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「えええええ!なんでかな!?私まだいるんだけど!?」
イリアが叫ぶ。
まあ彼女が驚くのも当然だろう。魔法印が光り輝き、ちゃんと魔法は発動した。だがその光が収まっても、イリアは転送されず、魔法印の上に突っ立ったままなのだから。
「なーんちゃって。」
「「「「はっ?」」」」
ミルナ達が間抜けな声を出す。何が起こったのか理解出来ていないようだ。仕方ないのでアキが丁寧に説明してやろう。
「イリアを転送するんじゃなく、ミルナ達の下着を召喚してみました。」
そう、イリアは先程から大量の色とりどりの下着に囲まれているのだ。まるで美少女がお花畑にいるかのよう。まああれは花でもなんでもなく、ただの下着なんだが。そう考えると何ともシュールな光景だ。
「「「「アキ!!!ほんと何してんの!!!!」」」」
やっと何が起こったのか理解したミルナ達。イリアに目もくれず自分の下着を必死にかき集めている。しかしよくもまあこれだけ下着がある中で的確に自分のだけを回収出来る物だ。ある意味尊敬に値する。
「そんなとこで尊敬しないでくださいませ!?」
「アキぶっ殺す!!!何してくれてんのよ!死ね!!!変態!!!」
ミルナとエレンが自分の下着を必死に服に押し込みながら叫んでいる。
「アキさんのばか!何してんですー!」
「アキ、僕は悲しいよ!!!ってそれどころじゃない!こっち見ないでよね!」
ソフィーとレオも大慌てで下着を隠そうとしている。
ただ服にそんなに詰め込めるはずもない。結局隠すところがなくなり、全員手の中で下着を持て余している。美少女達が下着を両手に握り締めているというなんとも滑稽な光景が広がっている。
「ねえ、アキ!?私まさかの展開についていけないんだけど!ねえ、アキ!」
イリアはイリアで引き攣った笑みを浮かべている。何やら不満があるらしい。
「不満しかないよね!?当たり前だよね!?だってせっかくいい雰囲気でサヨナラ言ったのに、私まだいるし!何故かこの子達の下着に囲まれているし!久々のちゃんとした再会なのに私に目もくれないでみんな下着集めているし!これはなんなのかな!?」
怒ればいいのか、悲しめばいいのか、自分の感情をどうすればいいのかわからない様子のイリア。喜怒哀楽が迷走している。面白い。
「まあとりあえずあれだな。かっこつけて『さよなら』って言ったのに。イリア恥ずかしい。」
「言わないでよね!?ほんとやめてよ!ばか!おに!あくま!!!」
イリアが顔を真っ赤にして叫ぶ。結局悲しみより、怒りより、恥ずかしさが勝ったらしい。
しかしそれにしてもなんて騒がしい再会だろう。久々にイリアと会ったのだからもっと感動的なものにして欲しいものだ。
「「「「あんたのせいよ!!!」」」」
何故か全員に怒られた。
まあとりあえずミルナ達の下着を元あった場所へと送還しておいてやる。
「元あった場所に適当に転送しておいた。」
「なんで適当なんですの!?おかしいですわ!」
ミルナがやめてくださいと叫ぶ。
「リビングにしておいてもよかったんだが?」
「それこそやったら殺すわよ!!!」
エレンが今にも飛びかかってきそうな勢いだ。
「まあ落ち着け絶壁。」
「その呼び方するなあああ!落ち着かせる気ないでしょうが!!!」
エレンが猛獣の如く唸る。
とりあえずこの子達のおかげでしんみりとした空気は消えた。これで落ち着いて色々と話が出来るだろう。あの状況だと感情的になってミルナ達やイリアは冷静な判断が出来ない。そう思い下着を召喚してみた。絶賛大不評だったが。
ちなみにイリアだけはどこか気まずそうな表情だ。まあ彼女はミルナ達と会う気はなかったのだから複雑な心境になるのも仕方ない。
「まったくもう……アキさんはほんとに……。それでなんでこんなことをしたのか説明してくださるんですわよね?」
ミルナが頬を膨らませる。
「説明も何もない。そもそも俺がイリアをミルナ達に再会させずに送り返すわけないだろうが。冷静に考えろ。俺は今までミルナ達の為に動いてたんだからな。」
そう何も難しい事はない。ただそれだけの事。いくらイリアに転移を頼まれたとしても、ミルナ達が「待って」というなら待つ。イリアの頼みよりうちの子達の頼みが優先。当然だろう。
アキの説明にミルナ達は呆れ顔だが、どこか納得したような表情だ。
「なるほどですわ……。でも下着を召喚しないでくださいませんか……!?」
だがあの状況でイリアを納得させる為にはとりあえず魔法印を発動させる必要があった。もっと早くミルナ達が到着してたなら、状況も違っていたとは思う。下着召喚の魔法印だっていざという時の保険で用意していただけだ。ただミルナ達の到着が思っていたよりも遅く、本当にぎりぎりだったのだ。なのであれは仕方なく発動させただけ。そう、仕方なかったのだ。
「本当ですの!?本当に仕方なかったんですの!?」
「そうだけど?」
「でも召喚するのが下着である必要がどこにあるんですの!?」
「何故だ。召喚と言えば下着だろう。」
「そんなわけありませんわ!その認識、即刻改めてくださいませ!!!」
それだけはどうしても納得できないらしい。理解して貰えないのが甚だ遺憾だ。
「一生理解したくありませんわ!!!」
ミルナ達が変態、破廉恥と罵ってくる。酷い。ただ文句をいいつつも、イリアがいなくならなくてどこかホッとした表情を浮かべているミルナ達。
一方のイリアは……大層不満気な顔をしていた。
「なんでかな!?さっきアキは『イリア、1人でもがんばれよ』とか言ってくれたよね!」
「ああ、あれは嘘だ。」
「なんでよ!?おかしいよね!?」
イリアと会いたいというのがミルナ達の望みだ。アキはその為に必要な事をしたまで。だから何もおかしくはない。まあイリアにとっては到底納得のいく事ではないだろう。それに関しては申し訳ないと思う。
「しょうがないだろ。ミルナ達の為だ。」
「ず、ずるい……それ言われたら……!」
ミルナ達の事を大事に想っているのはイリアも一緒。彼女がアキの立場だったとしても、きっと似たような事をしたはず。だから納得はいかないが、あまりアキに文句を言えない。そんな複雑そうな表情を浮かべているイリア。
「はぁはぁ……やっと追いつきました。」
背後から聞きなれたうちの王女様の声がする。振り返ると、そこには息の上がったベルが立っていた。そして彼女の側にはセシル、アリア、エリスの姿もある。
さすがに彼女達ではミルナ達のペースにはついていけない。それでも彼女達なりに頑張ってここまで必死に走ってきてくれたようだ。まあエリスに関しては護衛を兼ねてベル達に合わせたのだろう。さすがエリス。よく気が利く。
とりあえずこれで全員揃った。
「ルティアもいるんだろ。出ておいで。」
「うん、アキ。」
タタタと洞の影から姿を現し、アキに抱き着くルティア。
「よし、これで全員だな。」
そろそろ真面目な話をしよう。アキがそう告げると、わかりましたと頷くミルナやアリア達。イリアも渋々ながらも頷いてくれた。もうこうなった以上、アキの説明を聞いてから考える事にしたらしい。
「ミルナ、ソフィー、エレン、リオナ。どうするか決めたんだよね?ここに残るのか?それともイリアと行くのか?」
アキがミルナ達に問う。ここにこの子達がいるという事はそう言う事だ。まずはそれから確認する。
ただ彼女達が何か返事をする前に、イリアが反論してくる。
「ダメ!みんなはアキと残った方がいい!」
「イリア、俺の意見は逆だ。ミルナ達はイリアと行くべきだ。俺にはアリア達がいるからな。1人にはならない。でもミルナ達がこっちに残るとイリアは1人になってしまうだろ。俺はそれが嫌だ。」
アキが即座に反対の意見を出す。イリアならそう言うのはわかっていた。だがそれはアキとて一緒。
「でも!でも!」
「イリア、それはミルナ達が決める事だ。それでいいだろ?」
折衷案を提示してイリアを諫める。というかそれしかないだろう。アキとイリアでは結論がでない。それに何よりこれはミルナ達自身がどうしたいかだ。それをアキやイリアが決めるわけにはいかない。
「わかった……それならいいかな。」
ミルナ達が決めるのであれば文句はないと頷くイリア。
「恨みっこなしな。ミルナ達を想う気持ちは一緒だ。」
ミルナ達が決めた道ならば、きっとそれが最善だ。アキやイリアはそれを受け入れてやればいいだけ。2人は似た者同士なのだから、考え方もきっと一緒だ。
「そうね、うん。確かにそうかな。わかった。」
アキとイリアは改めてミルナ達の方を見る。
いよいよ全ての決着がつく。少し寂しいがこれで終わり。彼女達は果たしてどちらを選ぶのか。これがミルナ達といられる最後の時間になるのだろうか。その答えを静かに待つ。
「アキさん、イリア。私達の答えは……」
ミルナが代表して口を開く。その口調に迷いはない。




