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これで爺さんへの報告も終わった。ちなみにベルに、爺さんに支援物資を依頼したけどいいかと聞いたら、是非お願いしますとの事だった。万事問題はなさそうだ。
「では私は王城へ一度行って、必要な手配をしてきます。」
爺さんに報告をした翌日、ベルは「アキさんと過ごせないのは甚だ不満ですが」とぶつぶつ文句を言いながら登城していった。彼女が両親に会うのも2週間ぶりくらいだろう。せっかくなのでのんびりして来いと伝え送り出した。
アキはアキでしておかなければならない事がいくつかある。出立も準備も当然あるのだが、まずはルティアとアリアとの打ち合わせだ。彼女達には覚えて貰わなければならない事がある。特にルティア。アリアには資料を渡したので、それを見て貰えれば問題ない。だがルティアの方は少し特訓が必要なので、隠し部屋に呼び出して直接指導だ。まあ彼女は優秀なのできっとすぐに理解してくれるだろう。
「悪いが午前中だけだ。午後はうちの子達と過ごさせてくれ。」
「うん、わかった。」
アキと遊びたいとうちの子達がぶーぶー文句を言っていたので、せめて午後くらいは付き合ってあげたい。何よりもアキが彼女達と今は一緒に過ごしたい。本当であれば午前中も過ごしたいくらいだ。だがルティアの特訓も必要な事。だから今はこちらに時間を割いている。
「昨日も散々一緒に過ごしたのに足りないな。うちの子達がいつも遊んで遊んでと言ってくる気持ちが今なら少しはわかる。」
「アキ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。ルティアがいるしね。」
どんな結末になろうと、ミルナ達が幸せならそれが一番だ。それがアキと一緒にいる事じゃなかったとしても、ミルナ、ソフィー、エレン、レオの4人が笑っていられるなら、それ以上の結果はない。自分の事だけを考えるならいくらでもあの子達を側においておく方法なんて思いつく。だがそれをするとミルナ達を悲しませてしまう事になるかもしれない。それはアキの望む結果ではない。
「よし、ちゃちゃっとやってうちの子達とごろごろするか。」
「頑張るっ。」
可愛らしくガッツポーズをして気合を入れるルティア。
その後、付きっきりで指導して、ルティアは午前中でなんとか計画に必要な技術をある程度理解してくれた。まだ練習が必要だが、後は1人でやっておくとのことだ。アキはさっさとミルナ達の所へ行けとルティアに送り出された。
「今日はどっか出掛ける?昨日と同じようにごろごろする?」
アキはリビングで寛いでいたミルナ達に尋ねる。ベルはまだ王城から帰ってきておらず、うちの子達以外でリビングにいるのはエリス、セシル、アリア、シャルだ。ルティアは例の特訓しているかもしれないので、今この部屋に潜んでいるかはわからない。
そしてアリア達はリビングにいるものの、アキがミルナ達を構うのを邪魔する気はないようで、存在感を消すように静かに控えてくれている。いつもならそんなに遠慮するなと言うところだが、今日ばかりは彼女達の気遣いがありがたい。
「アキさんがなんかいっぱい構ってくれますー!」
「だね!いっぱいアキといれて嬉しい!」
ソフィーとレオが嬉しそうにしている。素直な2人だ。ただ素直に物事を考えられない天邪鬼のミルナとエレンは訝しげな表情を浮かべている。そんなに疑心暗鬼にならないで欲しい。何故素直に喜んでくれないのだろうか。
「昨日もそうでしたわね。嬉しいですけど……。」
「何か裏がありそうね!アキ!吐きなさい!」
「何が吐きなさいだ、この絶壁。」
エレンの頬を抓る。
「ひゃはひはないほー!」
この子達は無駄に勘がいいから困る。エレンの言う通り、裏があると言えばあるので、心の中では正直ちょっと焦った。ソフィーの「アキ探知機」といい、アキの事になると無駄にわけのわからない高スペックを発揮するから困る。
「なにもないよ、俺がミルナ達とごろごろしたいんだけど。エレンとミルナが嫌ならいいや。セシルと遊ぶし。」
「だ、だめよ!私達とって言ったじゃない!」
「そうですわ!今更意見を変えるとか男らしくないですわ!」
必死に自分達を構うようにとアピールしてくる。
どうやら上手く2人の意識を逸らせたようだ。この辺りは結局単純な子達なので、誘導が楽だ。しかし無駄な勘繰りはやめて欲しい。まあ勝手な計画を考えている自分のせいではあるので自業自得なのだが。
「何するかな。」
アキはとりあえずリビングにあるソファーに腰掛ける。
ちなみにリビングには数対のソファーが置いてあり、全員が座れるようになっている。誰がどこに座るとかの定位置は特になく、空いているところに適当に座る感じだ。ただリビングの中心にあるソファーには必ず1人分のスペースが空けてあり、アキが座れるようにと配慮してくれている。アキを囲みたいという彼女達なりの取り決めのようだ。だからある意味アキだけは定位置がある。
「ミルナ、ここ座って。」
ミルナは対面のソファーにいたのだが、隣に来るように催促する。
「はい、いいですけど?どうしたんですの?」
ミルナが首を傾げつつもアキの隣に座ってくれたので、横になって勝手にミルナの膝枕を堪能する。最近エレンやレオの事はよく膝の上にのせていたが、ミルナとソフィーにはしてあげてなかったので、たまにはいいかと思ったのだ。
「ア、アキさん……ど、どうしたんですか急に……」
「たまにはいいかなって。嫌?」
ミルナの太ももはいつも無駄に色気を振りまいているだけじゃない、柔らかくて素晴らしい枕だ。ぷにぷにしていて、良い感じの弾力がある。うん、エロい。
「い、嫌じゃないですけど……それとあと今失礼な事考えてませんでしたか?」
「無駄に色気を振りまいているだけのエロい太ももをたまには有効活用してあげないとって考えてた。」
「無駄とか余計ですわ!そしてほんとに考えていたんですのね!そんなわけのわからない理由で膝枕したくないです!どいてくださいませ!ばか!」
ミルナが頬を膨らませて文句を言ってくる。ただどいてと言っている割にはアキの居心地がいいように手で優しく支えてくれている。
「じゃあミルナじゃなくてソフィーにするかー……」
「はーい!いいですよー!」
ソフィーがどうぞと膝の上をぽんぽんと叩く。
「アキさん、ほらせっかく横になったんですから、しばらくはここままでもよろしいのでは?む、無理にどかなくてもいいですわよ!」
なんだかんだミルナも素直じゃなかったりする。エレン程ではないけど、お姉さんのプライドが邪魔をして強がったりすることがよくあるのだ。まあそれはそれで可愛くて彼女らしいのだが。
「うん、じゃあしばらくこのままで。ソフィーは後でね。」
「わかりました!絶対ですよー!」
ソフィーが約束ですからねと力強く言ってくる。
「ああ。後、もちろんエレンとレオもね。」
「わ、私もやるの?」
「駄目?」
「べ、別にいいわ、でもしょうがなくだからね!特別よ!」
エレンのツンデレは今日も絶好調だ。
「僕もやっていいんだよね!やった!」
レオはいつも通り素直に喜んでくれている。ぱたぱたと尻尾を振っている彼女が微笑ましい。
「それはさておき、ねえ、ミルナ。」
膝枕のままミルナを見上げる。
「はい、なんでしょう?」
見下ろしてくるミルナと目が合う。
「ファイナルインパクト覚えた?」
膝枕されているとミルナの豊満な胸がどうしても目に入るから、ついつい思った事を口にしてしまった。
「いきなり何を言ってるですの!?そんなもの覚えようとすらしてませんから!」
「えー、覚えようよ。胸が飛んでって敵を倒せるって夢があるじゃん。」
「私には絶望しか見えませんけど!?」
駄目らしい。ミルナがファイナルインパクトを覚えればきっと魔法界に革命をおこせると思うのに。しかし本当にそんな魔法が可能なのか……よし、真面目に考えてみよう。胸を飛ばす、それは現実的にはまず不可能だ。では胸ではなく胸のような何かを飛ばせばどうだろう。つまり魔法で胸の立体模型を生成し、それをミサイルのように前方に射出する。これならおそらく行ける。
早速検証してみよう。
「ミルナ。」
アキは膝枕を止めて起き上がり、ミルナの肩にそっと手を乗せる。
「もの凄く嫌な予感しかしませんが、なんでしょう……?」
ミルナが引き攣った笑みを浮かべている。
「みろ。これがファイナルインパクトだ。」
自分の両胸から水球を射出するイメージを魔素に伝達、魔法を発動させる。すると無事、アキの胸から小さい2つの水球が射出され、胸が飛んでいった……ように見えなくもない。
「さあ、やれ。」
「絶っっ対いやですわ!なに本気で考案してるんですの!ばかですか!今すぐその魔法は封印してください!封印!」
頑なに拒否するミルナ。どうやらせっかく考案したファイナルインパクトは使ってもらえないらしい。甚だ遺憾だ。
ちなみに水球でリビングの床を濡らしたくなかったので、エレンの顔面に向けて放っておいた。当然エレンはそんなものが飛んでくるとは微塵も思ってもおらず、髪がびしょ濡れになったようだ。
「ちょっと!アキ!あんたそんな変態な魔法を私にぶつけるな!ほんとぶっころす!!!髪が濡れたでしょうが!」
エレンがほら見なさいと濡れた髪を見せつけてくる。確かにびしょ濡れだ。まさに水も滴るいい女になっている。
「せっかく濡れて色気が出たんだし、練習してた悩殺ポーズみせてくれ。」
「そんなものしらないわよ!ばか!死ね!ほんと死ね!」
頬を膨らましてすっかり拗ねてしまった。でもいつもならここで飛びかかってくるのに、今日はしてこない。多分、飛びついたらアキも濡れるからと控えてくれたのだろう。ほんと自分に対しての配慮はかかさない子だ。
でもまあ濡らしたのはアキの責任でもあるので、エレンの髪を乾かしてやることにする。
「きゃっ……なによ!」
急に髪を触られて驚くエレン。だがすぐに心地よい温風を感じたようで、アキの意図を理解したらしい。すぐに大人しくなり、気持ちよさそうにしている。前にベルにやってあげた風魔法を利用したドライヤーだ。エレンの銀髪はとても柔らかく、サラサラだ。アキの作ったリンスの香りとエレンの匂いが混ざって花のようないい香りがする。
ちなみにこの風魔法を利用したドライヤーは全員が気に入ってしまい、風呂あがりに毎回髪を乾かせられる。ソフィーなんかは碌に拭かずに来ることもあるので困ったものだ。ミルナも自分で魔法を使えばいいのに、わざわざアキにしてもらいに来る。おかげで毎日2時間くらいはみんなの髪を乾かしてる気がする。まあその時間も皆との貴重なコミュニケーションの時間だからいいんだが。
「で、今日はこれからどうする?」
エレンの髪も大方渇いたので、今度はソフィーの膝に寝転ぶ。
しかしよく考えると、こうやってこの子達と何も考えずにだらだらした事はあまりない。ここ数ヶ月は常に何かに追われていて、いつも考え事をしていた。まあそう言うなら今もそうなのだが、いつもと違ってどこか感慨深い。もしかしたらこれが最後になるかもしれないという気持ちで過ごしているからかもしれない。
「お出かけは別にいいですわ、明日出立ですもの。」
「そうだね、お屋敷でいいと思う。」
ミルナとレオの意見に全員賛成のようだ。
「うーん、じゃあゲームでもする?勝った人には夕飯にケーキをつけよう。」
この5人でゲームをするのも一興かと思い、提案してみる。
「「「「やる!」」」」
うちの子達はどちらかというとケーキのほうに食いついているようだが……まあいいだろう。
「かくれんぼ、鬼ごっこ、宝探しとか色々思いつくのはあるけど……そうだな……わかりやすく宝探しでもしてみようか。見つけた人にご褒美ってことで。」
わかりましたと頷くミルナ達。
「じゃあ範囲は屋敷内、ヒントを出すので制限時間内に探してね。」
「何を探せばいいんですの?」
ミルナが尋ねてくる。そういえば宝が何かをまだ決めてなかった。
「じゃあミルナの下着を屋敷のどこかにばら撒くからそれで。」
「おかしいですわよね!?それのどこがお宝なんですの!やめてよね!もー!もー!」
ミルナのがダメらしいのでソフィー、エレン、レオのにするか……と思ったのだが、やったら殺すと威圧してくる。うちの子達怖い。
すると今まで黙っていたシャルやアリアが急に会話にはいってきた。
「私の探しますー?」
「シャルちゃんのにしたら俺が殺されるからダメだよー。」
「なら私のを。」
「お前は黙れ、このど変態メイド。」
何故下着の話題になった途端、アリアとシャルは入ってくるのか。この姉妹の行く末が不安だ。
「なら間を取ってセシルのにしよう。」
「なんでえええ!おかしいからあああ!」
「エリス?」
「なんでだ!ダメなのだ!」
セシルのもエリスのもダメ。ベルは今日はまだいない。いない人の物を使うのはアキの主義に反する。
「そうなると俺のしかないけど。でも俺の下着なんて探してもしょうがなくない?」
「だからなんで探す物の選択肢が下着だけなのよ!」
「そうですわ!下着から離れてくださいませ!」
エレンとミルナに怒られた。そもそも下着という選択肢がダメらしい。おかしい、宝なのに。
「アキ?それを宝と言い切るアキはおかしいって自覚しようね?」
あのレオにまで悲しそうな目で注意された。
仕方ないので別の物にするしかなさそうだ。




