推理させるつもりは無い
直球かよとレオンは舌打ちした。
そんなレオンにイオが恐る恐るといったように問いかける。
「は、はは、レオンが人の王の子って……それじゃあ王子様って事だよね。冗談がきつすぎる。そう思わない? トラン」
「レオンは王子なのか?」
「トラン!」
そうトランに問いかけられて、それを責めるようにイオがトランの服の袖を引っ張る。
トランは、今ここではっきりさせた方が後々ギクシャクしないで済むし、イオはそれをレオンが自分から言わない限りこの関係が崩れないと思っている。
二人ともレオンの事を思って言ってくれている。
そんな良い仲間を持てた事にレオンは感謝して、そして、
「ああ、俺は……王子だよ」
「そして、“光の神”に信託を受けた勇者ですらない」
「その通りだ。それで?」
水の四天王のような者は、そう付け加えるもレオンは特に気にした風でもなく答える。
その様子のその魔族は舌打ちした。
「言い訳すらもしない」
「ま、心の準備はしていたからな。ところで、ええっと……」
「……次期、水の四天王のネルだ」
「なら逆に俺はネル、お前に問おう。お前達魔族は、お前達の都合で人の王を存続させている。それなのに俺達に先ほどした攻撃は、俺達を本気で殺そうとしていなかったか?」
「……あまり甘くしても仕方がないだろう? それにこの程度問題ないだろう? 正体不明の誰かに予知能力を借りたりしているのだから」
そんなネルの台詞に、レオンは確信を覚える。
「……前から思っているんだが、何故魔族であるお前達はカノンの事を気に入っているのに、敵と手を組んでいるんだ?」
「……人間の情報を我々が手に入れられられるはずがない、とでも言うつもりか?」
「いや、正体不明の誰かて点がおかしいだろう? その力を持っているのは、俺の父を除いてこの世界では今まではミランだけのはずなんだから」
「……なるほど。人間側に流れた情報がこちらにも流れていると、そう言いたいのか?」
「案外、“光の神”と直接話をしているんじゃないのか?」
それを聞いたネルが、レオンを今にも襲い掛かってきそうな剣幕で睨みつける様に見る。
けれど握りこぶしを握って必死に我慢しているようだった。
「……根拠は?」
「ホーリィロウは父の直属の……まあ、“勇者”で、俺はあいつにしか話していないんだ。予知能力のことも、そうだろう?」
そこで問いかけられたホーリィロウは、レオンに頷く。
予知能力という本来王族しか持ち得ない力を他の者が持っている。それも魔族どころか自称魔王が。
そんなデリケートな問題を早々誰かに、特に魔族に話す理由もない。
それどころか魔族が“光の神”から与えられたその力を持っているということは魔族を裏切ったということになりかねない。
ならば、魔族の敵に当たるなら、人間側に引き込める可能性もある。
そして魔族の敵であると判断されて処分されるのも都合が悪い。
それらから考えて、父達が魔族に話すデメリットの方が多すぎる。
ネルは、レオンとホーリィロウの二人の様子から、
「なるほど、お前の父が我々と組んでいるはずがないから消去法で?」
「いや、それも状況からの推察に過ぎない。……そもそも、カノンが、まるで隠れるように俺達のパーティに紛れ込んで会いに行こうとするなんておかしい。隠れる理由がない」
「仲が悪いので、追い返されると思ったとは考えられないか?」
「魔王に? その割にカノンはお前達に対して若干敵意を持っていたようだが?」
「なるほど。それで?」
「突発的な行動なのに、お前達はカノンが来る事を知っているようだった」
「魔王の気配程度分る」
「その割に俺がカノンと出会って一週間何にもないというのもおかしいよな?」
「……お前達が城の近くにいなかったからだ」
「加えて隠密行動だから、カノンは自分が魔王である事を隠していたし、魔王は魔族を統べる王だから、魔王特殊スキル、魔物を操り支配する能力が使えるはずだし、そもそも魔物にも愛される存在のはずなのに……だから魔物は襲ってこないはずなのに、魔物と戦ったりしていた。つまり魔王としての“何か”を封じた状態なんじゃないのか? それでお前達は気づかなくて、一週間接触してこなかった。その方が説明がいく」
「なるほど、それでその情報源がなぜ“光の神”だと思った?」
「神殿の神託で、魔王が目覚めたという話が出た時期と一致しているから」
「たまたま一致しただけでは?」
「けれどそれはカノンが宣言したものではないだろう?」
「そういえばお前は王族だったな。契約期間が終了していないから、か? なるほど、確かにそこから判断するに、今回のこの事態は魔王が絡んでいないと考えるのが正しい。それで?」
「そうなると一方的に宣言できるのは、“光の神”しかいない」
「……それでどうして“光の神”と組んでいるといえる?」
「その宣言によってお前達は動いている。そもそも四天王はこの城に本来はあまりいないものだろう? 魔族の閉鎖的な都市の業務があるから」
「私が、まだ四天王ではないから……それが理由とは考えないのか?」
「ないね。次代の風の四天王のリンツはあまりにも人間と交流しているようだったから間違っているかもしれないと思ったが、次の穂のうの四天王の城で確信した。イオが近くの村で攫われた時、皆、お前達が誰なのかを知らなかった。それだけ接触が少なかったって事だろう?」
「その村が少し遠かったからでは? 道は整備されているから人間との交流はあったはず」
「それなのになんで城の位置や道は分っていてあの服が分らなかったんだろうな? 答えは、いつもあの服をきているわけじゃないんだろう? それでも、今回は着ていたと考えるのは妥当だろうな。そして、その服を着る要因がお前達が城に来たからだと想像がつく」
「なるほど、確かに来たかもしれな。だが、“光の神”に言われて来たとは限らないだろう? 勇者対策かもしれない」
「実際勇者が動いたとしても、城に常駐している魔族で追い返すには事足りるだろう? なのになんでわざわざ来たんだろうな。そもそも、前回の魔王と勇者の戦いでは、四天王と戦うことはなかったはず。その前の代も。なのに何故今更出て来た? そういう事さ。お前達は“光の神”に従っている」
ネルが溜息をついた。
「大した推理力だ。否、王族だから知りえた知識と条件から、か?」
「それもあるな。ただ分らないのは人間の味方である“光の神”が何故そんな事をしたのか、だ」
そこで、ネルが初めて愉快そうに笑った。
「そんなもの、決まっているだろう?」
次回、一時間後。よろしくお願いします。




