7
予定通り翌日にはサルマリア王国の王都リスルドに到着した。
リスルドの街は円形ではなく正方形のような形をしていて、大きく4区画にわかれている。正方形の中に4つの正方形があるイメージだ。構成はミスミルドと同じように商業、工業、農業、居住地区となっている。ただミレーやエスペラルドの王都の様に同じ種類の地区が複数あるとかはなく、わかりやすく4つにきっちり分けられている。
そして街の中心にはリスルド王城が聳え立っている。やはり街の中心に王城があるというのは基本のようだ。まあこの設計は当然なのかもしれない。街を見渡せるし、攻め込まれたとき一番辿り着くのに時間が掛かる。
ひとまずは爺さんが手配してくれた屋敷に向かう。
アキ達は爺さんの馬車に先導してもらい、商業地区を抜ける。窓から外を見てみると、確かに雰囲気はエスペラルドと似たような感じだ。ただ少しだけ建物に違和感を覚えるので、多少の違いはあると言うことだろう。
道行く人を眺めると、ベルやソフィーの言っていた通り、よくエルフを見かける。ソフィー程の美人さんではないが、みんな端正な顔立ちをしている男女だ。というよりこの世界の人間は種族を問わず美男美女が多い。そういう遺伝子が組み込まれているのかもしれないなと無駄に感心する。羨ましい限りだ。
「でもアキさんはかっこいいですわよ?」
「そんなことはないだろ。」
ミルナがフォローしてくれるが自分が美男ではないのを知っているので、つい否定してしまう。ただ全員がアキの言葉に納得いってないような顔をしている。
「私達にはかっこいいんですわ。わかりますか?」
ミルナが言葉を変えて再度言い直す。流石に同意しかねるのでアキが何も言わないでいると、さらに言葉を被せてくる。
「わ・か・り・ま・す・か?」
ミルナは頬を膨らまして、アクアブルーの瞳で鋭く見つめてくる。
「うん、わかった、わかったから。」
他の子達からのプレッシャーも凄い。納得しないと終わらなさそうだし、説教に発展しそうなので、アキは不承不承ながらも肯定する。でも彼女達にそう思って貰えるのは嬉しい事だ。
「まったく……アキさんは自己評価が低すぎますわ。」
ミルナはまだ少し不満のようで、苦言を呈してくる。
「です!アキさんはかっこいいのですー!」
「そうですよ?少なくとも私達にとってはそうです。それだけじゃご不満ですか?他人の評価も気になりますか?」
ソフィーとベルもまだ納得がいかないらしい。
まあベルの質問に対する回答は、「自分に対する他人からの見た目の評価なんてどうでもいい」だ。交渉や印象操作をする際に気にする程度だ。相手が望む自分を演じる為に不都合のない外見さえあれば、正直自分の見た目なんてどうでもいい。
「と思っていた。けどミルナ達だけにはよく思われたい。」
少し照れ臭かったので窓の外に視線を移す。
ちょうど仕事終わりの時間と重なっているのか、馬車の窓から見るリスルドの街は活気づいている。人通りは多く、様々な人達が行き交っていた。どうやらまだ商業地区を抜けてないようだ。
活気あふれる飲食店からもいい匂いが馬車の中まで漂ってくる。食べ物も何か特産品があるのであれば是非食べてみたい。協会と王族との対談が終わったら少し時間を取って街へと繰り出そう。もっとリスルドの街を観察したいし、散策したい。今はこれ以上外を見ていると観光の誘惑に負けて本来の目的に集中出来なさそうだ。アキは視線を車内に戻す。
するとミルナ達がにやにやした顔でアキを見つめていた。
「なんだよ。」
その表情はやめなさい。なんかムカつく。
「アキさんの照れているところは新鮮です。」
ベルが嬉しそうに微笑んでいる。
「僕、そのアキの顔好き。」
膝の上にいるレオも尻尾を振って喜んでいる。ただアキとしてはこの子達に弄られるのはなんか癪なので、なんとかこの状況を打破しなければならない。
「そうよ!アキは私が認めたんだから胸を張りなさい!」
エレンがドヤ顔で宣言してきた。ちょうどいい。この猛獣を使おう。
「え、俺エレンに認められたの?いつ?」
「う、うるさいわね!あんたなんか認めるわけないでしょ!バカじゃないの!」
この子は基本的に勢いで発言するから、適当に突っ込むだけですぐ支離滅裂になってしまう。
「そっか、俺エレンにまだ認められてないんだ。悲しいな。」
わざとらしく残念な表情を浮かべてエレンに答える。すると彼女は一転して焦った表情を浮かべ、必死に説明してくる。
「ち、ちがっ!だ、だから!……その!認めるわけないけど認めてるのよ!わ、わかるでしょ!」
素直じゃない猛獣だ。だがエレンらしい。
「まあ、別にどっちでもいいんだけど。」
「はああああ!?ぶっ殺されたいの!人で遊ぶなって言ってるでしょうが!」
エレンがギャーギャ騒いでくれたおかげで、先ほどの空気が全てぶち壊しだ。ミルナ達は「せっかく会話の主導権握れていたのに」と残念がっている。まあエレンじゃなくてもうちの子達は全員単純でチョロいから、どこからでも突破口はあるのだが。
そんなやり取りをしていたら馬車の速度が落ちてきた。
アキはレオを膝から降ろす。そろそろ屋敷に着くのだろう。騒がしい状態で馬車を降りるのもあれだし、エレンを撫でて機嫌を直しておこう。
「ほら、冗談だから。ありがとう。」
「う、うん……べ、別にアキならいいわよ。」
猛獣使いとしての腕は伊達じゃないというのを見せたところで馬車が停車する。
4日かかったサルマリアへの旅も無事終了だ。明日は冒険者協会長との対談、明後日は国王との謁見予定。それ以降は今のところは未定。対談の結果次第というところだ。




