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「あれ、みなさんどうしたんですか?」
背後から声がするので振り返ると、ベルが不思議そうに首を傾げながら立っていた。アキ達は今リビングではなく、2階へ通じる階段があるメインホールに来ている。王城から戻ったベルが玄関を入ったらメインホールにアキ達がいたので驚いたようだ。
「ベル、おかえり。」
「はい、アキさん。ただいまです!」
嬉しそうに返事をするベル。アキに出迎えて貰えた事が嬉しいようだ。
「それでここでなにを?」
「ああ、宝探しゲームをしてた。俺が隠したものを見つけたらご褒美。」
するとご褒美に興味があったのか、ベルもやりたいですと声をあげる。
「でもこれうちの子達のお題だからベルには別のを考えようか。」
「わかりました!ところで皆さんは何を探しているんですか?」
「うん?ああ、俺の月時雨。」
ベルにゲームの説明をする。暗号を解いたら月時雨が見つかるようになっているのだと伝える。するとベルは何かに気づいたのか、気まずそうに笑う。
「えーっと……そ、そうなんですね?」
「王女様!何かわかったんですかー!教えてくださいー!」
そんなベルの様子に気付いたソフィーが早速ベルに詰め寄る。だがミルナはベルには聞くなと必死にソフィーを止める。
「えー、なんでですー?教えてもらえるならやったーです!」
「悔しいじゃないですの!自分で解きたいとは思いませんの!?」
「見つかればなんでもいいですー!」
なんともまあ宝探しには向かない性格だ。いや積極性があると言う意味ではソフィーは向いているのかもしれない。でも楽しもうとは一切思わないらしい。そういう意味ではアキが考えたゲームが無意味になるのでムカつく。この駄エルフあとでしばく。
「まあ……別に私に聞いてはダメというルールは無いようですし……といいますか月時雨ですよね?」
ベルが念の為に確認する。本当に探しものが月時雨なのかと。当然ミルナ達はそうだと頷く。
するとベルは尚更気まずそうにしながらアキを見てくる。
「それならアキさんの腰に差してありますけど……。」
まあベルの反応も当然だ。何故なら最初から月時雨はアキがずっと持っていたのだから。外套で隠してすらいないからすぐに気付くと思っていたくらいだ。
「はああああ!?アキどういう事よ!」
納得がいかない様子のエレン。
「そうだよ?確かに転送してたよね?消えたの僕みたよ?」
レオも不思議そうに首を傾げる。
確かに転送はした。だがアキがいつも月時雨を差している腰の位置に転送しただけだ。だから屋敷のどこかに在るって言うのは間違いではない。屋敷の中にいるアキの腰にあったのだから。
「じゃあ暗号はなんだったのよ!」
エレンが猛獣の様に唸る。猛獣エレンは久々だ。
「いや、俺を示してる暗号だけど?」
「どういうことですの?教えてくださいませ。」
ミルナが少し頬を膨らませる。自分で解けなかったのが悔しいらしい。答えを聞くのは甚だ不本意だが、月時雨が見つかってしまった以上、自分で解読するのは諦めたようだ。
「俺の影は誰?」
「ルティアさんですわ。」
「影としての名前は?」
「キーリ……ですわね。」
ミルナが答える。つまり光、又は表の名がルティア、影の名がキーリ。
「光の終わりの文字と、影の最初の文字を足すと?」
「えっと、ルティアのアと、キーリのキだから……アキってこと?」
アキの問いかけに今度はレオが答えてくれる。
「そうだね。つまりちゃんと俺を示してたってわけ。文句あるエレン?」
「うー……ないわよ……。」
素直に引き下がるエレン。こういうとこは本当に素直だ。
「そんなことより見つけたのでご褒美ですー!」
しかしこの駄エルフはアキの暗号を「そんなこと」と言いやがった。
「ソフィー以外にはあげよう。」
「何でですかー!」
駄エルフがぶーぶーと文句を言ってくるので、アリアに手渡されたいつものトレーで数発殴っておく。
とりあえず床でのびているソフィーの事は放っておいて、ミルナ達に何故ご褒美をあげるのか説明してやる。このエルフはご褒美を寄越せ寄越せと言っているが、ミルナやエレンは自分で解いてないのだからご褒美をもらう権利はないと遠慮しているのだ。
「ミルナは最後の最後まで解こうとしてくれた。エレンやリオナも真面目に考えてくれた。ゲームを考えた身としては嬉しいことだからこれでいいんだよ。そこの駄エルフ以外はな。」
床に蹲ったままのソフィーを指差す。
「ソフィーは考える気0だったもんね……。」
「否定はできませんわ……。」
レオとミルナが苦笑する。
まあそれに過程はどうであれ、結果的に月時雨を見つけたのだからご褒美はあげなければいけない。
「ただ暗号は解けなくても、俺の事をちゃんと見てればわかったのにね。」
「そ、それは言わないでほしいわ!」
エレンが頬を赤らめて顔を逸らす。以前、いつもアキの事はちゃんと見ていると言っていたエレン。気づかなかった自分が恥ずかしいのだろう。
「でもアキ、少し性格悪いよ?」
レオが頬を膨らませる。
「まあまあリオナ、ほらこれはゲームだからね。」
「そ、そう……?ならいいけど。」
「リオナがちゃんと見ててくれるのは知ってる。」
「う、うん。」
今度は一転して嬉しそうに尻尾を振っている。うちの狼可愛い。
「ずるいです!私もご褒美ほしいですー!」
復活したソフィーがご褒美ご褒美と騒いでいる。ええい、鬱陶しい。
「わかった、じゃあソフィーにはもう1回だけチャンスをやろう。今度は暗号とかは無しだ。本当に探すだけ。見つけたらご褒美のケーキを用意しよう。」
「やったー!」
それなら余裕ですとガッツポーズするソフィー。ちょうどベルの分の宝探しをやる予定だったし、まとめて2人にやらせよう。
「わかりました、それでいいです。私も頑張ります!」
ベルも可愛く微笑んでくれる。
アキは早速オリハルコンを抜刀し、屋敷のある場所へある物を転送。これでよし。
「よし、頑張って探せ。」
「え、えっと……何を探せばいいんでしょうか?」
探す物くらいは教えてくださいとベルがお願いしてくるので、教えてやる。
「屋敷のそこら中に2人の下着を全て転送しておいた。頑張って探せ。」
唖然とするベルとソフィー。
「え……嘘ですよねー?」
ソフィーが冷や汗をかきながら確認してくる。
「ソフィーが真面目に謎解きしてくれなかったから本気でやった。後悔はしていない。」
「アキさんのばかー!何してるんですかー!」
そんな事を叫びながらソフィーが2階へと走って行った。本当に転送したのかまずは確認しに行ったのだろう。頑張れよと応援しておく。これで少しは必死に探してくれるはずだ。ざまあみろ。
「ソ、ソフィーさんだけですよね?私は罰とか関係ないですもんね?」
ベルが顔を引き攣らせてアキに確認してくる。
「ベルも宝探しやりたいって言ったからついでに転送しておいた。頑張れ。」
「ちょっとー!ほんとなんで私まで!何してくれてるんですか!」
ベルも慌てて2階へと駆けて行った。王女とは思えない慌てぶりだ。人に見られる前になんとしても回収しなければと思っているのだろう。前にベルのを召喚した時、もの凄い量が召喚された。あの量から察するに、ベルは大変だ。全部見つけないとアキに見られる可能性があるわけだし。まあ今更恥ずかしがるようなことでもない気もするが、そこは繊細な女心というやつだろう。
「いやー、満足。」
「あの……下着を転送したかっただけとかではないですわよね……?」
「まあソフィーはこれで必死に探そうと思っただろう。ベルのは本当についでだな。」
ソフィーが真面目に考えていなかったからムカついてやっただけだ。何よりあの駄エルフはアキの考えた謎解きを「そんなこと」っと言いやがった。
「ちゃんと考えてよかったわ……。」
「ほんとにね。でも王女様は完全にとばっちりだね。少し可哀そう。」
エレンとレオが苦笑いしながら顔を見合わせる。
ちなみにソフィーとベルは必死に探しているだろうけど、下着は全部地下室の隠し部屋に転送してあるので見つかるわけがない。2人が見つかりませんと泣きついて来たら許してやるつもりだ。
「探しても見つからないとか……あんた悪魔よ……!」
「さすがアキさん、お腹の中までまっくろさんですわね。」
エレンとミルナのアキの評価が酷い。こうなったらエレンとミルナのも……。
「「ごめんなさい!それはやめて!」」
2人のもついでにやるかと一瞬思ったが、アキの考えを見抜いて光の速度で謝って来た。相変わらず危険察知能力は半端ない。
「まあ俺達はリビング戻ろう。ここに突っ立っていてもしょうがない。しかしたまにはこういう遊びも悪くないな。3人はちゃんとやってくれたからだけど。」
この子達とゲームするのは結構楽しかった。今度はトランプとかそういったのを作ってもいいかもしれない。彼女達と雑談しているだけでも十分楽しいが、双六やトランプ、ボードゲームなどをするのも悪くない。次は用意しておこう。
「よくわからないけど、面白そうね!楽しみにしておくわ!」
エレンが楽しそうに頷く。
ただその今度があるかはわからない。こうやって下らない事で彼女達とバカ騒ぎするのは最後かもしれない。だから何も考えずに遊びたかった。普段やらないゲームを提案したのもその為だ。
しかし少しは寂しさを紛らわせられるかなと思ったが、この子達と遊んだことで余計切なくなってしまった。勿論この先も一緒にいられる可能性だってある。でもいないかもしれない。確証がないからこそ、この時間が失われると思うと寂しい。
「アキさん。」
そんなアキの様子が気になったのか、アリアがそっと側にきてくれる。
「大丈夫。ありがとう。」
「はい。私はずっと、ずっといますからね。」
そうだ。アリアの言う通りだ。
どんな結果になってもアキが1人になる事はない。アリア、セシル、エリス、ベル、ルティアは必ずアキの傍に居てくれるはずなのだから。自分らしくもないとくだらない考えを振り払う。昨日からずっとこの事ばかり考えているし、アリアやルティアにも心配をかけてしまっている。昔ならこんな感情一切表に出す事なんてなかったのに、すっかりと変わったものだ。
「ごめんね。今日だけは許せ。明日からはいつも通りにもどるから。」
「はい。ダメそうな時はいつでも言ってください。私が何とかします。」
アリアがそっと手を握ってくる。
彼女の優しさが身に染みる。そして自分の不甲斐なさを悔いる。ただこんな自分になった事は決して悪い事ではないと思う。地球にいた頃の自分だったら、去る者は追わずと気にも留めなかっただろう。今の自分があるのは、この世界に来てミルナ達と出会って変わったからだ。きっと感情を出せるようになって、すっかり人間らしくなったという事だと思う。
とりあえずは今を、彼女達との時間を、最後まで楽しむことにしよう。楽しそうにアキの隣に座っているミルナ達を見て、そう自分に言い聞かせる。
その後、静かでゆったりとした彼女達との時間が過ぎる……はずだったのだが、静寂を打ち破るかのように、扉からベルとソフィーがリビングに転がり込んできた。
「どこに隠したんですか!言いなさい!今すぐ言いなさい!」
「アキさん!見つからないですー!」
ベルとソフィーが鬼のような形相で詰め寄ってくる。
ああ、そういやそうだった。すっかり彼女達の事を忘れていた。
「「忘れないでー!!!」」
まあもういいだろう。アキは種明かしをして、地下室から本人達の部屋へアレを転送しておく。
ちなみにベルとソフィーには必死に探したのにとめちゃくちゃ文句を言われたが、夕飯のデザートのケーキを倍にすると言ったら、あっさり許してくれた。




