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「やれやれめんどくさい案内人だった……。」
ソファーに腰を下ろし溜息をつく。今日もリビング迄ついてきて居座られたらどうしようかと思ったので一安心だ。
「といいつつも、嬉しかったんじゃないですかー?もっかいお話ですかねー?」
ソフィーが頬を膨らませる。今散々お話されたとこなのに、まだするつもりか。
「お話はもういいから。それに俺にはソフィー達がいるからあの子に言い寄られても別に嬉しくない。何回もそう言っただろ。」
そう言ってうちのエルフを膝の上に座らせてやる。すると目を細めて嬉しそうにもたれかかってくるソフィー。
今日は特別。好きなだけ甘えさせてやるつもりだ。というよりアキの気が済むまでこの子達を構いたい。
「ミルナ、エレン、隣に座りなさい。リオナもおいで。」
ベルはずるいですと文句を言ってくるが、今日ばかりは我慢してもらう。アリア、セシル、エリスは全部わかっているので何も言ってこない。
いよいよ明日、イリアと決着をつける事になる。ミルナ達とこうやって過ごせるのも今日が最後かもしれない。だからこそ悔いのないように彼女達との時間を過ごしたい。
「いよいよ明日だな……。上手くいくといいけど。」
アキが小さくそう呟くと、エレンがそっと左手を握ってくる。
「大丈夫よ、だってアキだもの。」
エレンが穏やかな目で見つめてくる。彼女のオッドアイが美しい。安心しきったそんな表情だ。
「ええ、そうですわ。必ずうまくいきますわ。今度こそ本当のメルシアです。」
ミルナが右手を握ってくる。彼女の吸い込まれそうなアクアブルーの瞳を見ているとどこか心が安らぐ。
この子達はイリアと以前の関係に戻れる事を疑っていない。
「僕もそう思うよ。ほらアキ、尻尾だよ。」
レオが自慢の尻尾をぱたぱたさせて撫でろと催促してくる。今度はレオを膝の上に乗せてやる。彼女のもふもふの尻尾がとても温かくて心地いい。
「アキさん、イリア、私達の全員でメルシアですー!なんならイリアを娶ってもいいですよー!」
ソフィーが特別ですと花が咲いたように笑ってくれる。可愛い。アキが大好きなソフィーの笑顔だ。
「そうだな。全員でメルシアだ。」
アキもそう思う。本当の意味でメルシアになれたらと。だがアキが抜けてMERSIに戻るかもしれない。イリアがいなくなってMERSAになるかもしれない。
どう転ぶかはまだわからない。だが何かしらの決着は明日つける事になる。
「ミルナ、ソフィー、エレン、リオナ。」
4人の名を呼ぶ。
「はい。」
「はいー!」
ミルナとソフィーが元気よく返事をしてくれる。
「な、なによ!」
「どうしたの?」
エレンが恥ずかしそうに、レオは首を傾げながら返事をする。
「大好きだよ、いや愛してるよ。この世界にきて本当によかった。」
アキは初めて自分の気持ちをちゃんと口にした。大好きとか慕っているとかではなく、愛しているという言葉を使って。
「どうした、そんな狐につままれたような顔をして。」
うちの子達がポカンと口を開けて驚いている。何を言われたのか一瞬わからなかったようだ。だがすぐに我に返り、手を胸の前でぎゅっと握り締め、嬉しそうに笑うミルナ達。
「ええ、私もお慕いしております。」
「私もです!愛してますー!」
ミルナは少し涙目で、ソフィーは満面の笑みで。
「わ、私もよ!いちいち言わせないでよね!」
「嬉しい、僕、いや私もアキが大好きだよ。」
エレンは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。レオも感極まったのか涙目だ。
「ありがとう、これからもこんな俺をよろしくね。」
アキは最後の最後に少しだけ嘘を吐いた。
「やれやれ……らしくなかったな。」
自室に戻ったアキは小さく呟く。
流石に借りているこの屋敷に主寝室などはなく、ミルナ達と同じ個室だ。まあそれでも十分に広いので不便はしていないが。
「あそこまで言ったらばれる可能性だってあるのに、何やってるんだか。」
アキはベッドに横になり、少しだけ感傷に浸る。
幸いにもここ数日はミルナ達を過剰に構っていたからか、そこまで不自然には思われなかった。だが察知される可能性だって十分にあった。偶々気づかれなかっただけだ。実際アリアやセシルは気付いていた。
「でもまあ……仕方ないよな。」
これが最後かと思うと自分の感情が上手く制御出来なかった。ミルナ達に何か言わなきゃと思い、つい出たのがあの言葉だった。
「余計寂しくなるだけだっていうのにね。」
ミルナ達は幸せそうに笑っていた。それが何よりの救いだ。
ただアリア、セシル、エリスは悲しそうな、どこか辛そうな、表情を浮かべていた。特に全てを知っているアリアは泣きそうになっていた。それでも何も言わず、黙っていてくれたのは、アリアなりの、彼女達なりの、気遣いだ。
「ルティア。」
アキが呼ぶと、ルティアは瞬時に姿を現す。外套は羽織っていない。
「アキ……大丈夫?」
タタタと駆け寄り、ベッドで横になっているアキの隣に添い寝してくれるルティア。小さな体でアキをそっと抱きしめてくれる。赤子をあやすように優しく。
「ルティア、明日は予定通りに。アリアにも伝えておいて。」
「うん、わかった。それより答えて。大丈夫?」
叱るような声色で聞いてくる。どうやらルティアは明日の計画どうこうより今のアキが心配のようだ。
「多分。でも寂しいから今日は一緒にいてくれ。」
今日くらいは彼女の優しさに甘える事にしよう。
「うん。わかった。ずっといる。」
ルティアはそれ以上言葉を発する事はなく、優しく抱きしめてくれる。
少しは気持ちが落ち着いたのか、急に気怠さと眠気が襲ってくる。きっと緊張の糸が切れたのだろう。
そっと目を閉じ、ルティアの温もりを感じる。
「アキ、頑張れ。頑張れ。」
ルティアの声が聞こえてくる。彼女の優しい声が心地いい。
「うん……頑張る。」
そんなルティアの胸の中でアキはいつの間にか眠りについていた。




