7
「じゃあ、俺の月時雨。これを探して。わかりやすいでしょ?」
アキは愛刀である月時雨を腰から外し、テーブルの上に置く。太刀であれば小さな物でもないので、永遠に見つけられないという事もないだろう。ミルナ達もそれなら大丈夫と頷いているので、アキは早速オリハルコンを使って月時雨をある場所へと転送させる。
「無詠唱や転送ってこういう時の為だったんだな。」
無詠唱のおかげで隠し場所を口に出さなくてもいいし、転送魔法があるからわざわざ隠しに行く手間も省ける。宝探しゲーム主催にぴったりの能力だ。
「そんなわけないですわ!こんなしょうもない事に使うのはアキさんくらいですから!」
しょうもないとか言うな。
だがまあ魔法使いのミルナからしてみれば、腑に落ちない使い方なのだろう。ただ魔法なんて平和的に使うのが結局一番なのはミルナもわかっている。だから文句は言うものの、アキの使い方を本気で怒った事はない。むしろ楽しそうに魔法を使うアキを見て、ミルナは「見習わないといけませんわ」と言っているくらいだ。
「じゃあキーワードは『光と影。光が示すは終焉の文字。影が示すは誕生の文字。2つが交わると現れるは真実』。頑張って探してね。」
特に深く考えずに作った暗号だからたいして難しくはない。ちょっと考えればすぐにわかるだろう。
「アキさん!ヒント!ヒントをくださいー!」
ソフィーが秒で宣言してくるので頭を引っ叩く。
「少しは考えろこの駄エルフが。」
ソフィーはアキの電子タブレットのパスワードを解析できるくらいに無駄なスペックを持っているんだからこの程度の暗号解くのは余裕だろうに。
「あれはアキさんが関わってない事には発動しない能力なのです!」
「だからそんな無駄な能力今すぐ捨ててしまいなさい。」
念の為にもう一発引っ叩いておく。
「うぅ……アキさん酷いですー……。」
「自業自得だろうが。」
とりあえずは4人で暗号解読に挑戦してくれるらしいので、アキはその様子を見守る事にする。
やはりミルナがお姉さんとしての仕切り能力を発揮して意見を取りまとめているようだ。エレンやソフィーが好き勝手発言しても、レオがその意見を補足し、ミルナが会話を整理する。本当にこの4人はいいチームだ。
それにアキといたことで、彼女達も成長してくれた。他人の視線の扱い方や思考の誘導方など色々と覚えてくれたと思う。これならアキがいなくてもちゃんとやっていけるだろう。
アキはそんな事を考えながら4人を見つめる。
「ルティアさん!出てきてくださいー!」
どうやら何かの結論に辿り着いたようで、ソフィーがルティアを呼んでいる。
「ルティアー!」
ソフィーに続いてエレンも叫ぶが、当然ルティアからの返事はない。
「アキさん、ルティアさんを呼んでください。私達じゃ無理ですわ。」
「だね、アキが呼ばないと出て来てくれないよ。」
ミルナとレオがアキにお願いしてくる。
「別にいいけど。ルティア、おいで。」
多分アキが呼んでも来ないんじゃないんだろうか。彼女は午前中に教えた技術を隠し部屋で特訓しているはずだ。必ず物にすると力説していたので、今は呼んでも来られない。
「なに、アキ。」
ルティアがアキの背後にスッと姿を見せ、袖口をギュッと掴んでくる。
来るのかよ。
しかし特訓は終わったのだろうか。チラッと彼女の方を見ると、アキの思考を読んだのか、ルティアが耳元でそっと呟く。
「大丈夫。特訓はしてる。でも、いつ呼ばれても来れるようにもしてる。」
なんとも器用な事だ。アキが呼んだ時はすぐに来ないといけないという自分ルールでもあるのだろうか。別に来なくても気にしないのに。だがルティアは「絶対ダメ。いく。」と言い張る。まあ彼女がそうしたいのであれば好きにさせよう。
「ルティア!月時雨出しなさい!」
「です!持ってるのは知ってるんですー!早く出してください!」
エレンとソフィーがルティアに詰め寄る。
急に大声を出されて怖かったのだろう。ルティアは怯えながらアキの後ろに隠れてしまう。
「こら、ルティアが怖がっているから苛めるな。」
「苛めていません!お願いしてるんですー!」
ソフィーが酷いですと頬を膨らませる。
だがこれ以上ルティアが追及されても可哀そうだ。特訓もしなければならないだろうし、ルティアの代わりにアキが答えてやろう。
「ルティアは持ってない。別のとこ探せ。そもそも影だからルティアとか安直な考えにも程がある。俺はそんな単純じゃないぞ?」
ミルナ達が「そんな!」と悔しそうな顔をする。そんな絶望することではないだろう。大体暗号が光と影でルティアが持っていたらそのままだろうがと呆れる。
「ルティア呼んでごめんね?もういいよ。」
「ううん、平気。またね。」
ルティアはアキをギュっと抱きしめてから姿を消す。アキ成分補充だそうだ。相変わらずのルティアに和む。
一方のミルナ達は再び頭を悩ませている。ソフィーはしきりにヒントヒントと叫んでいるが無視する。この駄エルフめ。少しは考えろ。
「ちなみにエリスはわかるか?」
「アキ、ほら!あそこに小鳥がいるのだ!」
うちの騎士様も考える事すらしたくないらしい。本当にこの子は戦闘以外の事になるとからきしだ。まあそこが彼女のチャームポイントでもあるので別にいいのだが。
「しょうがないからヒントを出そう。」
ミルナとレオが難しそうな顔をして唸っているし、少し助け舟を出したほうがいいかもしれない。
「なんで私じゃなくてミルナさんやレオが基準なんですかー!」
「考える素振りすら見せないからだろうが。この駄エルフが。」
ソフィーが駄エルフって言わないでくださいとぶーぶ文句言ってくるが、当然だろう。少しは努力しろ。すぐに答えを聞こうとしやがって。
それにソフィーに上目遣いでお願いされたら断るのが難しいんだから切にやめて欲しい。
「こうですかー?お・し・え・て?」」
ソフィーが目を潤ませて上目遣いで見つめてくる。くそ、可愛い。
「やらんでいい。そうだなヒントは光と影、それは表と裏とも置き換えられる。」
いまだに上目遣いで見てくるソフィーの頭を引っ叩きつつ、ミルナ達にヒントを伝える。
そして一つ重要な事を訂正しておかなければならない。ソフィーはミルナとレオ基準と言ったが、それは違う。エレンもそこに含まれている。ソフィーとは違い、エレンはちゃんと必死に考えてくれている。自分の事をバカだとエレンは言うが、頭を使おうと努力はする子だ。ソフィーに比べて遥かに偉い。レオも勿論真面目に考えているし、ミルナに至っては、お姉さんとしての威厳と頭の良さを見せつける為に躍起になっている。つまり、この駄エルフだけが諸悪の根源という事だ。
「そんなー!酷いですー!」
「ええい、文句言ってる暇あったら考えろ。ヒントあげただろうが。」
「えー、いやですー!」
駄目だこのエルフ。早くなんとかしないと。
そんなソフィーのダメさ加減に頭を抱えていたら、後ろから声が聞こえる。
「あれ、みなさんどうしたんですか?」




