親父じゃん
「ちょ、そこ触っちゃ駄目! やぁ、くすぐったい」
カノンが魔族の子供にじゃれ付かれていた。
顔を赤らめてふるふると、震えている姿は可憐で目の保養だった。
現在カノンのいる場所へと案内されたのだが、そこはぬいぐるみやら何やらの置かれた非常に可愛らしい部屋だった。
全体的な色調もやわらかく淡い、暖かい色でまとめられて……なんというか、可愛らしい女の子がここにいれば完璧といったような部屋だった。
つまりカノンがいてもまったく違和感が無いどころか、カノンのために用意されたような部屋というか。
レオンはそれを目の保養と考えれば嬉しいのだが、自分以外の誰か、というよりネルが用意したと思うとなんともいえない気持ちになる。
だが、ちょっと顔を赤らめてくすぐったがっているカノンが凄く可愛い。
「レオンも、見てないで助けて……やぁ」
どこと無くカノンの服も乱れてくる。
レオンはとめるのを躊躇する。そんなレオンにむっとしながらカノンは自分でどうにかする事にした。
「もう、お前達も止めろ!」
そうカノンが叫ぶと、子供達はしょぼんとして、
「カノンお兄様、やっぱり僕達の事嫌いなの?」
とか何とか。するとカノンは焦ったように、
「ち、違う、そんなことは無くて……」
「「カノンお兄様大好き!」」
と抱きついて先ほどと同じ行動を取る子供達。
何といううらやまけしからん、とレオンは思いつつふと気づいた。
「兄弟?」
カノンがびくっとして、恐る恐るレオンを見て、
「あ、これは、その……」
「カノンさんの異父兄弟です。レオンさんはご存じないのですか?」
そうルカが助け舟を出した。それにカノンはこくこくと大きく首を縦に振り、
「そうそう、そうなんだ」
「そっかー。仲が良いな」
「うん、そうなんだ……ってやぁ……」
そんな麗しき兄弟達の様子を見ていたレオンは、はたと気がついた。
待て、魔族は確か人間と成長が違うから……。
「人間換算で40歳くらい……親父じゃ……」
そこで兄弟がレオンの方を振り返り、してやったりという顔で笑った。
こいつらは子供じゃない!、そう思った瞬間レオンは二人の兄弟をカノンから引き剥がそうとするも、その兄弟はうるうると瞳をさせて、
「「いじめるの?」」
と聞いてきた。レオンは固まった。だが、
「あまりふざけるのはどうかと思う」
溜息をついて、ルカが兄弟に近づいて、頭をなぜる。
「お兄ちゃんは?」
「ルカという。カノンさんの……親戚のようなものだ。ところで、そろそろカノンさんを放してはくれないか? あまり引き止めても……賢いから君達は分るであろう?」
その言葉にしゅんとして兄弟は名残惜しそうにカノンから離れていく。
そんな二人にカノンは優しげに笑いかけた。
「また今度、僕と遊んで欲しい」
その言葉に彼らは飛び上がって喜んでいた。
そんな二人はネルの方に近寄っていき、するとネルが何か呪文のようなものを唱えると二人はカノンに手を振りながら消えてしまう。
「お会いしたければいつでもおっしゃってください。カノン様」
その言葉にカノンは黙ってネルを見て、一度瞳を閉じてから、
「……分った。頼む」
その言葉にネルは心の中で笑う。
これでカノンを魔族側により引き止められると。そこでレオンが、
「所で、俺達はお前とは戦っていないが……」
「ああ、私は人形遣いだからあの人形達を倒した時点でお前達の勝ちだ。村人達も元の村に転送したし、もうここにお前達は用は無いだろう?」
そうレオン達には興味なさげに告げてから、ネルはチラッとカノンとルカの方を見て微笑む。
それにカノンはぎっと警戒したように睨み付け、一方ルカはふんわりと微笑んだ。
対照的な二人の様子にネルは少し苦笑して、
「それでは皆様方を全員、元の村にお送りしましょう」
小さく何かを呟くと、レオン達全員、周りの景色が暗転したかと思うと、次の瞬間には元の村に戻ってきていたのだった。
ネルは水晶玉の前で、他の三人の次代の四天王と話す。
「ああ、やはりカノンカース様は美しい方だった。同時に、魔族としての力は申し分ない」
そうだろうとあった事のある他の二人が大きく頷いて、津で真剣な表情で、母と兄弟に会わせた事を聞いてくる。
「気に入ってもらえたようだ。だが、やはりあのレオンという人間の王子がカノンカース様は好きらしい」
何て事だと全員で呟くも、それでもあった事のある三人はカノンがどうあっても魔王である事を知っているから、そして今回のことでより魔族への思いを自覚してもらえれば良いという話になる。
そこで、ふと思い出したようにカノンのそっくりさんの話がでて来るのだが、
「未来の魔王らしい。カノンカース様がそういうのだから間違いないだろう」
他の全員が黙って、良かった手出ししなくて、カノンカース様にもその未来の魔王様にも嫌われたくないし、と言い合っている。
ネルは、そういえば自分は手を出しかけたと気づいて、次いで人間の勇者の恋人がいる事を思い出して、とりあえずその情報を共有する。
全員がうーんと呻って、けれど魔王様が言うならそうなのだろう、それに本当になんで光の眷属を気に入るかなと文句を言って、ネルはある事を思い出す。
「あとあのレオンという王子は、“光の神”と我々が結託している事を見抜いていたが……」
それに次代の風の四天王リンツ、次代の炎の四天王クラウが、
「……彼も自分が勇者だと嘘をついている。それをカノンカース様に話されては、彼は困るだろう? それがある限りこちらの困る話は出来ないように思われるが?」
「加えてその話だともっと前に、そう私が組むのかと聞かれた時に話してもおかしくは無い。なのに彼は話さなかった」
「なるほど、あの王子が嘘をついている間は、大丈夫ということか」
それを話すも、全員が一度黙ってから、目配せしてお互い頷く。
そして話は次の、次代の地の四天王に集まる。
「くくく、次代の地の四天王は我ら四人の中で最弱」
「そう最弱」
「最弱」
「……何故ボードゲームで負けただけでそこまで私は言われなければならないのだ……解せぬ」
それに他の全員が笑う。そして、もう一回やるか?、次は何のゲームにするかといったやり取りをして。
そこでネルが思い出したように手を打った。
「そういえばカノンカース様は、自分を守るために相手を傷つける事さえ出来ない……私も確認したがそうだった。というわけでよろしく」
それを聞いた瞬間、次代の地の四天王は黙って、
「……残り物には福があるんじゃないのか?」
「店側の在庫処分という福がある。保管費用も馬鹿にならないから」
「……何でいつも私にその役目が回ってくるのだろう……解せぬ」
「そんな事、決まっているじゃないか」
そこでネルを含めて次代の炎の四天王クラウ、次代の風の四天王リンツが共に笑う。
「お前が、私達の中で力が一番強いからだよ」
次回、一時間後。よろしくお願いします。




