僕の、我侭
朝チュンにしようと思ったのですが、一般向けですのでもう少し心理描写を強化することにしました。
カノンは全力で逃げなければと思った。
けれどレオンは、そんなカノンを捉えようとするので必死になってカノンは抵抗する。
「だ、駄目! レオン!」
そこで、レオンはカノンを捕らえたまま不機嫌そうに、
「……嫁になるってカノンは言ったに」
「うう、確かに言ったけど……でも」
「でも?」
そう繰り返すレオンを、カノンはじっと見つめた。
大好きなレオン。
レオンはカノンのことを嫁に欲しいといった。
それがカノンには嬉しくて堪らなくて。
まるでレオンの心と体を手に入れたような気がした。
でもそれは、本当にレオンの心が手に入っているのか分らない。
カノンがついている魔法という名の嘘が、こんなカノンの夢のような状況を作り出しているに過ぎない。
幸せだった。カノンはレオンが嫁にしたいと言ってくれたのがとても嬉しくて、幸せで。
でも、こんな形でレオンの幸せを奪ってしまっていいのだろうか?。
独りよがりの幸せで、それで良いのかと考えてしまう。
カノンは自分で欲張りだと思った。
ののしられても嫌われても良い、それでもレオンが欲しいと切望してカノンはレオンをさらってきたのに。
なのに、いざ心さえも手に入ってしまったと思えば、今度はレオンに幸せになって欲しいと思う。
好きだから幸せになって欲しい。
けれどそれは、レオンを手放すことと同意義だと気づくと、カノンは知らず知らずに涙を零していた。
「カノン?」
「……ごめん、レオン……ごめん」
そう謝りだすカノンに、レオンは小さく溜息をついてカノンの受けから退くと、すぐ横に横になってカノンを抱きしめた。
そのレオンの腕の中が心地よくて、まぶたを閉じる。
このままずっとこうしていられればいいのに。
そう願ってそのまま抱かれているとカノンの涙も止まってしまう。
「……落ち着いたか?」
「……うん」
「どうしたんだ? 一体……」
「幸せだから、レオンに嫁になって欲しいって言われて、でも、それがもしも魔法の効果なら……僕は、レオンにも幸せになって欲しいから……ごめん、上手くいえない。でもこれはきっと、僕の我侭なんだ」
そうカノンがレオンの腕の中で悲しげに笑う。
レオンはもう、その魔法はまったく意味のない魔法だとルカが全て話していた事を話してしまおうと思って、先ほどから頑なにレオンのそれを否定するカノンを見て、無理だと悟る。
何故ここで引いてしまうのだろうと思うけれど、きっとそれはカノンがそれだけ、失いたくないくらいにレオンの事を好きで、愛してくれているからなのだろう。
そしてレオンも悪いのだ。
レオンも沢山カノンに嘘をついているから。
自業自得だなと心の中でレオンは溜息をついて、けれど一言だけ。
「俺を幸せに出来るのはカノンだけだよ」
それにカノンは小さく、けれど何処か嬉しそうにうんと答えて目を閉じたのだった。
結局、レオンは何も出来ずに次の日の朝を迎えたわけだが。
――カノンが嫁だって認めてくれたからまず一歩前進かな。
と思っていると、カノンがキスをしてくる。
レオンがカノンの唇が離れると同時に目を開くと、半眼のカノンが目に映る。
「おはよう、カノン」
「……また寝た振りしていたのか?」
「いや、なんかカノンの唇が触れた瞬間、これは起きて味わっておかねばって思った」
「……とりあえず足の鎖をはずすよ」
そう言ってはずしてしまうカノンに、もう少しとらわれてるのも良いかなとレオンは思ったりもしたが。
そこでレオンはあることに気づく。
そういえばカノンはそういうことの意味を知らないのに何でレオンの足に鎖をつけた? しかもベッドに。
「……カノン、一つ聞いていいか?」
「何?」
「俺の足に鎖をつけて、この後どうするつもりだったんだ?」
「うーん……ペットにして、傍にいてもらって……膝枕してもらって、頭を撫ぜて貰おうかなって」
そう邪気のない笑みを浮かべるカノンに、レオンは
「……そうか、俺は生殺しにされる所だったんだな?」
そう告げると、カノンは生殺しってどういう意味? と可愛らしく首をかしげて聞いてくるが。
レオンはもうカノンに容赦しないと決めた。
今度こそ犯してやると、レオンが再び押し倒そうとしたその時、勢いよくドアが開いた。
「カノン! レオンという不届き者と……」
そこに現れたカノンの父トリューカースは目の前の息子達の様子に固まった。
毛布に二人で包まっているがどう考えても構図が……。
トリューカースはそのままわなわなと体を振るわせ始めた。
「ゆ、許さない……僕が大事に大事に大事に大事に大事に大事に大事に大事に育ててきたカノンを、大切に大切に大切に大切に可愛がって育ててきたカノンを、それを……」
「ち、父様、これは……」
「しかも、カノンが受けで、目の前で子作りなんて……あは、あはははははは」
狂ったように笑い出すトリューカースに、カノンはどうしようかと慌てるも、父が言った言葉に引っ掛かりを覚える。
「……レオン、子作りって何の話?」
レオンがさっとカノンから顔をそらした。
けれどそこでカノンは、昨夜レオンにされかけた行為が何だったのかを理解した。
「レオン! まさか……」
「……だってカノンが可愛いから……そんなに、俺とするのは嫌なのか?」
そう悲しげにカノンにレオンは言うと、カノンはうっと呻いて黙ってしまう。
別に知らないでされるのが嫌だっただけで、相手がレオンだったなら……。
だが、そんな様子のカノンに、もうすでにそういう関係になったと誤解したトリューカースの怒りが爆発する。
「ふ、ふざけるな! 猫かと思ったらネズミだったなんて……僕のカノンを傷物にしおって、しかも受けだと! そもそも歴代魔王は基本的に攻めばっかりなのに!」
それを聞いた瞬間、レオンは今まで魔王と勇者が何で上手く行かなかったのか分った気がした。
だが、それを聞いていたトリューカースの恋人の元勇者レイルが、ぽんぽんとトリューカースの肩を叩いた。
「……攻めだったってどういう事かな、トリューカース」
「えっと、レイル?」
「少し話をしようか、トリューカース」
「ええっと、今はそのカノンに……」
「カノンとレオンは、今ベットから逃げて行ったけれど」
トリューカースがレイルに気を取られた隙に、二人はベットから逃げ出していた。
それに気づいたトリューカースは慌てて追いかけようとするもレイルに抱きしめられてしまう。
「ええっと、レイル?」
「今の話の詳細を聞こうか。そうしたら、慰めてやるよ」
「……うう」
トリューカースは小さく呻く。
本当は分っているのだ、カノンはもう大人で、レオンはカノンが見初めた相手で。
大事に大切にしてきたから渡したくなかったのに、奪われてしまった。
「……悔しいよぉ」
そうレイルの胸で悲しげにトリューカースが呟くのを見て、レイルは優しく抱きしめて頭をなぜたのだった。
カノンとレオンは城が木々に隠れているとはいえ見えない位置に来た。
だからカノンはゆっくりとレオンと歩き出す。
しばし無言で歩き続けて、そこでレオンがカノンの手を握った。
カノンがレオンを見上げるとレオンが微笑んでくれる。
未だ不安要素があるとはいえ、それでもカノンは今こうしてレオンがカノンに微笑んでくれるのが嬉しい。
それだけでカノンは十分満ち足りてしまう。、
「……カノン、イオ達の所に戻らないか?」
「……でも」
「大丈夫だから」
そうレオンはカノンに言う。
ルカがすでに記憶操作の魔法に関しても全部ばらしているのだが、今のカノンの状態では信じないだろう。
だから彼らの力を借りるしかない。
カノンは戸惑ったように瞳を揺らして、どうしようかと考えているようだった。
「……レオンはそうしたい? レオンが望むなら、僕はそれでいいよ」
「カノン……ありがとう」
そう微笑むと、カノンは顔を赤くして顔をそらす。
そこで、レオンは面白い事を思いついて、
「カノン、キスマークをつけていいか?」
「な!」
「だってカノンが嫁だって印、俺もつけたい」
「い、イオ達に見られるのやだ! 絶対からかわれるもん!」
「そのためにつけるんだ! カノンは俺のものだって……」
「レオンのばかぁぁぁ……うう、この襟の内側の見えない所なら一個だけ良いよ」
「……仕方がないな」
といいながらその白い肌にレオンは顔を近づけて、軽く肌をぺろりと舐めてやるとカノンがびくんと体を震わせた。
「は、早くしろ」
そういうカノンの声が震えていて、そんなカノンも可愛いなと思いながらその場所にキスマークを付ける。
そしてついた事を確認すると、カノンは恥ずかしそうにそれを隠した。
「行こう」
そうして二人は転送の魔法陣へと向かったのだった。
次話は一時間後です。よろしくお願いします。




