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「うぅー……疲れたですー……。」
30分くらいしたらソフィーが疲労困憊になって戻って来た。ミルナとエレンに相当説教されたらしい。まあ、放っておこう。あのエルフが全て悪い。
そんな事よりアキには1つやりたい事があるのだ。
「人間を召喚、転送できるようになったんだからな……」
そろそろ俺の猫に会いたい。だから召喚してみようと考えていた。既に時間は夕刻。エリザも学園での仕事は終わって屋敷に戻っているころだろう。
「やってみていい?」
アキが尋ねると全員がいいですよと頷く。そして名前を言うまでもなく、アキが誰を召喚する気なのか、ちゃんとわかっているようだ。
ちなみに何時の間にかリビングには全員が揃っている。まあここでアキが寛いでいると、何故かわらわらとみんな集まってくる。だからこの子達がいない事なんて基本的にはないのだが。
「じゃあ早速。」
アキはオリハルコンを抜刀し、魔素を集約。今回は魔法印は使わない。現象理解による直接召喚だ。この方法はまだ人間では試した事はないが、魔物で何度も検証した。だから問題はない。
尚、その検証はミルナ達という保護者立ち合いの元行われた。というか1人で実験すると言ったらものすごく怒られたからだ。同時に過去にした実験について全部吐かされ、その時のお話は過去最長で3時間にも及んだ。ちなみに召喚された魔物は無事アキ達の夕飯となり、これからはいつでもお肉が食べれるとルティアがはしゃいでいたのを覚えている。
「エリザ、召喚。」
正直この詠唱は必要ないが、ミルナ達に召喚するという合図を伝える為に口にした。急に人間が現れたら誰しも普通は驚くだろうからな。
「出でよ、我が猫。」
オリハルコンの剣の切っ先が発光し、召喚魔法が発動する。そして次の瞬間、リビングの一角に人影が現れた。どうやら無事成功したようだ。
「アキ君、撫でて欲しいにゃ?……こうかな、うーんなんか違うわ……。」
現われて早々なにをやっているんだ、この猫は。無事にエリザが召喚されたのはいいが、なんて声をかけるべきか一瞬迷ってしまったじゃないか。ミルナやアリア達は引き攣った笑みを浮かべているし、これはどうしたものか。
「よお、俺の猫。」
とりあえず声をかけてみた。
「にゃ……!?」
何事かと凄い勢いで振り返るエリザ。そしてアキが背後に立っている事に気付き、聞いた事のないような叫び声をあげる。
「にゃああああ!?ど、ど、どどういうことなの!何がおこったの!」
目を見開いてきょろきょろと辺りを見渡している。まあ今までエリザはミレーにいたのだ。急に風景が変わったらそんな反応をするのも当然だろう。
「召喚魔法を覚えたからエリザを召喚してみたんだ。久しぶりだな。」
アキが説明するが、未だに理解が追い付かないようで、エリザは呆気に取られている。可愛い尻尾が複雑に揺れている事からもその動揺ぶりは見て取れる。多分必死に頭の中で情報を整理しているのだろう。暫く放っておこう。
数十秒後、エリザが頭を抱えながらアキに尋ねてくる。
「うーん……?えーっと……魔法なのかしら?」
何とか現実を受け入れたらしい。思ったより早かった。
「そうだな、オリハルコンを使っての召喚魔法だ。」
「……なるほど……。さすがアキ君ね、ビックリしたわ。」
なんとなくはわかったと頷くエリザ。
「エリザに会いたくなってさ。召喚を使えるようになったから早速エリザ呼んだんだ。」
「そうなのね。嬉しいわ、ありがとう。」
エリザが嬉しそうに尻尾を振っている。ちょっと可愛い。
でも、違う。そうじゃない。
「何やってるんだエリザ。」
「な、なにかしら?」
「俺の猫なら『アキ君、撫でて欲しいにゃ?』だろうが!」
「……にゃっ!?」
さっきの痴態を見られたいた事にやっと気づいた様子のエリザ。尻尾がピーンと固まって、引き攣った笑みを浮かべている。
「な、な、なにをいってるのかしら!?よくわからないわ!」
この猫はさっきの事実をなかったことにする気らしい。そうはいくか。
「安心しろ、みんな見てたぞ。」
「いやあああああ!忘れなさい!今すぐ見た事は忘れなさい!!!」
お願いだからと必死に懇願してくるエリザ。
とりあえずこの猫が落ち着くまでは1回ミレーに送還しておこう。ここまで取り乱してると話にならん。
「エリザ転送。またねー。」
「ち、ちょっと待ちなさい!こらっ!呼ぶだけ呼んで……!」
エリザが何やら言いかけたが、彼女の姿がスッっと消えた。
「うん、楽しかったな。」
「さ、さすがアキさん……外道ですわ……。」
ミルナが恐ろしい者を見た顔をしている。他の子達もエリザが可哀そうになったのか、アキに非難の目を向けてくる。そして口々に「酷い」だの「悪魔」だの罵ってきた。いいだろう、ならば戦争だ。
「皆の事も気が向いた時に召喚してやろう。」
「「「「ごめんなさい!それだけはやめてください!」」」」
ミルナやアリア達が一斉に頭を下げる。どうやらこの戦争は一瞬で終わってしまったようだ。しかしこの子達は本当に1人の時間に何をしているのだろうか。その事を尋ねるとすぐに謝ってくるから余計気になる。あのアリアですらだ。唯一シャルだけが好きにしてくださいと言ってくる。まあさすがにシャルには召喚魔法は使わないが。
「っていうかみんなほんとに何してるの?」
一斉に視線を逸らすミルナ達。相変わらず碌でもない事をやっているらしい。
「まあ、いいけどね。さて、もっかいエリザを召喚。」
そろそろ大丈夫だろう。アキはオリハルコンを抜刀し、エリザを再召喚する。
すると今度はボーっと虚空を見つめるエリザが現れた。この猫はどうやら妄想の真っ最中らしい。
「嬉しかった……えへへ、アキ君……。」
「よお、俺の猫。楽しそうで何よりだ。」
アキが声をかけると、エリザが石のように固まった。そしてしどろもどろになりながら説明を始める。
「ア、アキ君……。今のは……えっと。」
「聞いていたぞ。可愛い猫だな。」
「ばかー!だからなにしてんのよ!急に召喚しないでよね!」
顔を真っ赤にして部屋の隅っこで丸くなるエリザ。
「あれで終わりのわけがないだろうが。」
「うぅ……恥ずかしいじゃない。」
「エリザ、今までの経緯話したかったんだよ。」
とりあえずアキはエリザと別れてからの経緯を掻い摘んで話す。
「そのままでいいから俺の話を聞け。」
最初は隅っこで丸まっていたエリザだが、説明が終わるころにはすっかり落ち着いたのか、いつの間にかソファーに移っていい子にアキの話を聞いていた。まあエリザはいい子というような歳でもないのだが。
「なるほどね……でも……。」
エリザはむすっとした顔でアキを見つめてくる。
「なに?」
「また無茶して!おねーさんは怒ってるのよ!」
イリアの事をなんとかしようと1人で動いた事を怒っているらしい。
「へー。」
「ちょっとは怯えなさい!私はおねーさんなのよ!」
エリザは尻尾を逆立てて怒るが、そんな事を言われても困る。この子のお説教はまったく怖くない。むしろ可愛い。
「はいはい。怖い怖い。」
「適当に返事しないの!そこに座りなさい!」
「いやだにゃ。」
「け、喧嘩売ってるのね!そうなのね!もう許さなわいよ!」
適当にエリザで遊んでいたら、シャルが不思議そうに手を挙げていたのに気づく。
「どうしたのシャルちゃん?」
「あの、質問いいですか?」
「うん、なに?」
そういやシャルはエリザと会うのは初めてだ。ちゃんと紹介してなかったと反省する。多分質問というのもエリザについてだろう。
「アキさん、そのおばさんは誰ですか?」




