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「ベルごめんって。許して?」
「ふんっ!しりませんっ!」
すっかり機嫌を損ねてしまったベル。なんでもシャルは許すけど、アキがベルの下着を見たのは絶対に許さないそうだ。見ようと思って見たわけじゃないのに……理不尽だ。
しかし、大事な話があると言っていたが、この状態では話してくれなさそうだ。まさかシャルがここまで波乱を引き起こすとは。
とりあえず、うちの王女様のご機嫌を取るべきか。
「わかった、ベル。なんでも1つ言う事聞くから。」
「……・ほ、ほんと?」
なんでもという言葉にベルがピクっと反応し、アキをチラッと見る。チョロい。
「ああ、だからほら。早く話をしてくれ。」
「う、うん……わかった。」
不用意な約束をしてしまった気がするが、ベルの頼みなら別にいい。なんでもきいてやろう。
「相当脱線したけど話を続けよう、というか始めよう。」
シャルもさすがにもう邪魔する気はないようで、ちゃんとアリアの横で待機している。もしかしたらさっきのは自分の立ち位置を確立させる為にわざとやったのかもしれない。そうだったなら、強かで末恐ろしい子だ。アキは戦々恐々とする。
「コホン……では改めて、アキさん。」
ベルが軽く咳払いをする。
「お父様、いえエスペラルド国王が会いたいとのことです。」
「え、王が?なんで?」
確かに重要な案件だ。王が一介の冒険者であるアキとの面会を望んでいるのだから。当然アキから謁見を申し込んだわけでもないし、ベルにお願いしたわけでもない。
「はい。えーっと……。」
ベルが少し気まずそうに目を逸らす。
「ベル?何をした。」
「な、なにも!してはいません……言っただけです……!」
アキに会いに行けなくて終始不機嫌だったベル。そんな娘を心配した王が、ベルに不機嫌な理由を聞いた。そしてアキの事を全部話したらしい。するとベルが選んだ男に興味が出たらしく、会いたいと言い始めたのだとか。
「俺の事をなんて説明したの?」
「未来の夫です!」
無言で一発殴る。この馬鹿王女、王に何言ってくれてんだ。
「うぅ……だって……・。」
ベルが言い訳してくるが、それは別にどうでもいい。
「その覚悟はしたと言っただろ。だから誤魔化さないで本当の理由を話せ。」
話を聞いている限り、理解あるベルの両親で、良き統治者であるエスペラルド国王。そんな王が、気になるという理由だけで一介の冒険者にわざわざ会う事はしないだろう。もし気に入らなければ裏から潰せばいいだけだ。
「ベルが自分で選んだ男なら両親は文句を言わないと言っていたよね。だったら俺に会う理由なんてアレしかないよね?」
「はぁ……まあすぐに見抜かれるとは思っていましたけど。」
ベルは頬を膨らませる。単純にアキで遊びたかっただけだろう。
「あと外堀を確実に埋められている気がする……。」
アキは溜息をつく。敢えて両親にその話をしたり、この場で宣言するのもその一環だろう。ベルは「覚悟しているんならいいんですよね?」と意地悪な笑みを浮かべている。アキもベルを気に入っているし、さっきも言った通り別にいいんだけど、そういう事をやるなら事前に言っておいて欲しい。
とりあえずそれはおいておいて、本題だ。
「国王に一連の話をしたと言う事でいいんだよね?」
「はい……本当は話すつもりは無かったんです。」
ベルは最初はアキの話を少しするだけのつもりだった。でも話していくうちに隠し事をしている気になって、全部話してしまったのだと言う。だがベルがつい話してしまうなんて普段なら絶対ありえない。つまりそんなベルが言ってしまったという事は、それほど両親を慕っていて、信じているという事にほかならない。だからこそ隠しておけなかった。自分がやりたいこと、そしてやろうとしている事を知っておいて欲しかった。
「いいお父さんとお母さんなんだね。」
「う、うん……アキさん。ありがとう。」
アキの一言で救われたように微笑むベル。
「それでいつどこで会うんだ?」
「い、いいんですか?」
アキが即断したことでベルが慌てて確認してくる。
「じゃあさっきのお願いをきくってことで。まあそれにベルの両親ならちゃんと話せば協力してくれそうだし、協力者としては申し分ない。それで正式な謁見か?」
「いえ、非公式で内密です。立ち会うのは国王、王妃と私のみ。あ、でもミルナさん達の同席は許可して貰っています。この件に深くかかわっているので。」
ベルもちゃんと仲間を尊重してくれているようで安心した。ミレーで説教した事を守っているようだ。ただミルナ達が実際に同行するかどうかは別だ。王と会うとなれば緊張もするだろう。
「どうする?皆は来るか?皆に任せる。」
「はい、もちろんです。」
ミルナに続きソフィー、エレン、レオも行くと答えた。自分達の目的の為だからちゃんと見届けるのだと力強く頷いた。アリア、セシル、エリスもアキの従者として当然同行しますとの事。
「私はお留守番しています!」
シャルも自分の立ち位置をちゃんと理解しているようで遠慮してくれた。アキとしてもシャルを直接的にはこの件に巻き込みたくない。何をやってるかは知っておいて欲しいが、出来るだけ関わらせたくない。
「本当にいい妹だな、アリア。」
「はい、自慢の子です。」
アリアが誇らしげに微笑む。
「いつもの顔ぶれで行くという事だな。ベル、いつだ?」
「はい、アキさんが了承したとして、明日でお願いしたいとのことです。」
王家の馬車が昼過ぎに迎えに来てくれるそうだ。会談場所は街のとある屋敷らしい。密会などに使われる場所なのだとか。そこであれば誰にも見つからないし怪しまれないとのことだ。
「屋敷の場所はお父様しか知りません。私ですら知らないので大丈夫でしょう。勿論お父様をアキさんが信じてくれるならですが。」
「ベルはお父さんの事信じてる?」
「はい。」
ベルはアキから視線を逸らすことなく、はっきりと答える。
「なら問題ない。」
「は、はい……。ありがとうございます。」
少し頬を赤くして俯くベル。
「よし、じゃあ明日に備えて今日はゆっくり休もう。そうだベル、聞き忘れた。服装はどうすればいい?」
非公式とはいえ、王との謁見だ。正装が必要かと思ったので確認しておく。
「いつもの格好で大丈夫です。あくまで非公式ですので。」
「わかった。じゃあ明日はみんなよろしくね。」
アキが話を締め括る。
その後はせっかくベルも来たし、久しぶりにみんなでだらだらと過ごした。何かするわけでもなく、ただただ同じ時間をゆっくりと過ごすだけだったが、みんなアキといられるこの時間が大好きなようで、幸せそうな顔をしていた。




