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「うふふ、随分増えましたわね、アキさんのお嫁さん。」
リビングを見渡し、微笑むミルナ。
確かに気付いたらこんなに増えていた。節操なしにも程がある。でも騒がしいのは正直大歓迎だ。
「でも俺は地球だと1人だったから、賑やかなのはなんか嬉しい。」
アキが呟くと、ミルナ達がハッとした表情を浮かべ、すぐに申し訳なさそうな顔をする。きっとアキの過去を思い出したのだろう。
「気にするな。でももう1回俺の話をしようか。聞いてない人いるしね。」
そう、エリザとルティアは知らない。アキの昔話をした時、ルティアは月夜の森の調査をしていた。エリザもその時はミレーにいたから当然知らない。だからアキは改めて、地球でどんな人生を送って来たか、両親の話や友人の話をする。そして何故こちらの世界に来たのかを説明する。
そしてアキの話が終わる頃には、膝枕をしていたはずのルティアがいつの間にかアキにしがみついて顔を胸に埋めていた。まさか泣いているのだろうか。
「アキ。私がアキの家族。ね?もう大丈夫。1人じゃない。」
「うん、ありがとうルティア。」
ルティアが涙目で必死にアキは1人じゃないと説明してくる。そんな彼女をそっと撫でてやる。
そしてミルナ達はどこか悲しそうな表情を浮かべている。さすがに今回は泣いてはいないが。ただどうやらこの話は彼女達にとってはお涙頂戴物らしい。アキにとってはもう吹っ切れてる事なので大したことではないのだが、この子達にとってアキの過去はなにより辛い話らしい。
そういえばこの話を知らないもう1人はどうしたのだろうか。エリザがさっきから静かだ。うちの猫なら真っ先に「おねーさんがいるわよ!」と言ってきそうなものなのに、何も発言してこなかった。不思議に思い、部屋を見回すが、何故かエリザがいない。どこへ行ったのだと首を傾げていると、アリアが「ここです」とソファーの後ろを指差す。
「……で、エリザ、なんでそんなとこで丸まってるの?」
アリアが指し示してくれたソファーの後ろを覗くと、なんか猫が1匹丸くなっていた。何をしてるんだ、この猫は。
「うぅ……だってぇ……ぐすっ……。」
大号泣していた。泣き顔を見られたくなかったから隠れただけらしい。なんともまあ感情豊かな面白い26歳だ。
「泣くような話じゃないから。」
「うん……私、アキ君の側にいる。ずっといる。あと26歳いうなぁ……。」
文句を言う元気があるようなら大丈夫だろう。アキはエリザの手を引っ張って、元々居た場所に座らせてやる。まったく手間のかかるお姉さんだ。
でもこうやってアキの事を心配して気にかけてくれるのは嬉しい事だ。
「エリザ、ありがと。それに皆もね。俺はこの世界ではいっぱい家族ができて幸せ者だな。」
「あはは、そうだね。僕……ううん、私も幸せ。」
アキに同意するようにリオナが楽しそうに笑う。
どうやらまだ完全にはリオナに戻り切れないようだ。こうして偶に一人称がレオに戻る事がある。まあ長い間「僕」で通していたのだから当然か。
「でもアキ、あんた本当に節操ないわね!こんなに女作って!」
「確かにエレンの言う通りですわ。私達も別の夫を作っちゃいましょう!」
こうなったら多妻多夫ですわとミルナがくすくす笑う。エレンも「悪くないわね」と悪乗りしてミルナと顔を見合わせて笑っている。
「まあ10人も娶ると言っている俺には文句言えないな。」
正直、一夫多妻と言う名のハーレムを作っているアキに、彼女達が別の男を作るのをダメなんて言えない。気持ち的には腸が煮えくり返るくらいムカつくが、そんな事を言ったら彼女達だってそうだ。アキが嫁を増やす度にそう思っていてもおかしくない。なのにこの子達はいつも「アキさんが望むなら」と笑顔でいてくれた。だからアキだって彼女達がそれを望むのであれば平然と頷くだけだ。
「うふふ、アキさん。平常心保てていませんわよ?」
ミルナが意地悪な笑みを浮かべてくる。
「あら、アキ、やきもちなの?そんなに私達が別の男作るの嫌なの?」
エレンもにやにやと楽しそうに笑っている。
悔しいが、その通りだ。
だがおかしい。アキは間違いなくそんな感情を表に出していない。表情なんて1つも変えていないはずだ。なのに何故ミルナ達にはアキの考えがわかってしまうのか。それが何よりも悔しい。
「アキさん、大丈夫です。私は貴方だけにしか興味ありませんから。」
ベルが急に会話に入って来る。そしてベルだけじゃなく、アリアもいつのまにかアキの後ろに立っており、はっきりと告げてくる。
「もちろん私もです。アキさんだけです。あんな酷い事を言う子達はポイしましょう。」
「それいいね、アリアお姉ちゃん!ぽい!しましょ―!」
アリアの提案に即座に便乗するシャル。
「アキ、ポイする?手伝う?」
膝上にいるルティアまでポイを提案してきた。
アキは顎に手を当てて逡巡する。捨てるのを手伝うって何をどう手伝う気なのだろうかと。ルティアの事だからとんでもない方法を考えていそうだ。
そんなどうでもいい事をアキは考えていたのだが、ミルナとエレンが焦り始めた。どうやら本気でポイされると勘違いしたらしい。
「ちょっとアキさん!冗談、冗談ですわ!?」
「そうよ!アキ!ごめんってば!」
何やら勝手に勘違いし、勝手に謝り始めたミルナとエレン。面白い子達だ。訂正して安心させてやってもいいが、面白そうだからこのまま2人で遊ぼう。
「別にポイしないから安心しなさい。」
とりあえずそこだけは否定して、安堵させてやる。すると案の定、アキの言葉を聞いてホッとした顔を浮かべるミルナとエレン。
「でも……冗談でも……ちょっと悲しかった。ねえ、シャルちゃん、ルティア。俺、意地悪されたんだど?」
「まかせて。」
「アキさんに意地悪だめです!おしおきです!」
シャルとルティアは自分達が何をすればいいのか全てを理解してくれたようで、任せてと頷く。
「「まって!それはまって!」」
当然ミルナとエレンも2人に話を振った意味をちゃんとわかっているようで、慌てて止めようとしてくる。ただシャルとルティアがそんな事で止まるわけがない。颯爽と2人の秘密を暴露し始める。
「旅から帰ってきてからエレンさんはお部屋でよくキスの練習してます!」
「し、し、してないわよ!?そ、そんな事実ないわよ!」
シャルの言葉を必死に否定するエレン。逆に必死過ぎて事実を認めているようなものだが。でもそんな事をしているとか可愛い。健気なエレンが微笑ましい。
「次は私。ミルナは最近お部屋で『ファイナルインパクト』の練習してる。」
まさかの事実だった。もっと可愛い秘密程度に思っていた自分が甘かったようだ。これは恥ずかしい。これは間違いなく新しい黒歴史だ。
「してません!絶対違う!してませんわ!」
顔を真っ赤にして叫ぶミルナ。どうやらしてるらしい。しかしネタで考えた魔法をマジで練習しているのか。さすがにそれはどうかと思うんだが。
「エレンのは可愛い。……でもミルナ、さすがにそれはドン引きだぞ。」
アキの言葉に全員が頷く。あまりの衝撃にエレンまでもが自分の痴態なんてどうでもよくなったらしい。
「いや、そのミルナ。聞いちゃって……ごめん。」
「謝らないでくださいませ!余計に惨めになるから!」
ミルナが涙声で叫ぶ。これはさすがに可哀そうだ。実はアキはルティアやシャルをギリギリで止めようと思っていた。でも聞きたいので放っておくことにしたのだ。本当だ。うん、本当だ。
「嘘はやめてくださいませ!絶対止める気ありませんでしたわよね!」
「でも、そんなミルナも可愛いと思うよ?」
そろそろ本気で泣きそうになって来たので、ミルナを慰める。
「うぅ……可愛いって言われても……あんまり嬉しくないですわ……。」
「でもなんでそんなの練習したの?」
一応聞いておく。さすがに本気で練習されるのは想定外だ。
「だ、だって……アキさんが喜ぶかなって……。」
どこをどう考えれば、その結論に辿り着くのだろうか。さすがにアレを極められても別に嬉しくない。さすがにそれはない。ただまあそれを言うと本気で拗ねそうなので言わないでおくが。
「ありがとう。でもあの魔法は別に覚えなくていいからね。」
「うん、アキさんが言うならそうする。もうやめる。」
ミルナの言葉を聞いて逆に安堵するアキ。あんな魔法を本気で覚えられたらこっちが困る。
ただ魔法と聞いて黙っているわけがない猫がうちにはいるのを忘れていた。
「新魔法なのかしら!なら私が覚えるわ!」
そういえばエリザだけはファイナルインパクトの中身を知らないんだった。
他の子達は全員「やめたほうがいいのに」という顔をしている事にこの猫は気付いていない。ただ誰も口を出して止めようとはしてこない。アキが「これは面白くなりそうだ」という顔をしているからだろう。あと口を出したら自分も巻き込まれるとか思われてそうだ。まあその通りなのだが。
「ほんとかエリザ。実は魔法職が増えたのが嬉しいんだ。」
「そうなの?」
それは本当に嬉しい。なんせ即戦力だ。
「ああ、だって今まで魔法使いは俺とミルナだけだ。ミルナは優秀だ。短剣も魔法も使えるし戦闘能力は高い。でも魔法だけを見ればエリザの方が上だろう?なあ、ミルナ。」
「悔しいですが、その通りです。さすが学園長さんですわ。」
ミルナもアキに同意してくれる。
冒険者としての戦闘能力だけであれば当然ミルナの方が上だ。だが魔法単体だけで見れば、さすがにエリザに軍配があがる。魔法学校の学園長という肩書に加え、魔法組合の組合長まで務めているのだから。
兎にも角にも、今までは魔法を使えるのがアキとミルナだけだった。でもこれからはエリザにも頼める。この戦力増強は大きい。
「そ、そう?まあ、魔法なら任せなさい。おねーさんだからね!」
アキがべた褒めした事で気持ちよくなったのか、胸を張るエリザ。それを見る限り、エリザもファイナルインパクトを使う資格はある。ミルナ程ではないが、多分ソフィー以上。十分に豊満の胸だ。流石お姉さん。
「じゃあエリザにも新魔法を授けよう。その名も『インパクトフラッシュ』だ。理論は『ファイナルインパクト』と一緒だ。」
「やった!かっこいい名前じゃない!」
エリザは早く教えなさいとやる気満々だ。ただミルナやアリア達は相変わらず「私知らないからね」と言った感じで視線を逸らしている。
「ではまずこれを見ろ。」
アキは手に眩い光の玉を生成する。いわゆる電球の理論を使った発光魔法だ。
そしてエリザに「何故」と「どうやって」光らせているのかを説明する。
「なるほど、わかったわ!」
「ああ、でもこれだとただの光だ。意味はない。」
「ええ、そうね。」
エリザが真面目に頷く。その表情は真剣そのものだ。
「じゃあ実践だ。目を瞑って想像しろ。まずは光を2対作るイメージ。胸の高さくらいがいいな。光はくっつけないで左右に離して。ここまでは大丈夫か?」
「ええ、そのくらい余裕よ!」
目を瞑ったまま力強い返事をするエリザ。
これで下準備は完璧に整った。
「その光だがな、体から離して発光させると自分に影響が出るかもしれない。だから体から発光させるイメージだ。まずはそのまま目を瞑ったままやってみよう。準備ができたら詠唱で発動させて。」
早速エリザに実践するように伝える。
「お姉さんに任せなさい!いくわよ。『インパクトフラッシュ!』」
エリザが詠唱すると同時に、エリザの双丘が激しく発光した。素晴らしい。予想通りだ。
もちろんエリザには目を瞑らせてあるので、何が起こっているのかはわかっていない。ちなみにうちの子達は「あーあ。」といった呆れた顔をしている。
「どう?凄かった?」
エリザがドヤ顔で皆に尋ね始めた。ただ誰も口を開かない。なんて言っていいのかわからないといった複雑な表情を浮かべている。
「完璧だ。さすがエリザ。ほらベルとアリアも感想を言ってあげなさい。」
まさかの流れ弾に焦る2人。
「す、すごく神秘的でした……!」
「ええ、とてもですが真似できません。」
ベルとアリアが必死に言葉を捻り出している。まあアリアのは完全に遠回しに馬鹿にしているだけだが。
「うふふ、さすが私ね!で、アキ君!どんな魔法なの!」
仕方ない、そろそろ教えてやろう。エリザをリビングにおいてある姿見の前に立たせる。
「さあ、自分でやって確認してみるといい。」
「そうね!それがわかりやすいわね!」
納得したのか、今度は目を開けたまま、エリザが鏡に向かって魔法を発動させる。
「インパクトフラッシュ!」
すると当然のようにエリザの胸が激しく発光する。
ほんとこの猫は面白いな。可愛い26歳だ。
「ア、アキ君。説明しなさい。どういう魔法なのかしら……?」
エリザは冷や汗をかきながら確認してくる。自分の身に起こった事が嘘であると言って欲しいのだろう。
「それはインパクトフラッシュ。エリザのおっぱいが光る。それだけだ。」
残念なから嘘ではないのだ。アキははっきりと現実を突きつけてやる。
「やっぱりいいいいい!アキ君!ほんと何させてくれてんのよおおおお!」
エリザが真っ赤になってアキを掴んで揺ってくる。やめてほしい。
「やめて欲しいのはこっちよ!?なんなのよこれ!」
「神秘的だろ?好きに使っていいぞ。」
「一生!絶対!二度と使わないわよ!バカなの!ねえ、アキ君はバカなの!?」
よかった。エリザは大満足してくれたようだ。教えた甲斐があったというものだ。しかしこれでミルナとエリザは素晴らしい魔法を使えようになったわけだ。ファイナルインパクトとインパクトフラッシュ。この魔法を食らった者は死ぬ。
「まあ、呆れ死ぬか笑い死ぬかのどちらかだろうけど。」
「「そんな魔法使わせないで!!!」」
さすが魔法職同士、息がぴったりだ。




