14
買い物初日はアリア、セシル、エリスに加えてミルナとソフィーも連れて街へと繰り出した。アリアとセシルは前回一緒にお出掛けしたので、今回は脇役で大丈夫ですと言ってくれた。他の3人への気遣いなのだろう。出来た子達だ。
さらにアキを喜ばせる為に、アリアとセシルは前に買ってあげた服をわざわざ着てきた。可愛い。本当にいい子達だ。というか気配りが完璧過ぎる。
ちなみにエリス、ミルナ、ソフィーはいつもの服装で、今日選んでもらった服に着替えるんだと意気込んでいた。そこまで期待されているのであればアキも気合をいれて選ぶしかない。せっかくレスミアにいるのだからミレー王国の特色が入った服を選んでやろう。
「どうやらとうとう本気を出せる時が来たようだ。」
アキはボソッと呟く。
ミスミルドで買い物に行った時もアキが色々と服を選んだが、あの時は相当手加減していたのだ。あれはあくまでみんなの付き添いだったので、遠慮していた。だが今日は遠慮しない。徹底的に着せ替え人形してやろう。覚悟するがいい。
「まずはミルナからだ。」
ミルナの手を強引に掴み、適当な服屋に連れ込む。そして彼女を試着室に押し込み、色々服を試着させる。ミルナが終わったらソフィー。そしてエリスだ。
女性の服は種類が多いし、選んでいるのは楽しい。それにその服を着る彼女達は最上級の素材だ。美少女最高。何時間でも選んでいられる。
だがアキのテンションが良い感じに上がって来たあたりで、彼女達に服屋から引きずり出された。解せぬ。
「アキさん、服はもういいですわ!次、次にいきましょう!ね!?」
あの買い物好きのミルナが必死にアキを止めてくる。ソフィーやエリスも「もういいから、もういいから!」と懇願してくる。アキとしてはこれからが本番なのに……残念だ。彼女達が次と言うなら、素直に諦めるとしよう。
「アキさんに選んでもらえるのは嬉しいけど、恥ずかしいですー……。」
「うむ、着せ替え人形のようにされて注目を浴びていたのだ……。」
「買い物好きな私が止める事になるとは思いませんでしたわ……。」
ソフィー、エリス、ミルナがぼそぼそと何かを話している。
「何話してるの?あ、もっと色々着たかった?なら服屋戻ろっか。」
「ち、違いますわ!もう素敵なの選んで頂いたので大丈夫ですわ!」
「そうです!大丈夫です!」
「うむ!だからアキ!他の事をするのだ!」
何故か必死に止められた。「最高に気に入った服を買えたからもう大丈夫です」と力説してくる。まあ……そんなに気に入ったのならいいか。
「残念だ……もっと、もっと着せたい服があったのに。」
「そ、そうなんですの……?」
ミルナが微笑みながら答える。どこか笑顔が引き攣っている気がするのは気のせいだろうか。
「まあでも……3人とも凄く似合っている。可愛い。」
早速アキが選んだ服を着てくれているミルナ達。
結局ミルナにはチューブトップになっている白のトップスとカーディガン。スカートは水色のティアードスカートを選んであげた。無駄な装飾は一切なく、シンプルでとても落ち着いた雰囲気だ。
ソフィーはあまりスカートを履いていなかった気がするので、ミニ丈のピンク色のペプラムスカートに白のペプラムトップス。ソフィーの可愛さを際立てるかと思い、可愛い系の服を選んでみた。
エリスはいつも凛としているのでソフィーと同じく可愛い系で攻める事にした。彼女には白のプリーツスカート、そして薄い水色のパイレーツブラウスのトップスに決めた。
みんな可愛い。眼福だなと頷くアキ。
「また来よう。もっと色々着て欲しい。直ぐにでも来よう。」
「え、ええ!も、勿論ですわ!でも服は当分大丈夫ですわ!アキさんが素敵なの選んでくださったので!ねえ、ソフィー、エリスさん!」
「ですです!服はしばらくいりませんですー!」
「そうだな!服以外の買い物に行きたいのだ!」
ミルナだけでなくソフィーやエリスまで笑顔が引き攣っている気がするのだが。アリアとセシルは何故か苦笑いを浮かべているようだし、どうしたのだろう。
「そう?まあ明日はエレンとリオナに選べるし、また明日だな。」
エレンとレオを着せ替え人形するのも楽しみだ。
それからはアキがエアル達に紹介してもらった店を巡り、カフェでお茶を楽しんだりした。途中ミルナ達が楽器店に寄ってもいいと言ってくれたので、ちょっとだけ立ち寄らせてもらい、楽器を買い込んだ。ただあまりに大量買いし過ぎたのでさすがに持って帰れそうにない。うーん、やらかした。
「あの、アキさん、楽器買い過ぎではありませんの?」
ミルナの意見はもっともだが、ここでしか買えないらしいから買える時に買っておきたかったのだ。それにちょっとした計画があるので、どうしても3日後までに色々揃える必要があった。
「アキさん何考えてるんですー?」
ソフィーが無邪気に聞いてくるが、まだ秘密だ。
「アキさん、ご安心ください。屋敷まで運んでもらえるよう手配しておきました。」
「さすが、アリア。いつもありがとう。」
とりあえず楽器類はいつの間にかアリアが全て手配しておいてくれたらしい。さすがうちのメイドだ。
「じゃあ次はどこ行こうか。エリスとセシルはどこ行きたい?」
「アキとならどこでもいいのだ!」
「私もどこでも大丈夫ですよ。」
「なら適当にぶらぶらするか。」
ミルナやソフィーも特に行きたいとこはないらしいので、その後少しだけ街を散歩して初日のお出掛けは終わりにした。ミルナとソフィーは2人きりのデートじゃなかったのが少し不満だったようだが、まあなんだかんだ全員楽しんでくれたようだ。
買い物2日目の同行者はエレンとレオ。妹のような2人を連れてお出かけはちょっと楽しみだった。この子達はいつもいい子だし、暴走しないし、我儘もあまり言わない。だからたまにはおもいっきり甘やかしてやりたい。
エレンとレオはいつもの服装をしており、ミルナ達と同じように、選んでもらった服を着ると意気込んでいた。望むところだ。今日も徹底的に着せ替え人形して可愛い2人を作ってやろう。そう、可愛いは作れるのだ。まあ元々美少女だから作るも何もないんだが。
と、このように気合十分のアキだったのだが……
「えー、まだ30着くらいしか着てないよ?」
何故か昨日と同じようにエレン達に強制退店させられた。
「アキ、もう十分よ!もう30着も試着したの!ね?ね?」
「うんうん、アキ、他のことしようよ!ね?お願い!」
エレンとレオは何を着せても似合うし、可愛かった。だから色々着せ替え人形していたのに、必死にもういいと止められた。なんか消化不良だ。
「あと50着はいけるぞ?」
「む、無理よ!私がもたないわ!」
エレンが涙目で懇願してくる。レオの尻尾をしゅんとさせているし、これ以上はやめておくか。アキはしょうがないと諦める。
「嬉しいけど……これはミル姉以上かも。」
「ええ、凄く恥ずかしかったわ。」
レオとエレンがなにかヒソヒソ話している。なんか昨日もミル達が内緒話していたな。一体どうしたのだろう。
「どうした?やっぱりもっと着たい?」
「い、言ってないわよ!早く別のところに連れて行きなさいよ!」
「そ、そうだよ!なんでもないからね!次、次に行こうね!」
何故か慌てふためいて身振り手振りで説明してくるエレンとレオ。
「そう?まあ2人が買った服は似合ってるからいいか。」
結局エレンにはピンクのトップスに白のカーディガンと白のフレアスカートを、レオには深紅色のフレアスカートに白のペプラムトップスを選んだ。
「ええ!これはとても素敵よ!だ、大事に着るから服はもう暫くいいわ!」
エレンは早速買った服を着てくれている。めっちゃ可愛い。だがなんか昨日も似たようなことを言われた気がするのだが……。
レオはさすがに街中で女性の格好は出来ないので屋敷で着るねと言ってくれた。どうやら彼女はてっきりアキが男性物を選んでそれを着られると思っていたらしいが、そんなわけがない。レオにも当然女性物だ。女の子なのだから。
「えへへ、今着れないけど。嬉しいよ。」
やはりレオは女の子扱いされるのは嬉しいらしい。アキからしてみれば当然のことだ。寧ろもう「レオ」をやる必要はないとすら思っている。まあ彼女がイリアの事が終わるまでは「レオ」と決めたので文句は言わないが。
ただ最近少し心境の変化があったらしく、髪を伸ばしているそうだ。「少年だからって髪を短くする必要別にないよね?」と言っていた。どうやら髪を伸ばして、アキに見て欲しいらしい。確かにそれは見てみたい。昔はミルナくらい長かったと言っていたし、楽しみだ。
それを聞いていたエレンが「私も髪を伸ばそうかしら」と呟いていたが、エレンは今くらいが丁度いい気がする。ツインテールにしているから短く見えるが、下ろせば肩より少し長いくらいはある。
「エレンは十分に長いんじゃない?髪下ろしたとこ好きだよ。」
「そ、そう?なら下ろそうかしら?」
「でも今のエレンも好きなんだけど。」
「そ、そんな!?私は……ど、どうすればいいのよ!」
どっちの髪形がいいのか頭を抱えて真剣に悩んでいるエレンが微笑ましい。だがすっかり猛獣のエレンが鳴りを潜めてしまっているのが少し寂しくもある。素直な彼女もいいが、いつもの短気で怒りっぽいエレンもアキは好きだ。
そうなればする事は一つ。
「そんなに悩むな、俺の刃、いや猛獣。いや絶壁。」
「はぁぁああ!?ぶっころされたいの!?私が大人してるのをいい事に!どういうつもりよ!」
「で、エレンはどの渾名がいいんだ?」
「ど、どれも嫌に決まってるでしょうが!今すぐ殺す!ぶっ殺すわ!」
エレンは相変わらずガルルと猛獣のように唸っているが、撫でてやると直ぐに大人しくなる。こういうところは相変わらず変わっていないようだ。
しかし久々のエレン弄りが出来てアキとしては満足だ。やはり楽しい。エレンが地団太を踏んで怒ると場が和むし、どこか心地よい。だから無理して素直になる必要はないとすら思っている。
「最近構えてなくてごめんな。素直なエレンもいいけど、こっちのエレンも好きだ。そして髪を下ろしているエレンも、ツインテールのエレンも好き。つまりどんなエレンでもいいって事だよ。」
だからいつものエレンでいてくれとアキが伝えると、エレンは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
「ば、ばかじゃないの!殺されないだけ感謝しなさい!」
「つまりこれからもオチとして頑張ってくれると?」
「死ね!今すぐにしねえええ!」
怒って飛びかかってくるが、どこか楽しそうにしているエレン。これでいい。彼女はこれでいいんだ。
とりあえず今日のメインである服の買い物は終わったので、この後はどうしたものかと首を捻るアキ。楽器類は昨日揃えてしまったので、今日は行く必要はない。
2人は完全にアキにエスコートしてもらう気満々らしく、「全部任せる、ついてく」と言っている。結局昨日と同じようにエアル達に紹介してもらった店を巡り、レスミアの屋敷で必要な雑貨などを買って、カフェでティータイムと洒落こむ事にした。
それから夕方まで目一杯時間を使って、エレンとレオとの買い物を楽しんだ。
「楽しかったか?」
「べ、別に……じゃない……うん、楽しかったわ。アキ、あ、ありがと。」
「僕も楽しかったよー!」
最後の最後に少しだけ素直になるエレン。レオも尻尾をぱたぱたさせて喜んでいる。昨日に引き続き今日も満足してもらえたようだ。よかったよかった。
ちょっと面白かったのが、エレンとレオはずっとアキの手を握ったまま今日は過ごすと決めていたようで、何があっても離さなかった。ただ2人の場合、恋人ではなく、兄妹を連れているように見られてしまう。そしてそれがエレンとレオには納得いかなかったらしく、拗ねていたのがまた可愛らしかった。エレンは「私はアキの妹じゃないわよ。こ、こ、こいび……ごにょごにょ」とか言っては照れるを繰り返していた。レオは「少年の格好してるからしょうがないけど、ちょっとムカいた」そうだ。
まあ2人はまだ成長期だし、直ぐに素敵な女性になるだろう。気にする事はない。
「よし、帰るぞ。」
さて、後は帰って留守番組のミルナ達を構ってあげなければ。あの子達は1日最低5分は構っておかないとすぐに拗ねる。相変わらず困った子達だ。




