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歓迎会には集落の全員が集まっている。まあ魔獣の肉はたっぷりあるので、好きなだけ食べてもらっても余裕で余るだろう。しかしやっぱり新鮮な肉は珍しいのか、村人全員からめちゃくちゃ感謝された。そんなに美味い肉かはわからないが、喜んで貰えたなら何よりだ。
「アキさん、リネットを守ってくださり感謝しますのじゃ。」
婆さんが丁寧に頭を下げてくる。ただ別に礼は必要ない。怪我一つ負わせない約束だったのだから当然の事をしたまでだ。
「いえいえ、たいしたことはしてませんよ。」
「そんな事ないです!お婆様の言う通り、感謝してます!」
本当にありがとうございますと頭を下げるリネット。
「そうですじゃ。それにリネットだけじゃなく、他の者も守って下さった。集落の長としても感謝いたしますぞ。」
ここまで礼を言われるとさすがにちょっと小恥ずかしい。どのみちあの魔獣が転送されていたらアキ達に依頼が来ていただろうし、先に仕事したと思えば問題ない。それにステラから依頼料をふんだくるから気にするなとリネットに説明する。
「あれ?王女殿下と仲いいんですか?」
「ああ、もう隠す意味もないから言うけど俺は元々エスペラルドの王女と仲が良くてね。その繋がりでサルマリア王女のステラとも仲良くなったんだよ。」
リネットが目を丸くしている。王女を敬称もつけずに呼ぶことが許されているとわかり唖然としているようだ。確かにリネットが驚くのも当然だろう。ベルと一緒にいるとそれがどれだけ特別な事か忘れてしまいがちだ。
「アキさん?エスペラルドの王女様と『仲が良い』どころではないでしょう。あれは完全に『俺の女』扱いではないですの?」
ミルナがくすくすと笑いながら余計な茶々を入れてくる。
「そう言わないと拗ねるだろうが。うちの王女は。」
「でもアキさん凄い人なんですね。あれ?ではなんでエスペラルドの立ち入り禁止エリアじゃなくここの調査に来たんですか?」
リネットが不思議そうに尋ねてくる。まあもっともな疑問だ。
「これ、王家の依頼内容は聞いたらだめじゃ。」
婆さんが止めにはいるが、アキはそれを手で制す。
「いや、別にいいです。ステラに一任されているので。」
予想通りの方向へ話が転がってくれているので好都合だ。その話を集落の人間が集まっているこの場でしてしまえば、アキ達を監視していた者がこの中にいるのか判断つく。それに魔獣召喚廃止に反感を持つ人物がいるか、合わせて観察できる。村人じゃない誰かだったとしても、きっと今も監視しているだろうからこの話を聞かせて炙り出したい。ちょっと強引な手段だが、やっておいたほうがいいと判断した。
「簡単に言うと、俺は魔獣召喚を廃止する為に色々と動いているんだ。」
その為に十六夜の洞窟を調査しに来たのだとリネットに説明する。魔法印の解析をしているので見学をしたかったのだと伝える。エスペラルドでなくサルマリアだった理由は、どっちでもよかったからだ。どうせ両方行く。
まあ半分嘘の説明だが、納得はしてくれるだろう。
「ミレー、エスペラルド、サルマリアが協力してくれてる。どの王家も魔獣召喚は廃止したいらしく、任せると言われているんだよね。」
アキの言葉に目を見開くリネットと婆さん。
「黙っててごめんね。リネット達の仕事奪おうとしているから言わないでいたんだ。」
「そ、それは別に……大丈夫ですけど……でもどうやって廃止するんですか?」
「あ、それは私も知りたいですわ。」
ミルナがリネットの言葉に頷く。ただリネットは「仲間なのに知らないんですか?」と不思議そうな表情だ。それを見たミルナは少し気まずそうに俯いて言い訳を始める。
「え、ええ!アキさんの考える事は難しすぎてよくわからないんですわ!」
「ですです!でもアキさんが出来るっていうなら出来るんですー!」
ソフィーは考える気すらないようだ。ただその無条件の信頼が重い。
「そうね、アキなら何とかできるわ。」
「僕も方法は知らないけど、絶対大丈夫。」
どうやらアキへの絶対的な信頼はソフィーだけじゃないらしい。
「ふふ、信頼されてますね。アキさん。そんなに難しい事なのでしたら私もどうせわからないのでアキさんを信じる事にします!」
ミルナ達のせいでリネットまでそんな事を言い出す始末だ。まあ説明する気はなかったし、ミルナ達にもまだ詳細を聞かせたくなかったので、こっちのほうがある意味好都合だ。
「信頼に答えられるように頑張るよ。」
「はい!あ、でも魔獣召喚が必要なくなったら、私達は集落にいなくてもよくなりますよね?」
「そうだね、そしたら外の世界に行けるよ?」
リネットはこのお役目から解放されたら冒険者になりたいと言っていた。だからこそリネットには話してもいいと思ったのだと伝える。監視者を炙り出すという裏の目的がある事は当然伏せるが。
「それにお婆さんも可愛い孫には別の人生を歩んでほしいんですよね?」
「ほほほ、そうですな。その通りですじゃ。あたしはもう耄碌しているしどうでもいいんじゃけどやはり若い者には好きに生きて欲しいと思っておりますわい。」
婆さんはリネットを優しい目で見つめている。
「アキさんや。それが可能なら是非お願いします。この通りです。この子に自由を
上げられるのであればわしは何でもしますです。」
土下座する勢いで頭を下げようとしてくる婆さん。
そして気づいたら周りの村人がアキを見ている。ちゃんと今の話を聞いていたのだろう。文句がある人もいるかと思ったが、そんな素振りは一切見せず、お願いしますと言ってくる。
「街で暮らしてみたい!」
「冒険者したい!」
文句どころか、口々にやりたい事を叫び始めた。
やはりほとんどの村人は外の世界に興味があるようだ。自分達の仕事には誇りを持っているし、重要なお役目だとはわかっている。でも可能なら外に出たい。そんな気持ちがひしひしと伝わってくる。
「この仕事がなくなってもいいの?」
「確かに私はここの仕事以外はできません。きっと外では苦労します。それでも外に出て、世界が見たいです。苦労したいんです!」
リネットが力強い目ではっきりと口にする。
「そうか、じゃあ頑張るから少し待っててくれ。」
「はい!協力出来る事あったら言ってくださいね!」
婆さんも手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれと頷いている。長として出来る事は何でもするとの事だ。これでまた1つ心強い味方が増えた。王家、協会、管理人の一族。これでこの魔獣召喚に関わる組織は大体協力体制に持ち込めた。
「冒険者になったら一緒に冒険してくれますか?」
「そうだな、依頼に同行するくらいならいつでも。」
「やったー!楽しみです!」
リネットは本当に嬉しそうだ。これは本当に早めに義務から解放してあげないといけないだろう。計画は一応ある。鍵はイリア。ただそのイリアに会えないと意味がない。あとはルティアのいう監視者。その人物も何かの鍵を握っていそうだ。
しかし、どの組織も協力的なのは嬉しい事なのだが、敵がいないから余計にややこしい。はっきりと敵がわかれば指針もすんなり決まるのだが、いないと逆に難しい。敵がわかればそれを倒して終わりだ。ただいない場合、表に出てきてないだけか、本当にいないのかを確認しないといけない。そしてその確認が非常に困難だ。
召喚元の文明が敵だと仮定するのが妥当だろうか。とりあえず次の予定はエスペラルドの立ち入り禁止エリアの調査だ。そこでさらに何かわかればよし、進展が何もないなら少し強引な実験に手を出してもいい。例えば召喚印の召喚指定場所だけ残して他の術式部分を召喚から転送に書き換える。そうすれば召喚元へ転移する事が可能だ。まあこれは最後の手段なので出来れば使いたくないが。
「リネット、明日早朝にエルモアへ戻る。その後はエスペラルドで引き続き制度廃止に尽力する。吉報を待っていてくれ。必ずなんとかしてみせるから。」
「はい、よろしくお願いします。」
「せっかくの宴会だ。辛気臭い話はこれくらいにしてみんなで楽しもう。」
「はい!」
リネットが嬉しそうに笑い、元気よく頷く。




