ばらすなよ……
時間はカノンが消えた直後に戻る。
「いないのはカノンとルカとレンヤの三人か」
そうレオンは溜息をついて、
「……それであの人達はどうする?」
そう指差す先には村人達が手拍子にあわせて踊っていた。
けれどどうも自分の意志で踊っているわけではなさそうだった。
とりあえず、適当に魔法を解除して、歩けそうな人達を誘導しようとすると、唐突に彼らはふっと消えてしまう。
後にはひらひらと紙が一枚床に落ちる。
それを拾い上げると、
「『君達に“偽勇者”の話をしよう』だそうだ」
そう引きつった笑みを浮かべてレオンはホーリィロウを見ると、嫌そうな顔をしている。
そして、レオンのすぐ傍に来てこそこそと内緒話をする。
「このタイミングでその話ですか?」
「というより、俺、カノンに魔王城に来てと誘われてたりするんだけれどどうする?」
「……最悪じゃないですか。それでもしカノン君が思い余って何かしたらどうするんですか」
「え? 俺は別にいいよ?」
「……もうこれは上手くカノン君にレオン様が嫌われるしかありませんよ。きっと」
「やだ」
「……それでどうしますか?」
「どうするもこうするも、出たとこ勝負でしかないだろう?」
「……王子で、しかも勇者でないとばれたらもう城に戻るしかありませんが、レオン様はそれでよろしいのですね?」
そう言われて、レオンは自分の置かれている状況に気づいた。
このままだとカノンが手に入らないどころか、ミランと結婚させられる。
「それは困る。でもカノンを置いて帰れないし……」
そう話していると、遠くからカシャンカシャンと、何かが歩く音が聞こえる。
それはゆっくりとこちらに向かってきて、ドアの前で一回足音が止まる。
その瞬間レオンとホーリィロウは音のした扉へと走り出した。
ほぼ同時に、扉が蹴破られて、獲物を手にした、手足のかけた作りかけの人形が躍り出る。
けれど初めに飛び込んできた二対の人形はレオンとホーリィロウにより瞬時に打ち砕かれた。
「レオン様、随分と強くなられましたね」
「お前ほどではないけれどなっと」
そう言って次に現れた小さめの両手に釜をつけた人形を、レオンはなぎ払う。
「レオン様、そう思うのでしたら前線には出来るだけでないで下さい。何かあっては一大事です」
「この程度余裕だから大丈夫さ」
確かにレオンの剣術は格段に上がっているとホーリィロウはおもう。
そして、レオンがカノンの前ではその力を極力抑えているのも知っていたが……。
――これほど強くなっているなんて……レオン様、下手な勇者よりも強いのでは?。
そこで人形から氷の槍が出現して、レオン達を襲う。
また、別の人形は一斉に木の弓矢でレオン達に狙いを定める。
本気で殺しにかかってくるようなその様相にホーリィロウは舌打ちする。
レオンは次の代の人の王の子なのだ。
それに手をかけようとするとは……魔族側の都合に何か異変があったのではと思ってしまう。
最悪の場合、レオンだけでも守らなければとホーリィロウは警戒する。
けれど思いの他、レオンの仲間のトランもイオも強かった。
人形達はまるで引き寄せられるようにトランの弓矢に当たり砕け、イオの動きに人形達は翻弄されていとも容易に自滅していく。
そしてホーリィロウの仲間達もいつものように連携して敵を倒していく。
どうこうしている内に、全ての人形を倒しきってしまった。
イオがさすがに今回は大丈夫かと思ったとぼやいていたが、ホーリィロウはこの二人に感嘆してしまう。
「イオさんにトランさん、お二方もとても強いのですね」
ただの踊り子と猟師だとしか知らなかった分、ホーリィロウは驚いた。
そんなホーリィロウにレオンはにやりと得意げに笑って、
「だろ? 俺の自慢の仲間だ」
「初めて会った時は誘っておいたくせに、一度断りやがったんですよ、レオンは。ね、トラン」
「うむ、もっと美人さんじゃないと嫌だといったのだ、イオに向かって」
「い、いや、でもその……」
「まあ、本命はカノンちゃんだったから仕方がないよねー」
「はは、あれ?」
そこで、先ほど人形達がやってきた扉に人影が現れる。
そしてやってきたのは一人の身なりの良い魔族。
金色の瞳に青い髪。この雰囲気はレオンには覚えがあった。
「水の四天王……か?」
「その様なものだ。次の人の王の子、レオン」
そう、彼はにやりと笑いながらレオンに告げたのだった。
次回、一時間後。よろしくお願いします。




