15
「アキさん、イリア、私達の答えは……」
ミルナが代表して口を開く。その口調に迷いはない。
「私達は……2人といます!選べませんわ!」
ミルナがはっきりと宣言する。
「まさかの選択肢!?おかしいよね!」
その答えは予想していなかったのか、イリアがなんでそうなるのと突っ込む。
「当然ですわ。私達は2人が大好きです。選ぶなんて出来ませんもの。まあアキさんは選ばせようとしてたみたいですけどね?」
ミルナがうふふと笑う。思い通りにはさせませんよと不敵な笑みを浮かべている。
「そうですー!思い通りにはさせません!」
「そうよ!つまりアキ!あんた私達が全員一緒にいられるように何か考えなさい!」
「うんうん!それがアキの仕事だよね!」
ミルナに続いてソフィー、エレン、レオが「どうだ」と勝ち誇った顔で宣言してくる。見事なまでのしたり顔だ。
それを見たイリアはあははと笑い始めた。呆れを通り越して可笑しくなってきたらしい。
「ほんと……相変わらずバカだね!」
「ああ、やっぱ馬鹿だな。」
そればかりはイリアに激しく同意だ。
「「「「ちょっとー!」」」」
馬鹿と言われたミルナ達がぶーぶー文句言ってくる。さっきまでのドヤ顔はどこにいった。相変わらず表情がころころと変わる子達だ。
「まあどうせアリア辺りの入れ知恵だよね。余計な事話したんだろ。」
「はい、さすがアキさん、よくおわかりで。」
アリアがすいませんと頭を下げてくる。
「さあアキさん何とかしてあげてくださいね?」
「そうだそうだ!いつも思い通りにはさせないのだ!」
セシルとエリスも一矢報いたと意地悪な笑みを浮かべている。
ただベルとルティアだけは少し複雑な顔だ。
「あの……アキさん?あまり動揺してませんよね……?」
「アキ、驚かない?なんで?」
2人の言葉にミルナ達がハッした表情を浮かべる。意表をついてやったはずなのにどういう事なのと顔を見合わせている。
「あ、あの、アキさん……一応お聞きしますが……まさか……何とかしてくださるのですの?」
嫌な予感がしたのか、ミルナが恐る恐る確認してくる。
「え?うん、そりゃするよ。」
アキがしれっと返事をする。それがこの子達の望みなら、アキはそれを叶えてやるまでだ。しかしアキの返事を聞いたミルナ達は、喜ぶではなく、何故か絶望の表情を浮かべている。アキの意表を突けなかったのがそんなに悔しいのだろうか。
「ち、ちょっと!アリア、どういう事よ!全然仕返しになってないじゃないのよ!」
やはり相当悔しいらしい。エレンがアリアになんでよと鬼の形相で詰め寄っている。そんなうちの可愛い猛獣の質問にはアキが代わりに答えてやろう。
「アリアが余計な事言うのは想定済みだ。それにミルナ達ならそう言うだろうって思ってた。だってミルナ達だもん。」
彼女達が自分の事を理解してくれているように、アキも彼女達の事はよくわかっているつもりだ。だからミルナ達が取る行動なんて大体想像がつく。
「じ、じゃあなんであんなに私達を構ってたんですの……?」
両手で顔を塞いで恥ずかしそうに俯いているミルナが呟く。あの勝ち誇った顔をしていた自分が恥ずかしいのだろう。
「それに寂しそうにしていたのだ!」
エリスがあれはどういう事だったのだと不思議そうな顔で尋ねてくる。彼女に寂しいと愚痴っていたあの時の事を言っているのだろう。確かにエリスの言う通り、寂しかったのは事実。うちの子達の事をいつもより余計に構っていたのも事実だ。
「ミルナ達ならそう言うとは思っていた。けどイリアを選ぶ可能性だってあるだろ?それに俺はそっちの方がいいと思ってたしね。だからミルナ達が『両方』って選択肢をが選ぶとは限らない。絶対の自信はなかった。」
ミルナ達なら両方を選ぶと予想していたとはいえ、この世に絶対はない。だからミルナ達がいなくなる可能性は十分にあった。そう考えると切なくなってしまったのだから仕方ないだろう。ついつい悪い方向にばかり物事を考えてしまうのは人間よくある事だ。だからそうなっても悔いのないよう、ミルナ達を構ったりしていた。それだけの事だ。
「あんたややこしいのよ!ばかー!本気で悩んだのよ!」
エレンが叫ぶ。少し涙目だ。
ミルナ達に酷な選択肢を与えたのはアキもわかっている。でもこれは考えて貰わなければならなかった事だ。この子達自身が決めないと駄目な事だから。そしてそれだけ苦悩して出した答えが「アキとイリア」なのであれば、誰も否定できない。
「悪かったとは思う。でもミルナ達が出した答えは嬉しい。ありがとな。」
「う、うるさい!あんたなんか知らないんだからっ!」
エレンが頬を染めてそっぽを向いてしまう。
「でもミルナ達がその答えを出してくれて一安心だよ。」
そんなアキの言葉にミルナ達は「本当にしょうがない人」と苦笑する。そしてどこか安堵の表情を浮かべ、目には微かに涙が見える。アキが何とかすると言った事で彼女達の緊張の糸が一気に切れたのかもしれない。
「確かこうだったっけ。『思い通りにはさせません!』」
せっかくなのでさっきのソフィーの真似をしてみた。しんみりした空気は嫌いだ。
「やめてー!アキさんそれはやめてくださいですー!」
予想通り顔を真っ赤にして叫ぶソフィー。面白い。
「リオナはこうだっけ。『それがアキの仕事だよね!』」
次はレオだ。彼女のあのしたり顔は可愛いかった。
「アキのばか!何でやるの!やめてよね!」
恥ずかしそうに尻尾を抱きかかえて自分の顔を隠すレオ。表情を隠す為にも使えるとはなんとも便利な尻尾だ。
エレンとミルナは「やめて、弄らないで。こっち見ないで」と視線を逸らしてきた。セシルやエリス達もだ。ちなみにアリアだけは涼しい顔をしている。さすがうちの腹黒メイド。多分アリアは「アリア自身が余計な事を言うだろうとアキが予想している事まで予想」していたに違いない。アキが指摘した時も平然としていたのが何よりの証拠だ。
「あはは。鬼畜だねー、アキ。」
イリアが渇いた笑い声を上げる。
「この子達可愛いから弄りたくなるんだ。」
「まあね。その気持ちはわかるよ。それで、どうするつもりなのかな?」
イリアが改めて尋ねてくる。
そろそろ話を戻そう。いい頃合いだ。
そもそもこういう展開になるだろうという事はある程度想定していた。
「イリアが何者かという話はアリアから聞いてると思うから割愛するね。それでイリアを転移させなかった理由だけど、ミルナ達と会わせたかったのが1つ。でも1番の理由は異世界の状況がわからないからだ。」
アキとしてはイリアを別世界へ送るつもりなんてさらさらなかった。理由としては単純だ。危険すぎるから。
「どういうことですか?」
ベルが首を傾げる。
「イリアは観察者でありながら、向こうの世界の事を一切知らない。そして連絡も何もないと言っていた。」
イリアの世界から何の接触も無い事は予想していた。この世界の魔獣制度が290年も放置されている事から予測できる。それに連絡がないからこそ、イリアは故郷へ渡る為、無茶な行動を起こしていたのだ。
もしイリアが何かしらの情報を知っていたならまた話は別だが、何も知らない以上、イリアを準備もなしに送還する気は無い。たださすがに異世界の事をここまで全く知らないとはさすがに思わなかったが。さっきそれを聞いて尚更イリアを1人で旅立たせる訳にはいかなくなった。
異世界の状況が本当に何もわからないとなると、何が待っているかの予測が一切出来ない。戦乱真っ只中かもしれない。世界自体が滅んでいるかもしれない。もしかしたら普通に平和でこの世界の実験の事なんて忘れ去られているかもしれない。平和な世界だったなら何よりだが、そうでない場合、どんな危険が潜んでいるかわからない。
「そんな危険な事をイリアにさせられない。」
「でも!私はそれでも行きたいんだよ!いいっていったよね!」
「うん、わかってる。だから……アリア。」
アリアに声をかけ、彼女が背負っていた荷物を受け取る。予めアリアに持ってくるように頼んでおいた。そしてアキはそれをイリアに渡す。
「アキ、これは?」
「1週間分の食糧、生活必需品。それを持って行ってこい。ただし1週間だけだ。そしたら一度こちらへ呼び戻す。向こうの状況を俺に教えろ。身の振り方を考えるのはそれからでも問題ないだろ?」
「あ……そういうこと?」
アキがイリアに同行する事も考えた。しかし向こうの世界に魔素が存在するのかは不明。その場合は片道切符になってしまう。アキがこっちの世界でオリハルコンを持ってさえすれば、いつでもイリアを呼び戻せる。それならば一度調査と言う名目でイリアを送り込み、色々調べてもらってから今後の事を考えればいい。そういう結論に達した。というかそれしかないだろう。
うちの子達がアキを選ぼうがイリアを選ぼうが、イリアに関してはこうするつもりだった。まずは1週間。それでイリア自身にどうするかを決めて貰う。もしイリアが自分の故郷に行く事を選び、ミルナ達もイリアを選んだら、1週間後にイリア共々改めて転移させるつもりだった。まあ結局あの子達はアキとイリアの両方といたいと言ったので、その必要はなくなったが。
兎にも角にも、まずはイリアに調べてもらう。その結果、イリアの世界が平和だとわかれば、アキも物見遊山しに行くのもいいかもしれない。戦乱の世の中で、イリアが何か助けを求めてきたら、助けてやればいい。イリアの大事な故郷だし、それくらいの力は貸すつもりだ。
「それにこの方法なら常にと言うわけにはいかないが、イリアと俺の両方といられるだろ?」
イリアがこちらの世界を選ぶなら、ミルナ達はアキとイリアといられる。向こうの世界を選ぶのであれば、時折アキがイリアをこっちに召喚してやればいい。
「それにイリアをただ送還して終わりとは出来ないんだよね。だって向こうの世界の状況を知らなければこの世界の魔獣制度は廃止できないからな。何が起こるかわからない状態でベルに改革を進めさせるわけにはいかない。」
だからまずはイリアを送り込んで向こうの世界の状況を確認する。滅亡しているならイリアはこちらの世界で暮らせばいい。平和なら好きな方を選べばいい。
そしてそれと同時に魔獣召喚を廃止できるかどうかを確認する。干渉が無いと言い切れるのであれば、すぐにでも廃止出来る。言い切れない場合は、アキ自身が向こうの世界に乗り込んで色々と動く必要だってあるかもしれない。
まあイリアの事にしろ、魔獣制度にしろ、何か問題が起こっているのであれば、アキがなんとかする。それだけだ。
「どうだ、これで文句あるか、イリア?」
「あー……もう……ないよ!完璧だよ!!!悔しい!!!」
イリアが頬を膨らませながら白旗を上げる。
「そして俺の嫁になるんだろ?」
「なんでかな!?だからおかしいよね!なんでそういう話になるのかな!?」
堂々とミルナ達の前でイリアに嫁なれ宣言をする。普段なら「お話ですー!」と言われるところだが、イリアに関しては嫁にして来いと言われているので、なんら問題はない。むしろ大問題なのは「なんで」と叫んだイリアの方だ。
「あれ、おかしいですー。イリアなんでです?なんでお嫁さんにならないですー?」
ソフィーが不思議そうに首を傾げる。
ほら、うちの駄エルフが食いついただろう。頑張れイリア。
「おかしいのはソフィーだからね!?なんで『アキさんの嫁になって当然です』的な顔してるのかな!相変わらずこのアホエルフは!私の意思は無視なのかな!?」
イリアがソフィーに必死に文句を言っている。ただ基本的にこの暴走エルフは無敵なので、何を言われても動じないし、平然としている。さすがのイリアも相手が悪い。
「えー。当然ですよー。イリアは黙ってアキさんの女になればいいんですー!」
さすがソフィー。頭のおかしい事をさも一般常識ように言い放つあたりが凄い。しかも悪意や悪気があるわけでもなく、純粋に本気で言っているので余計手に負えない。
「なんでなのかな!?これ私がおかしいのかな!?」
何を言っても暖簾に腕押し状態のソフィーに頭を抱えるイリア。段々可哀そうになってきたので、そろそろ助け舟を出してやろう。
「この駄エルフが。頭のおかしい常識を他人に押し付けるな。」
アリアから銀のトレー受け取り、うちの馬鹿エルフをおもいっきり殴っておく。
しかしさすがアリア。よくもまあいつも絶妙のタイミングでこれが出せるものだ。本人曰く「メイドの嗜みです」との事らしいが……絶対違う気がする。
「ひゃっ……うぅ……日に日にアキさんの容赦がなくなっていくですー……。酷いですー……。」
「自業自得だ。反省しろ。」
この暴走エルフを止めるにはこれくらいが丁度いい。むしろ最近これでもすぐに復活してくるから困ったものだ。
「相変わらずバカね、ソフィーは。」
エレンがやれやれと呆れたような表情を浮かべている。
「まあでもイリアがアキさんのお嫁さんになるのに別に文句はありませんわ。」
「そうだね、イリアは特別だしね。」
今度はミルナとレオがイリアを早く落とせと遠回しに勧めてくる。オブラートに包んではいるが、やってる事がソフィーと一緒だ。結局イリアの意志を完全無視している。やはりすごいな、うちの子達は。
「イリア、この4人の相手を1人でするのは大変なんだ。わかれ。」
イリアならわかってくれるだろう。この子もミルナ達と旅をしていた時は間違いなく苦労していたはずだ。
「いや、わかるよ!?むしろ扱い上手すぎるくらいだよ!びっくりだよ!」
なんでも暴走エルフはああやって止めればいいのかと感心したらしい。
「まあ、嫁になれと言うのは冗談だ。」
「そ、そう……なのかな?」
そもそも嫌がるイリアを無理に落とそうとは思わない。彼女がそれを望んでないなら、強制する気はない。ただイリアが望むなら、アキは喜んで受け入れよう。それがミルナ達の願いなのだから。なんだかんだアキはミルナ達には弱い。この子達に頼まれたら首を横に振るのは難しい。
「あら、イリアは意外と満更でもないようですわ。」
「アキ!後少しよ!何時もの調子でイリアを落としなさい!」
「アキ、僕は嬉しいよ!」
ミルナがふふふとイリアの様子を見て笑い、エレンがその調子よと偉そうに命令してくる。そして「いつもは悲しいよ?」と言うはずのレオが今日は尻尾を振って喜んでいる。
これはなんか新鮮だ。いつもはすぐお話とか言ってくるくせに、イリアに関しては落とすように全力で勧めてくるのだから。
そしてとりあえずエレンだけは引っ叩いておいた。何が「何時もの調子」だ。失礼な。そんな言い方したら毎度毎度自分が見境なく女性を落としているように聞こえるだろうが。
「え、落としてますよ?」
セシルがアキさんはバカなんですかと真顔で指摘してくる。いい度胸をしてる兎だ。喧嘩を売ってるらしい。
ムカついたので兎耳を掴んで引っ張ってやる。
「この耳か。ふざけた事を言ったのは。」
「まってええええ耳は!耳は言ってないからあああ!ひっぱらないでってばあああ!」
「落としてないだろ?落としてないって言え。」
「お、落としてますから……!兎拾ってくるし……!」
「まだ言うか、この駄兎め。捥ぐぞ。」
「も、捥ぐのはだめええええ!」
結局セシルは観念したのか「アキさんは滅多に女性を落としません。とても誠実な人です。」とちゃんと言ったので許してやった。かなり棒読みだった気がしなくもないが、まあいいだろう。
「それでイリアさん、いつお嫁にきますか?今日ですか?明日ですか?」
アキとセシルがそんなやり取りをしている間に、いつのまにかアリアがイリアを問い詰めている。こっちはこっちで何をやっているんだ。しかしとりあえずその圧迫面接みたいなのやめなさい、イリアが可哀そうだから。
「ち、ちょっと!私は別にアキの事は!そ、その!」
必死に否定しようと、アリアにあーでもないこーでもないと説明しているイリア。これはまた助け舟を出してやる必要がありそうだ。
アリアにその辺にしておけと目配せしつつ、イリアに声をかけてやる。
「イリア落ち着け。俺の事は別に無理に慕わなくてもいい。ミルナ達の言う事なんて聞く必要はない。それはイリアの自由だ。まあイリアに慕われたら俺としては嬉しいけどね?それよりも……今はやる事があるだろう?」
アキの言葉に素直にコクリと頷くイリア。ただ耳まで真っ赤にしているが。
そんなイリアの様子を見たミルナ達は、ニヤニヤとアキとイリアを見つめている。あの視線はムカつくが、まあ何も茶々をいれて来ないので許してやろう。
とりあえず話もまとまった。そろそろイリアの転移に移るとしよう。
「よし、じゃあイリアを転移させるよ。1週間後、呼び戻す。あ、そうだ。ベル、それまでにオリハルコンを出来る限り用意してくれないか?召喚は俺の屋敷でやるからそこへ持って来てくれ。」
「わかりました。準備します。」
ベルがすぐに手配しますと頷いてくれる。
「って、あれ!?それエスペラルドの王女様だよね!」
イリアが驚いた声を上げる。今更気づいたらしい。
「はい、私はアキさんの女です!」
「ええい黙れ、この腹黒王女。これ以上話をややこしくするな。」
ベルを引っ叩いて騙さらせる。何故それをわざわざ今ここでアピールする必要があったのか。
「いや、もうアキなんか凄いね!」
イリアがくすくすと笑う。どうやらもう色々吹っ切れて楽しくなってきたらしい。
「じゃあ一週間後にね!」
「ああ、荷物の中に調査して欲しい内容はいれてある。あまり無理はするなよ。」
「うん、わかった!じゃあお願い!」
アキは改めて魔法印を修正する。下着召喚ではなく、ちゃんとイリアを別世界へ転送出来る術式に。これで大丈夫のはずだ。後はちゃんと成功する事を祈るばかり。
ちなみにミルナ達には言っていないが、獣を使っての召喚・送還実験はこっそり行っておいた。イリアを転送する事になると予想していたからだ。たださすがに人体実験までは出来なかったので、一抹の不安は残る。でもまあ魔獣で問題ないのだから人間でも大丈夫だろう。ある程度の確証が持てるくらいまでは実験を行ったし、多少の危険はイリアも承知の上。イリアがやってくれと言っている以上、アキも腹を括るしかない。
「じゃあ今度はベル達の下着をだな……。」
「「「やめなさい!!!」」」
腹を括って宣言したのに、速攻でベル、エリス、セシルに止められ、めちゃくちゃ怒られた。
大体こんなのは場を和ます為のお茶目な冗談だ。
「うそいいなさい!アキさんは止めなければ本当にやるでしょう!」
ベルの指摘にそうだそうだと頷くエリスとセシル。
さすがアキの事をよくわかってる。確かに止められなかったから、やってたかもしれない。
しかしまあ……茶番はこれくらいでいいだろう。あまりしんみりし過ぎるのは嫌だ。イリアには楽しく旅立ってもらいたい。
「じゃあイリア、今度こそいってらっしゃい。」
アキの言葉を皮切りに、今度はミルナ達が一斉に駆け寄って来た。そして口々にいってらっしゃいと叫ぶ。
「イリア!気を付けてくださいませ!」
「まってますー!」
「頑張りなさいよ!」
「イリア、色々お話聞かせてね!」
最後にちゃんと別れの挨拶が言いたかったのだろう。この子達らしい。
「うん!ミルナ、ソフィー、エレン、リオナ、すぐ戻るからね!待っててね!」
彼女達の言葉にイリアは力強く頷き、いってきますと微笑む。
それを合図にアキはオリハルコンを魔法印へ突き刺す。魔法が即座に発動し、イリアを眩い光が包んだ。
そしてイリアは今度こそ自分の故郷へと旅立った。




