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その後、各自の部屋を決め、一旦解散とした。
アキはやっぱり主寝室を割り当てられた。それ以外の部屋は絶対ダメらしい。もうこの子達に抵抗するのは諦め、素直に受け入れる事にした。
しかし……荷物の片付けもあるし、みんな長旅だから疲れていると思い、自由時間にしたのだが、うちの子達やベル達は「疲れてないのでアキさんと遊ぶ」と部屋にに突入して来ようとしたので叩き出した。それでも扉の隙間からこちらを覗きながらぶーぶー文句を言ってくるので、いつものトレーで全員引っ叩いておく。まあ全員といってもアリア、セシル、エリスを除く全員だが。
「人の部屋を覗くな。このダメ人間共が。」
だがそんな説教に当然意味はなく、叩くなんて酷いと余計に文句を言われた。しかも最近はみんな殴られ慣れしてきてしまい、全く効果がない。別のお仕置き方法を考える必要がありそうだ。
ちなみに「長旅で疲れたから休息を取れ」と言った事に対し、彼女達は「アキさんといるのが一番の休息です」とほざいていた。だがこの子達がいるとこうなるから、アキが休息できないし、考え事も捗らない。まあ彼女達が懐いてくれているのは嬉しい事だ。だから流石に殴って追い返すだけでは可哀そうだったので「皆がいるとついつい構っちゃうし、考え事できないからごめんね?後でね?」と言ったら素直に引き下がってくれた。こういうところは本当にチョロい。
「もう説教するより普通にお願いした方が効率いい気がしてきた。」
でも怒られて殴られるまでの下りも彼女達の中ではアキに構って貰える大切な時間らしい。殴られるような事をいつもわざと言ってくる。アキとしても皆とじゃれ合うのは楽しいので別にいいかと思っているのだが、そのせいで彼女達が変な性癖の扉を開けないかというのが最近の悩みだ。
「とりあえず明日の冒険者協会長との打ち合わせについて少し整理するか。」
疑わしいところはない人物だとエルミラは言っていた。だが旧友という事で、身内贔屓の目で見ている可能性も十分にある。まずは本当に信頼できる人物か確認する事が先決だ。
適当な世間話から入って、いつも通り観察しよう。イリアの依頼関連であればレイアのババアに確認したし、その話を撒き餌にするのがいいかもしれない。ミルナ達がイリアを探していて、それに関連する情報をくれというのは絶好の話題だろう。
もしエルミアの言う通り、協会長に問題ないようであれば、立ち入り禁止エリアの全容を知っているかを確認する。その後、アキの知識を共有し、何かいい情報がないかを尋ねる。ただ協会が本当にシロなのであれば、新情報を得られる可能性は極めて低い。
「でもシロなのに越したことはない。クロだと敵になるから面倒くさい。」
敵なのであればこちらの情報を与えるわけにはいかない。
そこで問題になってくるのが、誰を明日の会談に同行させるかだ。アキは感情をコントロール出来るが、うちの子達には不安が残る。相手に揺さぶりをかけられた時、間違いなく動揺してしまうだろう。つまりうちの子達を連れて行く事はできない。アリア、セシル、エリスも同様だ。ベルであれば多分大丈夫だろう。ただそうなると、万が一戦闘に発展した際が心配だ。アキ1人ではベルを守り切れるかわからない。対人相手ならアキは余裕でなんとか出来るが、ベルを無傷で守り切れる保証はどこにもない。オリハルコンなんて持って行くわけにもいかないし、どうしたものか。
「保険が欲しい、多分1人では行かせてくれないだろうからな。」
1人で行くと言ったら間違いなく全力で止められる。無理にでもついて来ようとするだろう。アキの頼みなら大抵は素直に聞いてくれるミルナ達。だがアキが無茶しようとする時だけは絶対に許してくれない。
「そうなると連れていけるのはやはりベル。だが戦闘要員としてあと1人欲しい。」
そうなるとうちの子達かエリス。ミルナが妥当か。彼女であれば表情のコントロールは最低限できる。それ以外だと……そうかルティアなら。
アキは周囲を軽く見回す。
「ルティア。」
「うん。いる。」
やはりいた。
窓際の影からスッとルティアが姿を見せる。もう外套は被っていない。アキしかいないからだろう。しかし相変わらずの美少女だ。見ているだけで吸い込まれそうになるくらいに美しい。
「早いな。調査の2週間が終わってからまだ1日だぞ?」
「早く合流したかったから……早めに調査終わらせた。」
ルティアがタタタと近寄って抱き着いてきた。
「どうした、急に。」
「寂しかった。」
「そうか、おつかれ。おかえり。」
「うん。」
多分ミレーでアキと触れ合うようになってから、1人でいるのが寂しく感じるようになってしまったのだろう。だから彼女は2週間かかるはずの調査を全力で終わらせて、すぐにミレーを発ったのだ。そしてあっという間にアキの居場所を調べ上げ、合流してくれた。
「最高のタイミングだ。さすがルティア。頼りになる。」
抱き着いたままのルティアをそっと撫でてやる。嬉しそうに目を細めて気持ちよさそうにしているのが可愛らしい。
「そうなの?」
「うん、実は明日、冒険者協会長との会談があってね。」
ルティアに一連の出来事を話す。そして先ほどアキが考えていた事を伝え、ルティアに同行をお願いする。
「協会がシロならいいけど、万が一があるとね。ルティアなら安心して任せられる。」
「うん。私がアキを守る。」
これで明日の目途は立った。ルティアが影に控えているのであればうちの子達は認めざるを得ないだろう。彼女の隠密性は全員が脅威に思っているのだから。
「少し話そうか、ルティア。」
アキから離れるよう促す。
彼女が調べた立ち入り禁止エリアの情報を確認しておきたい。
「やだ……。」
だがルティアはまだ満足してないようで、アキから離れようとしない。
「じゃあ座ろう、ほら前みたいに。」
代替案を提案してみる。
「う、うん。それならいい。」
ちょっとだけ照れ臭そうに頷き、アキから離れるルティア。以前した膝枕を提案してみたが、効果は抜群のようだ。
アキがソファーに座ると、待っていましたと言わんばかりに寝転んでアキの膝に頭を乗せてごろごろしてくる。本当に小動物のようだ。
ただ足を上げる度に着物のような服の裾が捲れ、色々と見えそうになるので、目のやり場に困る。
「こら、動くとパンツが見えそうになるから気をつけなさい。」
ルティアは不思議そうな顔でアキを見上げる。しばし逡巡した後、何かの結論を自分の中で導きだしたようで、着物の裾を両手で掴む。
「見る?」
一体何をしているのだろうと思ったが、自ら服を捲ろうとしていたらしい。軽くルティアの頭を叩き、裾を下ろさせる。淑女がしていい行為ではないだろうが。
「見ません。やめなさい。」
「むぅ……失敗。」
何が失敗なのか聞くのが怖いのでやめておく。なんとなくわかるし。
とりあえず話を進めよう。
「ルティア、報告って1通しか受け取ってないけど他にも手紙出した?」
「ううん、あれ1回だけ。」
もしアキがエスペラルドを発った後にルティアの手紙が来ていたらと思ったが、出していないのなら問題はない。
おそらく急いで調査を終わらせたかった彼女は、報告を1回のみにして、後は合流してからと考えていたのかもしれない。
「なんで?」
「面倒くさか……」
無言でルティアの頭を掴み、力を入れる。まさかの理由だった。
「……アキ痛い……やめて。」
涙目になって見つめてくるルィテア。可愛い。この表情はずるい。
「ルティア、本当に面倒だったのか?正直に言え。」
「う、嘘だから。ちゃんと調べた。」
アキの声色に焦ったのか、いそいそとポケットからくしゃくしゃの紙を取り出すルティア。本当にちゃんと調べてくれているようだ。では何故ルティアらしからぬ冗談を言ったのだろうか。
「なんで嘘ついたの。」
「……笑わない?」
「約束する。」
理由を話すように促す。
「字が……下手だから……アキに見せたくなかった。」
何か深刻な理由があるのかもしれないと考えたが、なんとも可愛い理由だ。
「そっか。でもルティアの字、可愛かったよ?」
「ほ、ほんと?」
とても彼女らしい可愛い字体だったのは本当だ。上手いかと言われれば疑問だが、彼女の一生懸命さがちゃんと伝わってくる報告書だったのでなんの問題もない。
「だから合流が早かったのか。」
「でも寂しかったのは本当。」
なるほど。寂しがり屋の女の子にちょっと辛い仕事をお願いしてしまったようだ。アキは労いの意味を込めて、また彼女の頭を撫でてやる。
「しばらくは俺の側に影としていろ。」
「うん。」
サルマリアでの話次第だが、暫くの間、別行動させる予定はない。アキの側にいて貰えばいいだろう。
ルティアはそれを聞いて少しだけ嬉しそうに微笑んだ。




