているんだからね!?」
「へー、そうなの?白猫さん。」
「白猫じゃないから!ばか!!!少しはおねーさんを敬いなさい!」
エリザが尻尾を逆立てて怒る。そろそろ引っ掻いて来そうだ。
「冗談だ、ごめん。でも下着は自分のがいるだろ?寝間着は俺のを貸せばいいけど、下着はそうはいかないだろ?」
「た、確かに……そうね……うん。わ、わかったわ。アキ君の貸してくれるならそれでいい……。」
エリザがちょっと恥ずかしそうに頷く。
男物を着てもらわなければいけないのは申し訳ない。だが今日のところは我慢してもらおう。明日には自分の寝間着を持って来てもらえばいい。
ちなみに今のやり取りを聞いていたソフィーが、部屋から飛び出して行きそうな勢いで地面を蹴ったので、即座にエリスに捕縛させる。嫌な予感しかしない。
「一応聞いてやろう。ソフィー、どこへ何しに行く?」
「パジャマを捨ててくるとこです!無くなる予定なのでアキさんの貸してくださいですー!」
「この駄エルフが。予想通り過ぎるわ。捨てても貸さん。裸で寝ろ。」
すぐにそういう発想になるソフィーがある意味凄い。尊敬は微塵も出来ないが。
まあもう今日は叩くのにも飽きたので、突き放す事にする。
「やった!裸は寒いのでじゃあアキさんの部屋で一緒に寝ますー!きせーじじつですー!」
突き放す程度じゃ甘かった。凹むどころか、むしろ喜んでしまっている。
「エリス、とりあえずその駄エルフ今すぐ外に捨ててこい。」
どうやら今日もだらだらとソフィーを構って夜更かしする事になりそうだ。




