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最後に想定外の展開もあったが、無事晩餐会も終了だ。後片付けも皆で協力して早々に終わらし、ミルナやアリア達に明日の出立の準備をするように伝える。ベルもそろそろ自分の屋敷に戻らないと不味いだろうと思い、帰るよう言ったのだが、「妻を追い出すとか酷いです」とかごね始めて困った。どうせまた明日からエスペラルドへの旅路で暫く一緒なのに。
そんな聞き分けのない王女様をなんとか説得し、無理矢理帰らせると、今度はミルナ達がベルの「妻」発言に拗ねて、いつもの「お話」が始まった。この子達はこうなったらもう何を言っても無駄だとわかっている。きっとこれからもずっと理不尽にお話されるんだろうな……とアキは黙って皆の文句を聞くことにした。
「やっと終わった。」
1時間くらい文句を言ったあたりで満足したらしく、ミルナ達は明日の準備をする為、やっと自室へ戻って行った。やれやれと思いつつ、アキも自室に戻り、自分の荷物を纏める。
ミレーでも本当に色々あった。2週間とは思えないくらい濃密な時間を過ごせたと思う。エリザ、エアル、ミリーと出会い親しくなった。アイリスとも交流を持つことができた。そしてキーリ。今後のキーパーソンになるであろう人物とも協力体制を構築できた。そして何より大きいのがオリハルコンを貸与して貰えたことだ。
「おかげでエスペラルドに戻ってからもやる事が山積みだ。だが悪くない。」
不謹慎かもしれないが、アキは今、毎日が楽しい。充実している。きっとあの子達のおかげだろう。そんな毎日が送れる事に感謝してもしきれない。
「でもやっぱりエリザ達と会えなくなるのは寂しい。」
彼女達には本当に世話になった。エアルとミリーはうちの子達の訓練に付き合ってくれたし、学園でもアキのフォローをしてくれた。エリザは計画にも協力してくれ、魔法組合の情報も流すと約束してくれた。過ごした期間は短いが、彼女達もアキの中で大事な仲間になっている。
「アキ君、来たわよ。」
そんな大事な仲間の1人であるエリザがムスっとした不愛想な表情で部屋に入って来る。
今日残っている重要な用事はこれだ。大事な仲間としこりを残したまま別れるのもなんか嫌だ。それにエリザにはこの屋敷の管理をしてもらわけねばならない。だからうちの猫のご機嫌取りは大事なアキの仕事だ。それにまあ……拗ねる原因となったのはアキのせいでもあるので仕方ない。先ほどのオリハルコンの実験では普通に接してくれたが、まだ拗ねてはいるだろう。
だからアキは部屋に来るようエリザにお願いしておいた。この可愛いペットのお世話も飼い主としての重要な役目だ。
「いらっしゃい、エリザ。」
「な、なによ。ふんっ。」
不機嫌そうにそっぽ向くエリザ。
だがこうやってアキの呼び出しに応じている時点で、そんなあらかさまに拗ねても演技なのは丸分かりだ。拗ねたふりをしているから早く構えと言っているとしか思えない。もうこんなの可笑しいを通り越して愛らしいとすら感じてしまう。この猫はそれをわかっているのだろうか。
「ま、まだ怒ってるんだからね!さっきの件は別なのよ!」
オリハルコンの件では興奮してつい普通に接してしまったが、まだ怒っているのよと必死にアピールしてくるエリザ。
とりあえず猫のご機嫌をとるかと適当な会話から始める。
「それよりそれ可愛いね。パジャマ?」
「な、な、なによいきなり!パジャマよ!悪い!?」
「いや、だから可愛いねって。」
普段は学園の制服らしきものを着ているエリザだが、さすがに寝る時は着ていないようで、水色の可愛らしいパジャマ姿だ。そしてまさかの猫模様。こんなん可愛いどころか狙っているのではないかとすら思ってしまう。ただエリザの場合は間違いなく何も考えてない気がする。
「ほら、丸まってないでこっちおいで。」
羞恥で丸まってしまったエリザをソファーに座るように促す。耳を赤くしながらも、彼女は渋々といった感じでアキの隣に腰を下ろす。
「あの時はずるしてごめん。これお詫びだから。」
アキは紙袋を2つエリザに手渡す。
「な、なによ……これ……。」
文句を言いつつも、素直に受け取る。1つ目の中身を確認すると、エリザは焦ったように袋を突き返してくる。
「ダ、ダメよ!こんなの!」
「うちの子達には同じ金額を渡している。エリザはこの屋敷をお願いするんだからその資金だ。」
「そ、それにしては多過ぎよ!貰えるわけないでしょ!私はおねーさんよ!」
お姉さんは関係ないだろ……と思うがとりあえず黙っておく。1つ目の袋にはミルナ達にあげたのと同額の金貨をお小遣いとしていれておいたのだ。もちろん屋敷の管理をして貰うので、その手間賃なども含まれていると説明した。
「まあそれにエリザは俺のペットだし甲斐性くらい見せとかないとね?」
「ぺ、ペットじゃないわよ!……でもほんとにいいの?」
アキはもちろんと頷く。そんなアキを見て、エリザも渋々ではあるが了承してくれた。
「ほんとに人生数回遊べるような額をすぐに稼いでくるのね……うちの生徒達が本気になるはずよ……。まったく。おねーさんの威厳がないじゃない。」
「だから元からないって。」
「あ、あるわよ!」
お姉さんの下りはもういいから。アキはエリザにもう1つも見るように伝える。
「今度は何が入ってるよの……。」
ぶつぶつ言いながらも袋を開けるエリザ。
「首輪だ。」
「はぁぁああ!?なんでよ!?おかしいわよね!?」
もう1つには街で見かけた可愛い首輪を買って入れておいたのだ。何もおかしいことはない。ペットであれば首輪をつけるべきではないだろうか。
「つけるべき以前にペットじゃないって言ってるわよね!?」
「じゃあ俺の猫。」
「だからアキ君の猫でもないわよ!」
「じゃあ俺の女?」
「それな……じゃない!ち、違うわよ!」
最後の間はなんだ。一瞬肯定しかけただろう。
まあいい。とりあえず顔を真っ赤にしているうちの猫を落ち着かせ、本当のプレゼントを渡してやる。エリザにはイヤリングを買っておいた。猫の形をしているので彼女にぴったりだろう。パジャマも猫模様だしな……。
「よかったら、貰ってくれ。」
「か、可愛いわ……うん、嬉しい。アキ君、ありがとう。」
怒りはどこかに吹っ飛んだようで、幸せそうな満面の笑みで受け取るエリザ。うちの猫もちょろいな……と呆れる。まあとりあえずこれでご機嫌取りは出来たから任務完了だ。
「じゃあ首輪返して。」
「こ、これも貰ってあげるわよ!」
欲しいのかよ……と苦笑する。でも本気でつけられたら「ミルナ達的な意味」で非常に不味いので、絶対につけないようにだけ念を押しておいた。




