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「アキさん!怪我!怪我はだめですー!」
ソフィーが必死に屋敷から手を振って叫んでいる。今日は冒険者協会長との対談があるので、予定通りベルの馬車で指定場所に向かうところなのだ。しかし相変わらずの過保護ぶりで困る。そもそも心配する相手はまず王女であるベルだろうが。
「それは一生無理です。みんな大事なのはアキさんですもの。まあ、私もそうですし。」
車内で隣に座っているベルがくすくすと笑っている。
ちなみにソフィーだけじゃなく、ミルナやアリア達も心配そうな目で手を振っている。そこまで心配しなくても大丈夫だと何回も言ったのだが、納得してくれない。エルミラの言う通り、協会は多分シロだ。ベルの父親だし一応信用できる情報源だから問題ない。一応アキが念には念をいれているだけ。本当に万が一の事態に備えているだけだ。
「それでも納得しないもんな……。」
「ふふ、それだけ皆アキさんが大事なんです。」
「嬉しい事だね。」
地球に居た頃、こんなに心配してくれる人は両親以外にはいなかった。こうして大事に想われるのはこんなに心地の良い事なんだと実感する。
「ところでベル、協会長には会った事あるのか?」
「いえ、ないです。すいません何もわからず。」
ベルが申し訳なさそうに頭を下げてくるので気にするなと伝える。
「雑談がてら聞いてみただけだ。どうせすぐわかる事だしね。」
協会長と話せば全てわかる。だから王女がそんな簡単に頭を下げるな。だがアキが注意したところでベルは「アキさんだからこれでいいんですー。」とすまし顔だ。
まあいいか。とりあえず目的地へ着くのをのんびり待つことにしよう。御者に会談場所までの時間を聞いたら、1時間くらいとの事だ。
「どうした?なに?」
暇なのでボーっと考え事でもしつつ情報整理でもと思っていたのに、ベルが腕を絡ませて幸せそうな顔で抱き着いてきた。
「2人きりは久しぶりだもん。だめ?」
口調も素のベルに戻して甘えてくる。
「しょうがないアイリーンベル王女殿下だ。」
「べーる!べるっ!」
今度は頬を膨らませて拗ねるベル。
「でもサルマリアは少し肌寒いからベルの温もりが心地いいよ。」
「えへへ、じゃあもっとくっつく。」
せっかくだしベルとゆっくりするのもいいか。
「最近はちゃんとうちの子達とも上手くやってるようだね。」
「うん。仲間だから。前はごめんね。」
本当に反省しているのだろう、ベルの表情がちょっとだけ曇る。
「今もうしてないならどうでもいい。」
「うん!」
この際だ、ついでに聞いてみたかった事も聞いておこう。
「ベルは俺のどこがそんなに好きなの?」
「えっ……い、言わなきゃだめ?」
思いがけない質問だったようで、頬を赤くして顔を逸らすベル。アキが聞いてみたかったと伝えると、しょうがないですと言いつつも教えてくれた。
「上手く言えないけど、アキさんは私を普通の女の子として扱ってくれる。悪い事したら怒ってくれる。下心なく可愛いって言ってくれる。いつも私の為に必死に頑張って守ってくれる。」
ベルが恥ずかしそうに語る。
「それに他の皆の事も大事にして、毎日必死に頑張っているとこかな?かっこいいなって……。」
「俺も男だし下心くらいあるよ?」
「いいよ?今はあっても。何されてもいい。でも最初はなかったの知ってるもん。」
ベルは本気でそう思っているようだ。まあ確かに最初はミルナ達の目的の為だったから下心なんてなかった。美少女だなと思ったくらいだ。別にベルを篭絡しようとは思っていなかった。情報収集の為に落とす事は一瞬考えたけど、本気でベルを自分の女にしようとは微塵も思わなかった。
「でもあれはミルナ達の目的の為にベルを利用しようとしただけだ。」
「それでもいいの。アキさんと話しているうちに気づいたら大好きになってた。むしろ利用して欲しいってすら思うようになってた。」
自分にそんな魅力があるとは思えないが、ベルがそうだというならそうなのだろう。
「そうか。ありがとう。」
「えへへ……これからも私を、そして皆をよろしくね。」
「ああ。」
ベルをそっと撫でる。可愛い。
そんな事をしていたら馬車が停車した。どうやら到着したようだ。
「ベル、王女に戻りなさい。」
「はい。アキさん、行きましょう。」
瞬時に王女の顔になったベルが頷く。




