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「ちなみにソフィーの村ってエルフしかいないの?」
実はアキにはちょっとした疑問がある。この世界に来てからずっと考えていた事だ。
「え?はい、そうですよー?」
ソフィーは別に普通の事ですよと言った表情だ。
「いや、そもそもエルフってなに?あと獣人ってなんで存在するの?」
「どういうことですの?」
ミルナが質問に質問で返してくる。
「いや、エルフや獣人って『人』っていう括りなの?」
「そうですわ、人類という区別ですわね。」
「俺の世界にはそんな種族いなくてね。人は人、狼は狼、猫は猫。ちなみにエルフなんて存在しなかった。だからこそ何で存在しているのか気になって。」
人類や種族の誕生。地球の理論でいうのであればダーウィンの進化論が有力だ。長い年月をかけ、微生物から哺乳類などを経て、人間へと進化した。レオやセシルのような獣人であればそれで説明できなくもない。狼や兎も哺乳類だし、進化の過程で人のような存在に分岐したと言える。それでも何故そんな進化を辿ったのか興味はあるが。
ただ一番の疑問はエルフだ。
「エルフって元はなんだ?なにから進化したんだ?」
「うー……難しいです……。」
ソフィーが頭を抱えて唸っている。ベルやミルナもよくわかっていないようなので、アキは進化論の説明をしてやる。
進化論とは、人間は微生物ような物から世界の環境変化に適用する為、最適化され、必要な器官が進化し、何億年という時間をかけて進化をしたという理論だ。その進化の過程で様々な生物へと分岐していき、多種多様な生物が現存している。環境に適さない者は駆逐され、子孫を残せる優秀な個体だけが次世代へと遺伝子を受け継いでいく。
「何もないとこから人間がポンって出ましたって不自然だろ?でもこの理論であれば何故誕生したのか説明できるよね?」
「な、なるほど……なんとなくは理解できます。」
あの聡明なベルでさえ頭を抱えているので、彼女達にとっては相当難しい話なのだろう。
「だからソフィー。エルフって何が元なの?」
「そんなの……わからないですよー……。」
ソフィーがバカでごめんなさいとシュンとしている。まあ地球の理論を理解しろというのが無理な話だ。
「じゃあ質問を変えよう。エルフって俺やミルナと何が違うの?見た目以外で。」
こうなったら種族の特徴から解明していくしかなさそうだ。ベルやミルナもエルフの祖先についてはわからないようなので仕方がない。
「えっと……耳と目がいいですー!あとは風を読むのが得意で、大昔は森にしか住んでなかったと聞きます。今は街でも普通に見かけますけどね。」
そう考えると、エルフは人間から派生した種族である可能性が高い。ずっと森で生活していたので、危険を察知する視覚や聴覚などが発達した。さらに風を読むのが得意という事は触覚も発達しているという事になる。おそらく味覚や臭覚も人より優れていると考えてもいいかもしれない。街で暮らしていた人間とは違い、森で暮らしていた人は五感が発達、時間を経て進化。そしてエルフという種族が誕生したのではないだろうか。
「という推測をしてみた。」
アキが仮説を提唱するが、全員頭から煙を出している。
「アキ、私はよくわからないのだ。空が綺麗なのだ。」
エリスは早々に理解することを諦め、いつものように現実逃避している。出会った頃はもっと凛々しい剣士だと思っていたのにこんなアホの子だったとはと苦笑する。でもアキと出会うまでは1人で生きる為に必死に戦い続けていた。強い心で自分を律していたのかもしれない。だが本来のエリスはちょっと抜けていて、とても可愛い女の子。アキといる事でそれが顕著になっただけだろう。まあ凛々しい剣士のエリスもかっこいいが、アキはこっちの素のエリスのほうが好きだ。
「アキさん!それ詳しく説明してくださいませ!」
そんな事を考えながらエリスを見て和んでいたら、ミルナが力強い目で訴えてくる。多分、ベルやアリアもわかってないので、これを理解する事で少しでもお姉さんの威厳を取り戻そうとしているのだろう。
余計な事を考える暗黒物質だ。
「アキはよくそんな事おもいつくね。」
レオが感心したように呟く。ミルナと違ってうちの狼は素直でいい子だ。
「わからないままにしておくが好きじゃないだけだよ。それに理解している方が生きていく上で便利だ。」
わからないからしょうがないで終わらしていては研究者は務まらない。アキの知識への貪欲さは地球の頃から何一つ変わっていない。寧ろ幼少の頃から変わっていない。そういう意味ではソフィーの暴走癖と同じように根っこからの性格なのだろう。
「例えば?」
レオが首を傾げる。
「そうだね……例えば俺とリオナの間に子供ができたら、その子供は獣人になるの?人になるの?俺とミルナの間だったら人だ。じゃあ俺とソフィーの間なら?俺とセシルの間ならどうなる?」
「な、何言ってるのさ!こ、こ、こどもなんて!あ!でも嫌ってわけじゃなくて!」
例え話として言っただけなのに、レオが顔を真っ赤にする。尻尾も明後日の方向に飛んでいきそうな勢いで揺れている。当然レオだけじゃなくてミルナも耳まで真っ赤だし、暴走エルフはキャーとか喜んでいる。セシルも思考が停止しているのか、自慢の兎耳がピーンとなっている。
そして名前を呼ばれなかったベル、エリス、アリアはどこか不機嫌そうにしているし、膝上にいるエレンは、表情は見えないが、思いっきり太ももを抓ってきた。
「とりあえず全員落ち着け。俺の言い方が悪かった。謝るから。」
わかりやすい例えだと思ったが、この子達には逆効果だったようだ。
アキは言葉を変えて改めて尋ねる。
「狼獣人と狼獣人の子供は狼獣人だろ?じゃあ狼獣人と人だったら子供は?」
「えーっと……人?」
レオが自信なさそうに答える。
「いえ、狼獣人の子供もみたことありますわ。」
ミルナが補足する。
「それってなんで?」
「わ、わかりませんわ……。」
ミルナが頭を振る。
「そういう事。それを解明する事でわかる事がある。もっと複雑にしようか。猫獣人とエルフなら?猫獣人と兎獣人なら?」
もしそれで両方の特徴を持った子供が生まれてきたらどうなるだろうか。間違いなく奇異の目で見られる。親に捨てられる可能性だってあるだろう。だからそれを解明する事により、変なトラブルを事前に回避できる。
「なるほど。世界の理を理解することで住みやすい世の中に出来るという事ですわね。」
ミルナが納得したように頷く。
「そう、世界の理をもって顕現するのだ。」
腕を交差させ、ミルナの決めポーズを真似してやる。
「な、なんでそれを今やるんですか!やめてよー!ばかっ!」
ミルナが「アキさんなんて嫌いです」とそっぽを向いてしまう。ただ、拗ねつつもチラチラこちらを見て「早く私の機嫌を直してください」アピールをしてくる。手間のかかる暗黒物質だ。
「そうだなー。ミルナは息子と娘だったらどっちが欲しい?」
「あ……あのその……・私は……うぅ……どちらでもいい。」
恥ずかしそうに俯きながら答えるミルナ。無事機嫌は直ったようだ。チョロい。




