うん、またなんだ
「レオン様、ご無事ですか!」
そう、ホーリィロウがレオン達の部屋に駆け込んできて、レオンやカノン立ちは目を覚ました。
「どうしたんだ、ホーリィロウ」
「村人のこの宿以外の全員が、水の四天王の城に連れ去られました!」
レオンを含めて全員が目を覚まして、そしてカノンを除く全員が驚いたようにホーリィロウを見た。
ホーリィロウはそんなカノンの様子に気づいていたが、今はそれどころではない。
「……レオン様が大丈夫であれば、問題はありません。至急人を送って取り戻さなければ……いえ、我々が直接……」
「ホーリィロウ、俺達も手伝えることはあるか?」
「レオン様は宿で大人しくしていてください。まさか突然こんな事を……」
そこで、慌しく人が来てホーリィロウに何事かを耳打ちする。
それを聞いて、ホーリィロウは苦虫を噛んだような顔をしてレオンを見た。
「……水の四天王は、レオン様達が来るようにと言っています」
「名指しなのか?」
「ええ。……どうしますか?」
「行くしかないだろう。放っておけないし」
「……多分放っておくのが一番の選択肢のような気もしますが……分りました。我々も護衛します」
頼むといっているレオンだが、護衛というホーリィロウの言葉にイオとトランはお互いの顔を見やる。
どうもレオンは、イオ達が思っている以上に相当偉い人であるらしい。
そこでちらりとイオはカノンの様子を伺うと、どこか心、ここにあらずといった様子でぼんやりとしている。
「カノンちゃん、大丈夫?」
「え? うん、ちょっとぼんやりしちゃって。……水の四天王の所に行くんだっけ」
「……村の人を助けに行くんだよ」
「うん、そうだね……」
そう答えて、再びカノンは何かを考えるように、黙ってしまう。
一体どうしたのだろうとイオが思ったと同時に、
「あの、一体どうされたのですか?」
ルカとレンヤがレオン達の部屋へとやって来たのだった。
「ご丁寧に、転送の魔方陣まで」
そう容易がいいなと暗に言いながらレオンは呟く。
今全員が村の入り口にある魔方陣の前に来ていた。
事情を話すとルカとレンヤも手伝ってくれることになった。
ホーリィロウは複雑そうな顔をしたが、レンヤという戦力を手放すのは惜しいと判断したらしい。
そして、全員がその魔方陣の上に乗ると、その魔方陣が発動する。
一瞬後には目の前に聳え立つ灰色の不気味な城。これまでの城と形状は似ているようだった。
その城をカノンはぼんやりと見上げる。
ここに、母がいる。
ずっと自分や父をを捨てたと思っていたし、父の事が大好きだからそれで満足だった。
でも、本当は理由は違っていて、嘘だと想いたい気持ちもあるけれどそうだったらいいという気持ちもあって、自分の気持ちも良く分らない。
でも、会ってみればきっと何かが分るだろう。
それに兄弟が、異父兄弟がいるというのも少し楽しみだった。
彼らはカノンに似ているのだろうか。
そんな考えがカノンの中でぐるぐると回る。と、
「カノン、大丈夫か? さっきからずっとぼんやりして」
そう突然、カノンはレオンに覗き込まれてはっとして慌てる。
「べ、別になんでもないよ。なんか疲れちゃって」
「……調子が悪いならカノンはさっきの宿に戻るか? 今回の魔族の行動はいつもと違うようだし……」
「だ、大丈夫だから。早くいこう!」
そう焦ったようにカノンが走り出して、城の扉に触れると音もなく扉が開く。
「うわああ」
まさか突然に開くとは思わず、カノンはそのまま前のめりになって、地面に転んだ。
「痛い……あれ?」
カノンの倒れた場所から白い光が立ち上り、次の瞬間その姿が消えてしまう。
「カノン!」
焦ってレオンがそれを追いかけると、先ほどカノンが消えてしまった場所でレオンも光に包まれて消えてしまう。
「レオン様!」
慌ててホーリィロウ達が駆け寄り、すぐさま転送される。
そうして、レオン達はカノンも含めて三つに分断されたのだった。
次回、一時間後。よろしくお願いします。