↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧翔
第十四章 次手
221/1143

2

「ふはは、相変わらずアキのところは賑やかじゃの。」

「おお、爺ちゃん。ミスミルドに戻ったのか?」


 何時の間にかエスタートの爺さんがリビングの入り口に立っていた。騒いでいて来客に気づかなかった。だが爺さんが勝手に入ってくるわけがない。一体誰がここへ案内したのだろう。アリアは今アキの側にいるし。不思議に思いアキが首を傾げていたら、爺さんの後ろに顔を赤くしたエリスが立っているのに気付く。


「エリスの嬢ちゃんが居たのでな、案内してもらったのじゃよ。」


 どうやらエリスは爺さんに捕まったらしい。きっと玄関あたりで鉢合わせしたのだろう。そして断るに断り切れず、渋々リビングへ案内したと言ったところか。心の準備が出来る前に戻って来たからエリスがまだ羞恥でぷるぷる震えている。相変わらず不憫な騎士だ。


「なるほど。で、今日はどうしたの?」


 先日ミレーで打ち合わせした、オリハルコンを隠す部屋を増築する件だろうか。確かに最優先で手配してくれるとの事だったが。


「うむ、アキと話す事があっての。だが今日の目的はちと別じゃ。ほれ、来なさい。」


 自分との話がついでというのはどういう事だと首を捻るが、その理由は直ぐに分かった。爺さんが扉の影に向かって呼びかけると、1人の少女がおずおずと姿を現す。


「シャル!」


 アリアが驚いた表情を浮かべ、大声で叫ぶ。


「うむ、アリア嬢ちゃんの妹がミスミルドに到着したので連れてきたのじゃ。」


 なるほど。さすが気の利く爺さんだ。ミレーで相談しておいたアリアの妹の件をちゃんと手配してくれていたらしい。


「アリア、よかったな。俺の事はいいから行ってあげなさい。」


 アリアは一刻も早く妹に駆け寄りたいはずなのに、アキの側から動かなかった。こんな時まで律儀なメイドだ。アキは好きにしろとアリアに伝えてやる。


「は、はい!」


 嬉しそうにお辞儀をすると、アリアは妹に駆け寄り、抱きしめている。


「シャル、元気そうでよかった。」

「元気だよ。お姉ちゃんも元気?」

「ええ、私は元気よ。」


 久々の姉妹再開を微笑ましく見守るアキとエスタート。ミルナ達も先ほどアリアにされた仕打ちを忘れたかのように優しい目で2人を見つめている。うちの子達はなんだかんだでみんないい子だなと改めて実感する。


「アリア、紹介してよ。」


 適当なタイミングを見計らい、アリアに声をかける。彼女にとっての唯一の身内がこの妹だ。ちゃんと挨拶しておきたい。


「あ、はい。すいません。こちら私の妹のシャルです。」


 シャルと呼ばれた少女はアリアと同じ黒髪だ。肩上くらいで短く切り揃えられている。瞳は、アリアの黒色とは違い、エメラルドグリーンでとても綺麗な色をしている。そして身長は140cmくらいで小柄だ。まさに可愛い妹といった感じ。当然服装は、爺さんのメイドとして雇われているので、イリアナ達と同じタイプのメイド服を着用している。


 アリアの妹は初めてみたが、所謂可愛い少女だ。つまり今思えば、アリア達を雇っていたあの馬鹿貴族は、幼女好きのロリコンなのだろう。それなら何故あれほどソフィーに粘着していたのかが不思議だ。まあソフィーの笑顔は飛びきり可愛いから多分それが原因かもしれない。そう考えると、ロリコンすら落とすソフィーはある意味凄い。


 とりあえずアキはシャルに挨拶をする。


「シャルちゃん、こんにちは。アキです。アリアお姉ちゃんにはいつも助けられてます。」


 シャルにはアリアを取ったと思われていてもおかしくない。てっきり文句の一つでも言われるかと思ったが、シャルは笑顔でアキに返事をしてくれた。


「シャルです!お姉ちゃんを、私を、助けてくれてありがとうございます!私もお姉ちゃんもアキさんには感謝してます!」


 立派な挨拶にアキは感心する。おそらく見た感じ、まだ12~13歳だろう。それなのにしっかりしている。イリアナ達がしっかり教育したのだろうか。


「いい子じゃろ。イリアナ達も感心しておった。教える事がほとんどないとな。」


 どうやら元からしっかりしているらしい。尚更感心した。でも考えてみれば当然なのかもしれない。


「さすがアリアの妹だ。シャルちゃんはしっかりしていて頼りになるメイドさんなんだね?」

「えへへ、お姉ちゃんには敵いません!」


 シャルはアリアの事が大好きなようで、アキがアリアの事を褒めると凄く嬉しそうに笑う。そしてそんなアリアはどこか照れ臭そうに頬を染めている。妹の前ではいつもの仏頂面を保てないらしい。


「アキよ。この子、お主の屋敷で雇わんか?」


 爺さんが突如提案してくる。


 アキとしては別にそれでも構わないのだが、シャルをアキ達の旅に連れまわして危険な目に遭わせたくはない。アリアもそれが心配でエスタートにシャルをお願いしているのだ。ただエスタートは当然その考えも見抜いているようで、さらなる提案をしてくる。


「この子を屋敷に住まわせて留守を任せればよい。アキ達は旅に出る事もおおいじゃろ?その間屋敷に誰もいないと埃も溜まるしの。勿論この子を1人で置いておくのは不安じゃろうからうちのメイド達に様子を見に来るように手配もするぞ。」


 非の打ち所がない提案だ。それになんでもイリアナ達はみんなシャルの事を可愛がっているので、喜んで面倒を見るだろうとの事。


 ここまでお膳立てされてアキに断る理由はない。


「俺はいいけど、シャルちゃんはそれでいいの?」

「私はアキさんの為に働けるなら嬉しいです!」


 本人がいいと言っているのであれば尚更問題はないだろう。一応保護者であるアリアにも聞いておく。


「アリアは?」

「も、もちろんです!エスタート様にはなんとお礼を言っていいかわかりません。アキさん、妹共々これからもよろしくお願いします!」


 アリアは花が咲いたような満面の笑顔でアキに頭を下げる。やはりアリアの笑顔はソフィーに負けないくらい素敵だ。こういう時でもないと見られないのが残念だが。でもこれからはシャルが一緒にいるし、もしかしたらアリアの意外な一面も見られるかもしれない。


「やったね!お姉ちゃん!」

「ええ、また姉妹一緒に居られるのは嬉しいわ。」

「あ!そうだ!」


 シャルが急に何かを思い出したかのように手を叩く。


「とりあえずお姉ちゃんに頼まれていたアキさん人形作ったよ!」


 そしてシャルはアキにそっくりな毛糸で編まれた人形を取り出した。なにこの超展開、予想外すぎる。どうやらアリアの意外な一面どころか、天地がひっくり返るような一面が早速見られるのかもしれない。


「ち、ちょっとシャル!」


 アリアが慌ててシャルから人形を奪い取り、背中に隠す。あのアリアが顔を真っ赤にして取り乱している。当然アキがこんな面白い状況を見逃すわけがない。ミルナ達も「先ほどの仕返しが出来そうだ」ともの凄く悪い顔をしている。


「シャルちゃん、人形作れるんだ。すごいねー。」

「はい!編み物得意なんです!」


 アリアがそれ以上余計な事を言わすまいと、シャルを止めようとするが、それを察知したエレンとエリスがアリアの両脇をしっかりと捕まえ拘束している。


「諦めるのだ!」

「そうよ!たまにはあんたも辱めをうけなさい!」

「は、離してください!」


 アリアは必死に抵抗するが、ただのメイドがSランク冒険者であるエリスやエレンに力で敵うわけがない。


「シャルちゃん、なんで俺そっくりの人形作ったの?」

「えっと……お姉ちゃんに『アキさんは私の王子様だからいつも一緒に居たい』とお願いされたからです!あと毎晩話しかけて寝るって言ってました!」


 シャルにあっさりともの凄い痴態を暴露されるアリア。仏頂面で毒舌でど変態メイドの彼女にこんな乙女らしくて可愛い一面があったとは思わなかった。そんなアリアの方を見ると、顔を真っ赤にして俯きながらぷるぷる震えている。羞恥で悶える彼女の姿が新鮮でついつい見惚れてしまう。


「照れているアリア可愛い。ね、シャルちゃん。」

「はい!お姉ちゃん可愛い!」


 主人であるアキと妹のシャルに言われてさらに赤面するアリア。


「アキさん!シャル!ばかー!!!」


 涙目で喚き叫ぶアリア。


 まさかあのアリアがここまで取り乱すとは思わなかった。アキはシャルと顔を見合わせ、苦笑する。ミルナやソフィー達も「自業自得です」とくすくす笑っている。

 

 シャルのおかげでさらに楽しくて賑やかな屋敷になりそうだ。


「爺ちゃん、ありがと。」

「うむ!その言葉が聞きたくての。手を回した甲斐があったわい!」


 爺さんも満足気だ。


 その後、爺さんはついでと言っていた隠し部屋増築の話をして、さっさと引き上げて行った。なんでも数日中には増築完了するとの事だ。金に物を言わせて超特急でやらせるらしい。相変わらずだな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。